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JIROの独断的日記
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2007年07月08日(日) 「集団的自衛権:行使容認を提言へ 首相の安保法制懇」「米向けミサイル『迎撃は困難』、政府答弁書決定」←何やってんの?

◆記事1:集団的自衛権:行使容認を提言へ 首相の安保法制懇(毎日新聞 2007年6月29日 15時00分)

政府は29日午前、憲法9条解釈の見直しを検討する安倍晋三首相の私的懇談会

「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇、座長・柳井俊二前駐米大使)の第3回会合を開き、

首相が提起した4類型のうち、米国に向かった弾道ミサイルへの対処について議論した。

安倍首相は会合の冒頭で「同盟国の米国に弾道ミサイルが落ちれば甚大な被害が出る。

そうなれば我が国にも深刻な影響が及ぶ」と語った。

委員らの事前の主張から、会合では集団的自衛権の行使として、

日本のミサイル防衛(MD)システムで弾道ミサイルを迎撃すべきだとの意見が大勢を占めた。

前回会合で、集団的自衛権の行使として公海上の米艦を護衛することでもおおむね一致しており、

今秋まとめる懇談会の報告書では、憲法解釈を変更し限定的な集団的自衛権の行使を認めるよう提言する見通しとなった。

首相は会合冒頭「同盟国の米国に弾道ミサイルが落ちれば甚大な被害が出る。そうなれば我が国の防衛に深刻な影響が及ぶ」と述べ、

同盟を重視する観点から検討するよう求めた。

委員からは「撃ち落とせるものを撃たなければ日米安保が根幹から揺らぐ」など迎撃容認論が相次いだ。

迎撃の法的根拠については「(危険を払いのけるという)警察権は無理な解釈。集団的自衛権の行使とすべきだ」との意見が多かった。

これまで政府は、米国を狙った弾道ミサイルを日本のMDシステムで迎撃すれば、

憲法解釈で禁じている集団的自衛権の行使にあたる可能性が高いと説明。

日本のMDシステムは「あくまでも我が国を防衛することが目的」と答弁してきた。

国際平和協力活動に関する

(1)攻撃された他国軍隊の援護

(2)戦闘地域内での他国軍隊に対する後方支援−−

の残る2類型については、参院選後に議論する。


◆記事2:米向けミサイル「迎撃は困難」、政府答弁書決定 (日経 2007/07/10 )

政府は10日の閣議で、米国に向かう可能性のある弾道ミサイルを日本のミサイル防衛システムで迎撃することは

「技術的に極めて困難」とする答弁書を決定した。辻元清美衆院議員(社民党)の質問主意書に答えた。

答弁書では導入を決めた海上配備型迎撃ミサイル(SM3)について

「射程約1000キロメートル級の弾道ミサイルに対処し得るよう設計されている」と指摘。

「他国へ向かう弾道ミサイルは高高度を高速度で飛行する」として、SM3では撃墜できないとの見解を示した。


◆コメント:集団的自衛権とは何か。

集団的自衛権とは、
「自国が、他国から攻撃を受け、又は侵略行為を受けていなくとも、自国と密接な関係にある国が武力攻撃を受けた際、これを自国への攻撃と同等と見なし、反撃する権利」

です。

これに対し、自分の国が攻撃を受けた時、個人になぞらえれば「正当防衛」で、日本国が、具体的には自衛隊が、

自国民の生命を守るために、反撃する権利を「個別的自衛権」といいます。このために、武力を用いることは、合憲だと思います。

何故なら、憲法前文には、
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

「全世界の国民」と書いてあるから、と言う以前に「日本国」憲法なのですから、

この一節は日本国民も平和のうちに生存する権利があることを意味しているのは当たり前です。

これを「平和的生存権」といいます。

個別的自衛権とは、自国が攻撃されたときに、自国民の平和的生存権を守るために、やむを得ず武力を用いることだから、合憲です。

こちらから、他国を攻めに行くのではない。守るのです。

一方、日本で、集団的自衛権を論ずるとき「密接な関係にある国」とは要するにアメリカです。

アメリカはずーっと戦争をしている国ですから、日本が集団的自衛権の行使ができるとなったら、絶対にアメリカに付き合わされて、

というか、小間使いのように使われ、自衛隊は海外で武器を用いて、日本を攻撃していない国の人を殺すことになるでしょう。

海外の新聞や雑誌を読むと分かりますが、
「日本は、世界第3位の軍事(国防)予算で、実際は世界屈指の軍備を有しているが、武力行使を禁止した憲法を遵守し、第二次大戦後60年間、ただの一度も他国に武力を行使したことがない」

ことは良く知られており、それが一目置かれているのです。


◆集団的自衛権の行使を絶対に認めてはいけない。

小泉純一郎が総理だったころ、テレビのインタビューで耳を疑うようなことを云っていました。その趣旨は

「日本が、他国(はっきり云えば北朝鮮か、中国でしょうね)から攻撃を受けたときは、集団的自衛権を行使して在日米軍と共に日本を守りたい」

ということでした。信じられません。

小泉純一郎は、明らかに「集団的自衛権」の意味が分かっていない。そういう人が内閣総理大臣を務めていたのです。

日米安保条約により、日本が攻撃された時に、米軍が日本を攻撃した第三国に反撃するとしたら、これはアメリカが集団的自衛権を行使しているのです。

それは、先方の憲法が集団的自衛権の行使を禁止していないからです(実際に有事の際に米国が日本を第三国から守るかどうかは別問題です。

先日、アメリカの下院が「従軍慰安婦問題で日本政府の謝罪を求める」決議をしたことや、

日本が国連安全保障理事会の常任理事国になろうとしたら、中国と協力してこれを妨害したのもアメリカであることを思い出すべきです)。

日本が攻撃されたとき日本が反撃するのは、在日米軍が加わろうが加わるまいが、日本の「個別的自衛権」の発動です。

日本の国を守るために、集団的自衛権は必要ありません。


◆安保条約締結より前から、日本国憲法が存在していたのです。

「米国は、日本が攻撃されたら集団的自衛権を行使して守ってくれるのに、日本はアメリカが攻撃されたときに守らなくていいのか?」

というのが安倍首相や、集団的自衛権容認派の主張です。

日本は、何もしなくていいのです。

何故なら、安保条約締結より前に日本国憲法は存在していて、

日本は武力を行使できないことを知った上でアメリカは条約を締結したのですから。

安保条約に、アメリカが攻撃されたとき、日本が応援するよ、とは一言も書いていない。

そういう「契約(条約は国家間の契約といっていいでしょう)内容」なのです。欧米人の世界では契約は神聖なもののはず。

これを逆手に取れば良いのです。契約に書かれていないことを、日本がしなければならない理由はない、と事務的に云いきればよろしい。

アメリカが日本に対して武力を行使しろ、戦争に付き合え、と言ったら「契約違反」だ、と言えば良いんです。

だから、米国が最近、日本の集団的自衛権容認論を歓迎してますが、安倍が余計な事を言うからです。

記事1は「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が、集団的自衛権行使容認を提言する、と言っています。

当たり前です。「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は安倍首相の「私的懇談会」です。

安倍様のご意向に背くことを云うわけがない。こういうのを「茶番」といいます。

安倍首相は「有識者が集団的自衛権行使を容認すべきだと云っている」と持論の正当化事由に使うつもりなのでしょうが、

繰り返しますが、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は安倍が作ったグループなのですから、何の説得力も無いのです。


◆懇談会に「弾道ミサイルを迎撃すべきだ」と云わせておいて、政府答弁書では「技術的に迎撃は困難」だってさ。

私は、集団的自衛権の行使、拡大解釈には反対だから、結論的にはいいのですが、

安倍内閣はどうして、これほど頓珍漢なのか?ということを指摘するために、この文章を書いています。

首相の私的懇談会の会合では、北朝鮮がアメリカ向けに弾道ミサイルを撃った時、日本がそれを迎撃するのは、

集団的自衛権の行使になるが、それは是非やるべきだ、といっているのです。

「日本のミサイル防衛(MD)システムで弾道ミサイルを迎撃すべきだとの意見が大勢を占めた。

ところが、記事2を読んで下さい。
米国に向かう可能性のある弾道ミサイルを日本のミサイル防衛システムで迎撃することは「技術的に極めて困難」とする答弁書を決定した。

それじゃ、懇談会の結論は無意味ですね。安倍内閣は迎撃すべきだと懇談会に云わせたのに、政府答弁書では、「迎撃は困難」と書いているのです。

最初から、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は、米国へ向かうミサイル迎撃の是非を検討する意味が無かったわけですね。

安倍ちゃん、何やってんの?貴方のやることは不可思議です。



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