人生事件  −日々是ストレス:とりとめのない話  【文体が定まっていないのはご愛嬌ということで】

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2004年06月23日(水) 取り残された者が背負うもの

先に倒れたもの勝ち。

高齢者ばかりになった親類の中で唯一まだ動ける存在であったり、精神疾患の多い家系の中で唯一発症していない存在であったり、そういう"残された者"への負担というのは大きい。

病院受診の付き添い、薬の管理、ケースワーカーや役所への相談、精神疾患や身体障害があれば手帳の申請、年齢や疾患によっては介護保険の申請だのそれに伴う施設探しにケアマネージャーとの面接…。
ひとり分、もしくはふたり分の人生のお手伝いをするのも大変だというのに、兄弟姉妹だの、夫だ妻だの、子どもだの、甥だの姪だのの複数の人生を、その人が他の人よりも動けるというだけで頼りにされ、動かなくてはならない人たちがいる。自分の心の疲れも自分の体調の悪さも押し、次から次へと出てくる問題に対応する。そして、最後には。

自分の人生を投げ打ってまでやらなくてもいいよと、早く誰かが言ってあげていたら。


2004年06月18日(金) こんなときにあなたをひとりにしていいものなのか、考える

真夜中は別の顔。

こんなときに、恋人をひとりにしていいものなのか、朝方浅い眠りの中で考えた。それというのも、今夜は同僚たちと横浜中華街で夕食、明日は友人と銀座で海外旅行作戦会議という予定。だから、恋人はひとりで家にいることになる。お留守番なのだ。

仕事を辞めて、私と一緒になるためだけに関東に来てくれた恋人。だけど、年齢が年齢なので、再就職先はなかなか見つからず、決して贅沢を言っているわけではないがかれこれ4ヶ月以上無職期間ができてしまっている。ハローワークに直に足を運んでみたり、ネット検索したりしているが、なかなか、恋人の今までの経験からできる仕事はないようだ。3月くらいは焦りが目に付きイライラしていたが、この頃はなんだかため息をついたり弱気になったりしていた。そりゃそうだろう。働き盛りの男が仕事がないためにぶらぶらしているのだ。貯金の残高が減るたび、「保険だ何やかんやとお金ってすぐなくなるなあ」とつぶやいている。精神的にきてもおかしくはない。

3時ちょっとすぎ。何で、目が覚めてしまったのか分からない。テレビの音がしていようと都電が走り出そうと、私はよく寝る人間だ。だけど、昨晩は違った。眠る前に緩下剤を飲んでいたのでお腹の様子がおかしかったのも事実だが、気がついてしまったのだ。嗚咽に。

暗い中、恋人が隣の布団で泣いていた。私に背中を向けていたけれど、肩が時折大きく揺れていた。時々何かをつぶやいていたが、それらは私には聞き取れず、嗚咽の中にまぎれていた。
思わず、手を伸ばしていた。でも、これが失敗だった。
私が起きてしまったことに気づいた恋人は、泣くのを辞めようと必死になってしまった。だけど止まらなくて、私に背を向けたまま、鼻水をすすりこすり、涙を何度も拭いていた。何だかかわいそうになって頭をなで、腕をさすった。少しして、こちらを向いた恋人は、「はよ、寝」と言い、私に抱きついてきた。
怖い夢でも見たのか、悪い想像でもしたのか、漠然とした不安に精神がさらされたのか、それは何も聞かなかった。何も言わずに、黙って抱きしめ返し、身体をなでた。今までも、こんな風に泣いていたことがあったのだろうか? 私はいつも隣で眠りながら、全然知らない。

タイミングの悪い目覚めに、少し私も、傷ついた。


2004年06月17日(木) 信じられないことばかりあるの

喜び半分、疲労半分。

先日、電車でとある町へ恋人と共に遊びに行った。洋服を見て、デパート地下でスイーツを見て、ゲームセンターへ行った。
恋人と私は、コインゲームにはまっている。その日も、2,000円分のコインを買って、遊び始めた。少しして、私の台に当たりがきた。

『777』

コインを穴に落とすとスロットゲームが始まって数字がぞろ目になったらコイン払い出し、というゲームの中で、どの数字のぞろ目の中でも一番の大量コイン払い出しになるのがスリーセブンだ。それが、いきなり、きた。

「き、きたみたいよ…」恋人の腕をつかんで「ほらほら」と数字を指差していたら、『777』の字が『JP』(JACKPOT/大当たり)に変わった。いよいよ来るぞ来るぞ、というところで、いきなり「ピーピーピー」と甲高い電子音がした上、停電。しかも、私と恋人のいる台だけ。…いきなりゲーム機が壊れた。

店員さん4人、平謝り。「お客様が出されるだったろうコインを用意させていただきます」と、ドル箱2箱半渡された。本当ならば、その半分も増えなかっただろうと思いながら、私たちは受け取った。しかし、喜べなかった。目の前でせっかくの大量払い出しを見られなかったその寂しさは、どっと疲労感へと代わって行った。

その帰り、炭火焼肉屋・牛角に寄った。私たちは焼肉が大好きだ。特に、牛角の舌塩がお気に入りだ。酒を飲みつつ、肉を食む。ふと店内の壁に視線をやると、「今すぐ携帯でアクセス!」とURLと入力店番号が書いてあった。どうやらアクセスすると、抽選で飲み物タダ券やお食事割引券がすぐさまもらえるらしい。気持ちに余裕があったのでやってみた。「飲み物券があたるといいね〜」と言いながら結果を見てみたら、あっさり外れた。「よくばっちゃいけないんだね…」としょんぼり会計を済ました。

家に着いたら、携帯電話にメールが来ていた。牛角からだった。「今日のお店はどうでしたか?」とまたアンケートが来ていた。抽選で、1万円やお食事割引券が当たるとあった。くやしいのでやってみた。

『■■■抽選結果■■■1万円が当たりました!おめでとうございます!』

だ、脱力しました。


2004年06月14日(月) 佐々木(仮)家の人々 〜 それでも母を好きな理由

例え母が、幼少時の私の心に傷を負わせたとしても、それをカバーするだけの愛もあった。

以前日記に、私の父母が喧嘩をすると、母が妹だけを連れて家出してしまった、ということを書いた。私にはそれが、結構深い傷になっていたのだが、今日になりふと、そんな傷を負わされながらもなお私が母を好きな理由というのを思い出した。同僚から「あれ、片頬腫れてない?」と心配されたことから。

私の両頬の膨らみは、よく見ると左右不均衡である。そりゃ、左右対称という顔の造作の人はまれだろうが、私の場合、生来のものに合わせて、幼い頃転んで打った後遺症としての軽い不均衡がある。幼稚園に行っていた頃だと思う。家の近くの広場で幼馴染の女の子たちを追いかけているうち、その頃から注意散漫だった私は砂の上で転び、片頬を石だかコンクリだかに強く打ちつけた上植木に突っ込んだ。歯も頬骨も折らなかったが、みるみるうちに強く腫れ上がってきた。当時のことを語る母は、「あれは尋常じゃない膨れ方だった」と表現する。

そのときの母の登場を覚えていない。ただ、半狂乱でわき目もふらず、怪我した私を抱っこして走る母の姿が突然記憶に起こる。それが、まだ幼い頃の私が母の話を聞いて想像したその映像なのか、実際の私が見た記憶なのかは定かではない。十分に歩いていける距離だけれど、走ると結構ある距離にあるかかりつけ医院に、母は懸命に走ってくれた。ものすごく、心配そうな顔で。

それだけで、私の傷への十分なケアになったのだ。人間関係の中で負ったひとつひとつの傷だけを追えば、それはそれで傷ついた記憶はなくならない。だけど、それをカヴァーするだけの出来事が、どこかにちゃんとあったのだ。

だから、いいのだ。


2004年06月12日(土) ご報告

女友だちとの微妙な関係。

私的にはしっくるくる届出予定日を逃したため、未だ、"婚約中"のままの私ですが、今年中には婚姻する予定なんだ〜、と自分から口頭で伝えた人は同僚以外だとふたり。しかも、かかってきた電話で。

友人の中には何人かすでに結婚済みなのがいるが、わざわざ連絡くれたっけかと考えてみたら、みんな結婚式を挙げていたのでその招待状送る関係で連絡くれたときに報告、みたいな感じだった。毎月会うとか毎週電話するとか、そういう女友だちはいないので、まあ、"婚姻予定"をわざわざたまにの連絡でする必要があるのかな〜、というのが私の意見で。だから、特に誰に連絡を積極的にするわけでもなく、ただ個人的にいつ届け出ましょうかねえという感じだったわけで。

今年の2月、高校の後輩のユッコちゃんが電話をくれたのは、転居をメールで知らせたからだった。新居に遊びに行きたいというので、それはいいけれどもうひとり人がいるから、という説明からそのうち一緒になるということを伝えた。そのときに、ユッコちゃんに言われた。
『カエさんもそれ知ってるの?』
カエは、高校の同級生で、私の大事な友人だ。だけど、カエにも伝えていなかった。
『カエさん前ねえ、中学時代の友だちが自分に黙って結婚してたことに怒ってたんだよ。何も言ってくれなかったことが寂しいって。キサさん相手なら、きっと同じように思われるよ』
ユッコちゃんに言われ、ああ、そういえばカエはそういう女だったなあ、と思い出した。だけど、"婚姻予定"ってどうよ? 他人への伝えやすさって、"式予定"のほうがしっくりくるんだけど。私式挙げる予定ないし。だけど、私もカエに対してだけ同じことが言えるかもしれない。カエが私に黙って結婚していたら、寂しさに憤るだろう。
ユッコちゃんが『このあとカエさんに電話するから、ちょろっと伝えちゃうね』と提案してくれたので、お願いしてしまったのだが、果たしてそれでよかったのか、今になって考える。

式をしないのであれば「もうすぐ、婚姻届け出すから」なんてよりも、「結婚したから」のほうが報告としては正しい気がする。だけど、それは伝える相手によりけりなのだろう。密に付き合っていたり幼馴染だったらまだしも、存在は大事だけれども中途半端な付き合いになってしまっている相手に、どう伝えていくかが今の私の課題だ。

考えれば考えるほど、何だかとても、面倒だ。


2004年06月11日(金) ひとりでは支えきれない重み

一番伝えたい人たちに伝わらない、その不条理さ。

我が子がかわいくないこの状況をどうしようだとか、つい余裕がなくて手を上げてしまってそんな自分が嫌になるだとか、自分なりに頑張っているのに状況が改善しなくてイライラするだとか、そういう人たちが、その一歩先の最悪の事態に進まないようにするためには、何が必要なのだろうか?

相談できる先の案内。誰かがそれに気づいて声をかけてあげること。"自分"ひとりだけが悩んでいるわけではない、ということの提示。
人は、賢ければ賢いほど、自分の弱いところを他人に隠そうとする生き物だ。だけど、そこをあえて切り開く、その力。それと出会うことも、本当に縁だとか運だとか。

ニュースに出る虐待事件というのは、本当に最悪な段階にまで進んだ事件が多い。ニュース内で特集を組んでくれたのはいいけれど、専門家としてはなんだか釈然としない、ただただスキャンダラスなテーマとして取り上げられた感がぬぐえないものが多い。
真面目に「あなただけじゃないから」と伝えられるものは、どれだけあったのか。かえって、「やっぱり私は駄目なんだ」と閉じこもらせてしまうようなもののほうが多かったのではないだろうか。

本当につらいことに深く直面している人は、周りの声など入らない。周りで起こっている、自分にも当てはめられることに当てはめて考えられない。ニュースの大きな見出しでさえ視界に入らない。自分のことだけで精一杯で、どんなに世間で何を強く騒いでいても、少しも歯止めにはならない。

世間とは違う流れの中で必死に生きている人たちの、その深い心内に何が秘められているのか、その人を探して内側を探るだけで疲労。

人ひとりの気持ちの方向性を変える重みは、とてもひとりでは支えきれない。


2004年06月10日(木) 目指すは詐欺師か探偵か

転職について考えてみた。

私もいつ、今の職を追われることになるか分からない。
『育児支援と称して訪問していたにもかかわらず虐待を見逃した保健師!』だの『痴呆症のある高齢者宅でケーキとメロンを食べていた市職員!』だの、ニュースに取りざたされる可能性のある日々と常に背中合わせに生きている。
しょうがないじゃん、私たちも人間だから。なんて、言いたくなっちゃう今日この頃。駄目保健師一直線。
だから、想像してみた。

現仕事で覚えた、口のうまさ。それはまるで、化粧品販売員のような、エステアドバイザーのような、褒めたり脅かしたり安心させたりを繰り返して相手の心身の懐を緩めさせる手腕。詐欺師にぴったりではないだろうか。
もしくは、現仕事で鍛え上げた、粘り強さ。居留守を使われようもんなら出てくるまで待ち伏せをしてまで顔を合わせようとしたり、いつも不在のようならばその部屋が見える近くの建物に登って様子をうかがう、いざとなれば自家用車のナンバーもポストの中身さえも覗く図々しさ。探偵にぴったりか。って、探偵って、生存確認業務だけをするわけじゃないか。

…転職は面倒そうなので、首にならないようにうまく気をつけます。


2004年06月08日(火) 私はあなたを映す鏡

感情を押し殺してしまうほどの人生なんて。

自分のことなのに、自分が経験したことなのに、まるで他人事のように語る人がいる。感情のこもらぬ、ただ淡々と「こんなことがあった」と。
それが、自分が親に包丁を突きつけられたことだったり、自分が髪を引っ張られて気が失われるまで床を引きずられたことだったり、自分で自ら死のうと手首を切ったことだったり、自分が自分の子を床に叩きつけたことだったり。
「悲しかった」「怖かった」「つらかった」という感情を表現する言葉が表情に表れることなく、感情のこもらぬままに空中で消える。

忘れたくても忘れられない経験をした人は、それを、あたかも第三者が遭遇したかのような記憶に変えてしまうのか、他人事のように捕らえなおしてしまうのか。"自分のことじゃないことにした"から泣けないのか、どことなく諦めたような感で微笑む。それを重く抱えたままでは、自分を縛り付けるだけで決してしあわせになることはできない。どこかで軽くしていかなければ、息苦しさに負けて、行為を繰り返し思い出すだけ。そしてまた、連鎖は続く。

話をしながら、本当なら本人が出すべき感情を、鏡のように映し返す。時に泣きながらでも。

感情を出すことを、怖がったりしないで。


佐々木奎佐 |手紙はこちら ||日常茶話 2023/1/2




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