恋文
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2011年09月30日(金)

小さな 幸せ
小さな 不安

風の匂いがするよ

わたしを
包んでね


2011年09月29日(木) 一歩

足踏みを
している間に

どこにも
行けない

もう一歩は
長い一歩


2011年09月28日(水) 秋風

知らない間に
日が落ちている

人通りも
広告塔の明かりも
よそよそしい

風に追われて
家に帰る


2011年09月27日(火)

窓の外は
いつも
どこかの世界

ひそかに
音を集める
わたしの耳


2011年09月26日(月) 舗道

街路樹の茂みから

わずかに
聞こえてくる
小鳥の囀り

みんな眠りにつく


2011年09月25日(日) 彼岸花

日の傾きと
風の匂い

記憶と
また出逢う

彼岸花の色


2011年09月24日(土) 秋になる

風の中に立つ

山稜は
黒い影

消えかかった
朱色の縁取り


2011年09月23日(金) 嵐の後

彼岸花
立ちすくむ

倒れた
稲の波

風の寒さ


2011年09月22日(木) いちにち

ただの一日
たった一日
わたしの一日

もうすぐ
終わるよ


2011年09月21日(水) 台風

小鳥たちは
眠れているだろうか

いつも 囀り
かびすしい 
木立

風の吼えるばかり


2011年09月20日(火) どこでもないところ

ここではない
場所を思う

どこでもない

いくつもの
路地を見ながら

立ち止まる


2011年09月19日(月) 平穏

振子の刻む
時間

いつもと
変わらないこと


2011年09月18日(日) ここと どこか

行き来する
光の道筋

見ている

耳はどこかの
他の 遠く


2011年09月17日(土)

髪をあげる
湿ったうなじを
なぞってゆく

風の通り道
曇のなか


2011年09月16日(金) 夜の時間

遠くからの
音だけを
ひろっている

なんにもない
夜の時間


2011年09月15日(木) 知らないわたし

ほら また
忘れてしまっていた

知らないわたしは
ひとりで
歩く


2011年09月14日(水) ごはん

食べたら
美味しいので

なにも
気にしなくて
いいのよ


2011年09月13日(火) 夜の風

寄せる波
返す波

カーテンが
揺れる

夜の風


2011年09月12日(月) 十五夜

しろい
まるい
月のおもてを
雲が
かすめていった

いろんな
虫の声がして


2011年09月11日(日)

虫の声に
かぶさる

街の音

風ともつかない


2011年09月10日(土) 夕暮れ

電線の
錯綜する

群青の空
まんまるい月


2011年09月09日(金) 山の湯

昼下がりの
山の湯は
やさしい

岩に トカゲが這い
キリギリスが カランに乗っている

トンボも 蝶々も
やってくる

アブが来たから
でも、帰ろう


2011年09月08日(木)

痛みは
沈むような
感じがする

小さな傷が

ここにいると
主張する


2011年09月07日(水) 路傍の花

朝の花
まだ 眠っている
おはよう

夕方の花
もう 眠っている
おやすみ

見て歩く 
道すがら


2011年09月06日(火)

駆ける馬の姿の
雲が流れる

胴にひかる
夕焼けの色


2011年09月05日(月) 夜中

髪を
束ねる

うなじに
指が
湿る

風もない


2011年09月04日(日) 変わらない日々

夜の道を
歩くだろう

湿った風に
滲む光

どこにでも
あったような


2011年09月03日(土) 雨の午後

金平糖の
とげとげ

舌でなぞる

窓を打つ
雨の音を
聞きながら


2011年09月02日(金) 雨を待ちながら

せみの声

杉の木は
ゆっくり揺れる

変わってゆく
空の色

とんぼが
やってくる

風といっしょに
時間が
去ってゆく


2011年09月01日(木) 夜の雨

声も聞こえなくなるような
雨のなか

街は白く
かすんで
にじむ
夜の光


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