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JIROの独断的日記
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2006年03月01日(水) どさくさ紛れに「共謀罪」法案が閣議決定されているのですよ。

◆記事1:組織的な犯罪集団に限定 共謀罪で与党が修正案 (共同通信) - 2月14日

与党は14日、殺人など重大犯罪の実行行為がなくても謀議に加わるだけで処罰可能な「共謀罪」新設を柱とした組織犯罪処罰法などの改正案に関する修正案をまとめ、民主党側に初提示した。

適用対象を「組織的な犯罪集団に限定」することなどを条文で明確化、民主党の主張に配慮した形だ。

改正案は3回目の提出となった昨年の特別国会で継続審議になっていたが、今国会でこの修正案の成立を図る方針で、民主党との協議を本格化させる。

与党は、野党や市民団体の「共謀罪の適用対象が犯罪集団に限定される保証はない」などといった懸念を考慮。

修正案では適用対象の限定に加え「何らかの準備行為があったことを共謀罪の構成要件に加える」ことも明記した。( 2月14日 21時50分更新)


◆記事2:共謀罪 (説明)

組織犯罪処罰法改正案に盛り込まれた「組織的な犯罪の共謀罪」。

法務省によると、暴力団による組織的殺人や悪徳商法グループによる組織的な詐欺など犯罪集団による重大犯罪の取り締まりが目的。

対象は4年以上の懲役・禁固に当たる罪で、公選法や職業安定法違反なども含めて600以上に上る。

日弁連などは共謀罪の要件が分かりにくく、犯罪と無関係の市民団体の規制などにつながると批判している。


◆記事3:2月28日付「官報」より、閣議決定等事項

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案(決定)(法務省)


◆コメント:重大なことを、誰も読まない官報でのみ発表するのか。

共謀罪とは何か。これに関しては、昨年、衆院選直後にかなり詳しく書いたので、読んで頂けると有難い。

要するに、「犯罪の計画を立てただけで、それ自体を犯罪と見なす」という刑法の規定である。

つまり、犯罪の実行はおろか、犯罪の準備をしてもいないのに、警察がドドっとやってきて、逮捕されてしまうという恐ろしい法律である。治安維持法に近い。



私は、昨年9月の衆院選直後、「与党は以前から制定したくて仕方のない「共謀罪」を一挙に決めてしまうかも知れない。危険だな」と思っていたら、案の定9月22日に法案が提出された。

そもそも、記事2にあるとおり、これは国際テロ組織を取り締まる為の規定のはずなのに、与党案では適用範囲を思い切り拡大して、刑法などで4年以上の懲役・禁錮に当たる犯罪を計画しただけで、逮捕されてしまう。

「組織」といっても二人でも「組織」と見なされる。

冗談でAとBが、友人Cを「明日ぶん殴ってやろうか?」と電話で話したのを警察が傍受したら、捕まってしまうのだ。



「犯罪の重さの尺度は、本来、社会に与えた損害の程度による」、と、18世紀のイタリアの啓蒙思想家、チェザーレ・ベッカリーアという人が「犯罪と刑罰」という本に書いている。

(因みに、刑法の大原則、「罪刑法定主義」なども、この人が考え出した概念である)

社会に損害を与えなければ、犯罪にならないのが原則である。

但し、近代刑法では、殺人や強盗など、特に重大な犯罪については、予備(計画・準備)や未遂(実行に移したけれども、目的とする結果が発生しなかった場合)にも、個別に例外規定を置いて、処罰の対象としている。

与党が考えている共謀罪はこのような、個別の犯罪の重大性を考えないで、懲役・禁錮4年以上の犯罪の計画を行った者を逮捕出来る、とした。そうすると、該当する犯罪は600以上にもなる。

うっかり冗談も言えない。国家が法律で国民をがんじがらめにしようとする意図が露骨に出ていた。

ところが、昨年の国会では成立しなかった。



何故か?

公職選挙法に該当する条文が存在するのである。

公職選挙法第222条「多数人買収罪」で、多数の人に買収工作を行った者は五年以下の懲役又は禁錮に処す、と書いてある。共謀罪の対象は4年以上だから、当然該当する。



つまり、共謀罪を成立させようとしていた国会議員のセンセーたちは、選挙の時に選挙事務所を開く。

このままだと落選しそうだというときには、選挙参謀が中心となり、大勢の有権者を集めて供応・接待をしようか、と相談する。そうしたら、共謀罪で逮捕される。

これを指摘したのは、政府参考人として招かれた、関東学院大学法学部の足立教授であるが、お見事。会議録を衆議院法務委員会テレビで見ると、傑作である。議員が皆、シーンとなってしまった。

他にも理由があるだろうが、これが一番大きな打撃だったのではないかと思われる。



それであきらめたかとおもったら、今期国会では記事1にあるとおり、「組織的犯罪に限る」とか何とか言って、成立させる気でいる。

法務省の法案は2月28日付の官報という、昔ながらの、「お上のお達し」(これが実に読みづらいのだ。PDFファイルなのだが、縦書きと横書きが同一ページに混在しているのである)に書いてある。



2月28日と云えば、永田議員の謝罪記者会見のニュースばかり。それに隠れるように「官報」だけに載っている。しかし、共謀罪ですよ。まだ法「案」だけど。

きちんと発表するべきだし、報道されるべきだ。

安倍官房長官はほぼ毎日、閣議がある火曜と金曜にはかならず記者会見をする。

その発言は、首相官邸の「官房長官記者発表」に掲載されるが、共謀罪の「きょ」の字も出てこない。マスコミも知っているのか知らないのか、全然報道しない。

合理的理由がある法案なら、ちゃんと発表すればよいと思うのだが、そうすることが出来ない理由でもあるのだろうか?


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