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2009年09月17日(木) イチロー、“Wシリーズで活躍”は夢か

イチローが大記録を達成した。日本人野球選手として彼が最高峰に位置していることは間違いがない。技術、体力、反射神経、判断力・・・アスリートとしての彼の能力は、すべてのスポーツ界を見渡しても、群を抜いている。

しかし、筆者にはイチローの環境について、ある面どうしても気になって仕方がないことがある。イチローは9年間、シアトル・マリナーズに属していて変化がない。その間、シアトルはアメリカン・リーグにおいて、イチロー入団の年(2001)の西地区優勝を最後に、ワールドシリーズはもちろん、ポスト・シーズンにも出場していない。イチローの記録を貶める気はないが、彼がチーム優勝を争う過酷な環境の中でプレーしないことが不満で仕方がない。イチローのヒットを無駄打ちとは言わないけれど、チームの勝利、なかんずく、チーム優勝に結びつかない現実に、筆者は大いにいらだっている。イチローが全米レベルで脚光を浴びる場面といえば、オールスターの1試合のみ。そのオールスターも、インターリーグ制度の導入により、年々、色褪せていく。

松井(秀)はプレッシャーの強いニューヨークで、声援とブーイングの混在の中で2003年からプレーを続け、ワイルドカード1回、地区優勝4回、リーグ優勝1回を経験し、ワールドシリーズに出場している。松坂、岡島は、そのニューヨークのライバルであるボストンで2007年に地区優勝、リーグ優勝、ワールドシリーズ優勝を経験している。タンパベイ・レイズの岩村は、タンパベイに入団した翌年にワールドシリーズに出場している。松井(稼)は活躍の場を求め、メジャー各チームを渡り歩いている・・・というように、現役日本人大リーガーの多くは、メジャーの荒波をそれなりに渡りきり、活路を見出し、活躍を続けている。

イチローほどの選手が、なぜ、アメリカン・リーグ西地区の弱小チームに9年間も甘んじているのか。シアトル・マリナーズのオーナーが任天堂米国法人であることは知っているけれど、イチローが、彼の野球人生の中でワールドシリーズを経験しないまま終わるのは、いかにも残念である。

もちろん、イチローが、米国西海岸の弱小チームで優勝にからまない、緊張のない、試合のなか、自分の記録達成にだけ注力して野球をしているとはいわない。そんなことがあろうはずがない。大記録が生まれる背景として、“優勝を争う、争わない”であるとか、“所属チームの順位云々”とは関係がないのかもしれない。しかし、イチローがヤンキースやレッドソックスのユニフォームを着て(もちろん、マリナーズでもいいのだけれど)、ワールドシリーズに出場し、なおかつ、優勝を経験してほしい。なによりも、大舞台で活躍する彼の姿を見てみたい。と、思うのは筆者だけだろうか。強いプレッシャーの中、彼の貢献がチームを地区優勝に導き、さらにポスト・シーズンへ進み、イチローが、ワールドシリーズ優勝チームの一員であるシーンが見られることを、筆者は祈念している。



2009年09月16日(水) 鹿島−川崎を中止にしたのは主審の判断ミス

9月12日に雨のため打ち切られた鹿島―川崎F戦。15日のJリーグ理事会は、試合が中断した74分より試合を再開すると決定した。再開試合の条件は、中止時点と同等とし、以下の通りとなった。

○開催日:10月7日(水)、 開催時間:未定、開催場所:県立カシマサッカースタジアム
○再開スコア:鹿島アントラーズ 1-3 川崎フロンターレ
○プレー時間:試合を中止した時点の後半29分(74分01秒)からとし、残り16分+ロスタイムのプレー時間とする。
○登録および出場選手:9月12日中断時点と同じメンバーとし、新たに補充できない。なお、怪我等により出場が困難な場合は、ベンチ入りした選手から再開試合出場選手を選出する。ただし、怪我人の続出などにより、両チームの出場選手の状況が揃わない場合に限り、選手の補充についてはチェアマンの判断に委ねるものとする。
○交代人数:中止時点での残りの交代人数を適用し、鹿島残り1名、川崎F残り0名とする。
○記録:中止時点での以下の記録を適用する。
[得 点]19分川崎F=鄭大世、30分鹿島=マルキーニョス、32分川崎F=鄭大世、66分川崎F= ジュニーニョ
[警 告]10分鹿島=ダニーロ、12分鹿島=興梠慎三、27分川崎F=中村憲剛
[退 場]なし

再開の条件としては妥当である。中止してしまったものは取り返しがつかないのであって、事態を収拾するという意味で、妥当なのである。もしも、0−0で再開となったとしたら、川崎側の怒りはおさまらないだろう。

問題は、当日、後半29分に川崎Fが3―1でリードしている場面で、岡田正義主審が「大雨のためピッチコンディションが不良で選手がケガをする」と両クラブの反対にもかかわらず中止を通告したことだ。その結果、中止の判断の是非と試合の扱いをめぐって、日程、運営面等の様々な面において、両クラブを大混乱に陥れてしまった。

このことについては、前回の当コラム「不可解」の第2章で書いたが、改めて筆者の意見をまとめておこう。

サッカーは天候のいかんに関わらず行われるスポーツであり、雨・雪・風が強まればピッチコンディションは当然悪くなるけれど、試合をする側には折り込み済みの事象だ。主審(岡田正義)が12日のカシマスタジアムのピッチコンディションをどのように判断したのか不明だが、まったくもって余計なことをしてくれた、という以外にコメントのしようがない。

第25節という時点で1試合を「中止」にすることによる混乱は、事務的な面で言えば、▽チケットの取扱い、▽Jリーグ、ACLを含めた日程面、▽totoの配当面である。さらには、首位争いをめぐる順位に「暫定」がつく煩わしさを含めて、リーグ終盤の熱戦に水をさす。クラブ、リーグ全体に想像を絶する混乱を与えてしまったのだ。岡田ほどのベテラン審判が、そのことを理解していなかったというのがまず、信じられない。

選手のモチベーションという点においても、計り知れない悪影響を与える。リーグ終盤にさしかかった第25節、首位と2位が勝ち点差7で争っている直接対決、3−1で2位チームが残り15分までリードしている。このような試合展開のもつ重みが、サッカーの主審になぜ、理解できないのか。岡田という審判は、サッカーの試合は何度やっても同じ結果が出るとでも思っているのだろうか。勝ち試合が何度でも再現できるのなら、サッカーというゲームそのものが成り立たない。試合をもう一度やり直すことの困難さというものが、サッカー選手の最も身近にいる主審の職にある者がわかっていないという現実――Jリーグの危機は、ここまできていたのだ。得点してリードをする重さ、勝ちきることの重さ、勝ちゲームの重さ・・・を、主審の職にある者がわかっていなかった。岡田正義という審判の職にある者の試合に対する安易な気持ちが、筆者には我慢ならない。

岡田正義のサッカーのプレーに対するジャッジについては、前の当コラムで書いたとおりだ。彼の誤ったジャッジが、選手の生活を脅かすといって過言でない。今回のジャッジは、個々のプレーに対するものではなく、試合に係るジャッジだ。彼の自己顕示欲は満たされたのかもしれないが、リーグ、クラブ、選手、サポーター・・・に対して、大打撃を与えてしまった。

彼の暴挙を止められなかったのが、「審判は絶対」という日本のスポーツ界に付着した独自の観念なのかどうか、その場に居合わせない外部者にはわからない。ただ、はっきりいえることは、主審に必須とされる判断能力を欠いた者が、Jリーグ審判団に所属し、大事な試合の笛を吹いているという事実だ。審判の資質を見抜けない責任は、Jリーグそのもの(チェアマン)にある。



2009年09月13日(日) 不可解

(その1)ガーナ戦−不可解なスケジュール−
9月9日、日本代表がオランダ・ユトレヒトで、ガーナ代表に4−3で勝った。その前の試合(9月5日/エンスヘーデ)、オランダ代表に0−3で惨敗しただけに、アフリカの強豪相手の「逆転勝ち」を賞賛するスポーツマスコミもあった。しかし、この勝利で日本の攻撃力が再生したと思う人はまずいないだろう。相手GKからのロングボール一発を競り負けたDF中澤は、アジアレベルではトップクラスの選手だが、世界レベルでは通じない。前半の失点が日本の守備の課題を明確にした、という指摘のほうが適正な評価だと思う。

対戦相手のガーナだが、6日にW杯アフリカ予選があり、ホーム(首都アクラ)でスーダンに勝ち南アフリカ行きを決めたばかり。試合後、アクラからユトレヒトに移動し、9日の昼12時に日本と親善試合をした。

ガーナのコンディションがいいはずがない。たとえば、今年の6月6日、日本代表がウズベキスタンで南アフリカ行きを決めた後、10日に行われた予選リーグの消化試合のカタール戦、1−1で引分けた。日本代表の引分をだれが責められよう。同じように、このたびのガーナの「逆転負け」をだれが責められよう。

ガーナ代表は主力選手のほとんどが欧州各国リーグに所属している。欧州各国に戻るついでに、ハブ空港のあるユトレヒトで(日本と)試合をした、というのが本音なのではないか。帰国する飛行機代がういた計算か(笑)

そんな条件下、ガーナ代表は手を抜かなかった。前半は日本を寄せ付けなかった。しかし、後半、さすがに足が止まり、しかも、交代出場選手のコンビネーションも悪く、立て続けに失点をした。

日本がガーナのパワーを90分体感したいと思うならば、日本代表がエンスヘーデからアクラに飛び、ガーナのホームで試合をすればよかった。岡田監督は、オランダ遠征で、5日(エンスヘーデ)→9日(ユトレヒト)という、W杯グループリーグのシミュレーションをしたかったのだと思われるが、この時期、岡田監督の試行は、あまり意味がない。日本代表の脆弱な体質にショックを与えるという意図の下、アフリカ・ガーナに乗り込むくらいの気概があってもよかった。

もう一つ、日本代表が試行しなければならないのが、「ターンオーバー」である。この制度は、W杯グループリーグにおいて、故障や疲労蓄積した複数の選手をそっくり交代させるもの。日本の場合、グループリーグ突破が困難な状態にあるため、主力レギュラーで目いっぱい3試合を行わなければならないのだが、いまの時期であれば、たとえば、DF陣の総入れ替えがあってもよい。岡田監督の狙いは、予選を戦ったメンバーを中心にレギュラーを固定し、コンビネーションを熟成させ、組織力をアップしようとしているようだが、代表はクラブチームとはわけが違う。いまの「岡田ジャパン」を見ていると、固定メンバーでドイツに行って予選敗退した、「ジーコジャパン」が思い出される。


(その2)不可解な無効試合裁定
Jリーグ第25節、首位2位の直接対決、鹿島−川崎は雨天のため後半29分、川崎が3−1でリードの時点で中止となった。中止を判断したのは審判団であり、決定はマッチコミッショナーである。無論、筆者はカシマスタジアムにいたわけではないから、この決定が妥当かどうかはわからない。だから、以下の記述は、TV映像を基にしたものである。

注目すべきは、この試合の主審が岡田正義であったことだ。岡田正義については、当コラムで何度も取り上げたことがある。ジャッジに問題が多い。とりわけ、自己顕示欲が強すぎることが欠点である。カードの出し方が権威主義的で、代表クラスには甘く、知名度の低い選手に厳しい。ビッグクラブに甘く、そうでないクラブに厳しい。

寒さが厳しい欧州の場合、グラウンド(床)暖房のないサッカー場では雪が降り出して積もることがある。ボールは転がらないし、見にくいので、黄色のボールを使用することもある。雨天のゲームももちろん、水溜りでボールが転がらない。それでもよほどのことがない限り、サッカーの試合は行われるのである。まして、1−3で残り15分ならば、中止にする理由はよほどのことである。たとえば、観客が暴動を起こした場合、場内にモノが投げられ選手に危険が及んだ場合・・・などが考えられる。

TV映像で見る限り、この試合は中止に該当しないように見えた。岡田主審の試合中止の判断は、誤りであると筆者には思えた。

鹿島からアウエーで勝ち点3を奪ったはずの川崎、とりわけ、2得点を上げたチョンテセの無念はいかばかりであろう。Jリーグは、このような誤った判断をくだした岡田正義に、引退を勧告すべきであろう。



2009年09月05日(土) 南アフリカへの道(その3)

オランダvs日本の親善試合は、ホームのオランダが3−0で勝った。順当な結果である。日本がアジア地区のW杯予選を勝ち抜いた後、岡田代表監督が掲げた目標がW杯ベスト4だった。筆者は当コラムにおいて、岡田の目標設定の馬鹿馬鹿しさについて、何度も批判を書いてきた。ただ、日本がアウエーで世界の強豪と試合をする機会がなかったため、岡田の目標の馬鹿馬鹿しさを実証することができなかった。今回のオランダ戦、日本の実力がどれほどのものか、大衆的に明らかになったはずである。

日本の実力が判明し、岡田監督の目標設定のくだらなさが明らかになったことは、日本サッカーの実情を認知するという意味で進歩である。しかしながら、この期に及んでそんなことが判明しても、深刻な問題の解決にはならない。筆者がいう深刻な問題とは、ドイツ大会以降の3年間、代表サッカーがまったく進歩していないという現実である。

オランダ戦を振り返って、前半は日本のほうがよかった、という報道があるに違いない。確かに、前半及び後半20分まで、オランダは日本のプレスにリズムがつかめず、中盤でボールキープできなかった。オランダが計算の上で日本の攻撃を受け止めていたのか、ただ単純にできが悪かったのか、筆者にはわからないが、本来の動きではなかったことだけは確かである。とはいえ、日本が点を取れる状態だったのかといえば、そうでもない。モタモタするオランダ、飛ばす日本、という展開であった。ただいえることは、日本は優勢であったけれど、決定的チャンスがあったわけではないということである。

後半、全体に動きの落ちた日本であったが、日本の右サイドがオランダに狙われた。オランダの交代選手が右SB内田を抜いてチャンスをつくり日本は失点した。90分間もたない右SB内田は、世界の強豪から狙われやすい。残り15分以降、内田だけではなく、日本の中盤が消耗しきって、勝負にならなかった。

日本の前半のプレスは、いってみれば、玉砕戦法である。飛ばすだけ飛ばして、攻撃的な姿勢を見せるものの、90分もたずに結局は失点をして負けてしまう。日本のスポーツマスコミは、こうした日本サッカーを、攻めの姿勢を貫いた、といって負けても賞賛する。攻撃的姿勢=プレースタイルを崩さない=いいサッカーという評価である。

筆者には、日本のプロサッカーの甘さが我慢ならない。こういう試合をいくら重ねても、W杯で勝ち残る確率は高まらない。この甘さは、代表だけではなく、日本のプロサッカー全体が持ち合わせている弱点である。結果が問われるプロの世界の厳しさを持ち合わせないという、致命的な欠陥である。レベルの高い相手に淡白に負け続けることが許さるという、日本のプロサッカーにしかない特権である。このような日本の「負け犬サッカー」の風土を、「いつか」「どこかで」「だれかが」変えなければ、日本サッカーの実力は上がらない。


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