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JIROの独断的日記
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2004年12月06日(月) 「専門家の意見を聞くことは悪いことではない」(陸自幹部が改憲案について。小泉首相)。小泉流魔法の詭弁術。

◆記事:<陸自幹部改憲案>懸念相次ぐ中、首相の「問題なし」発言
 

 陸自幹部が憲法改正案を作成していた問題で、小泉首相は6日、「専門家の意見を聞くことは悪いことではない」として問題視しない考えを示した。 しかし、防衛庁は作成の経緯や組織的関与の有無などを調査し、関係者を処分することも検討。

 文民統制からの逸脱を懸念する声が相次ぐ中、首相の容認姿勢が突出する形になった。 (毎日新聞) - 12月6日20時50分更新


◆コメント:天才的な、論点外しの術。

 

 「詭弁(きべん)」を広辞苑で引くと、

「道理にあわぬ弁論。理を非に言いまげる弁論。こじつけの議論。」

とある。小泉首相の国会答弁やいわゆる「ぶらさがり」会見(1日1回テレビカメラの前に立ち止まって行う簡易的な会見)における発言は、「詭弁の宝庫」だ。

今回、表題で取り上げた発言、

「専門家の意見を聞くことはわるいことではない」

 という主張は、一般論としては正しい。しかし、そこでだまされてはいけない。
憲法改正の議論をする際に、専門家の意見を聞くとすれば、相手は「憲法の」専門家であるはずだ(憲法学者とかね)。

 小泉首相の言葉をそのまま受け取れば、 陸上自衛隊は、「憲法の専門家」であることになる。

 ほほう、そうですか。私は、てっきり、自衛隊は軍事の専門家だと思っていました。

 憲法・法律の専門家だったんだ。シンクタンクだったんだ。ふーん。それなら、兵器なんか全く要らないね。ということになる。

 小泉首相の発言は、このように、一見正しいのだが、少し考えれば、問題を誤魔化していることが明らか、というケースが頻繁にある。


 憲法改正問題は要するに、「9条を変更するか否か」が焦点である。

自民党(少なくとも小泉首相)は「戦争を放棄する、戦力を保持しない」、と規定している現憲法を変えたがっている。

そのときに、「戦力そのもの」であるところの(厳密に言えば現憲法では、戦力は保持していないのであって、自衛隊は日本を防衛するための「最小限の実力」と書かなければならないのだが、ここではそのような形式論は排除する)自衛隊に改憲案を書かせれば、どういう答が返ってくるか、読む前から分かっている。

我が国に集団的自衛権の行使を認めるか否かは、自衛隊が口を出すべき問題ではない。
戦前の日本では、陸軍大臣、海軍大臣、というポストがあった。内閣の一部が軍人だったのだ。

軍人の特に上層部は、一度は戦争してみたいのだ。

 自分は前線に出ない。血を流さずに済む。安全地帯にいて、「出撃!」とかわめくだけでいいのだ。

 一人の人間が快適なエアコンの効いた部屋にいて、指先一つで、何万人という、兵隊を動かしてみたくなるのである。


 話がそれる。ふと、考えたが、戦争が起こるのは、昔から政治家の殆どが男だからだね。

世論調査を見ると、イラクへの自衛隊派遣延長に反対している人は女性が多い。

女性でも、勿論、好戦的な人はいるだろう。しかし、基本的に母性が働くからね。子供がいる、いないにかかわらず。

「我が子が戦場へ征くことになったら・・・」という想像力は女性の方が優れている。

 男は、「戦って勝つ」美徳を刷り込まれているからな・・・。

 論理性のない、感情が先に立ってしまう人は困るが、優秀な女性の政治家が内閣で過半数を占めたら、世の中はずっと柔らかくなるかも知れぬ。


 閑話休題。今回陸自幹部が作成した改憲案には、「集団的自衛権の行使」が盛り込まれていたという。

 これを「問題ではない。」と言い切る小泉首相は本当に勉強しない人だ。

 自衛隊の改憲案は小泉首相にとって、都合が良い意見だろうが、法律に違反していることを総理が見逃しては困る。

自衛隊法第61条は、



(政治的行為の制限)  隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない。


 と、規定している。この中にある「政令」とは「自衛隊法施行令」(昭和二十九年六月三十日政令第百七十九号)というもので、その中で関係が有るところだけをピックアップする。



(政治的目的の定義)
第八十六条  法第六十一条第一項 に規定する政令で定める政治的目的は、次の各号に掲げるものとする。

三  特定の政党その他の政治的団体を支持し、又はこれに反対すること。

四  特定の内閣を支持し、又はこれに反対すること。

五  政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し、又はこれに反対すること。



 この文言を読んだあとで、共同通信の記事を確認する。


 ◆陸自幹部が改憲案作成 自民大綱素案に反映

 陸上自衛隊の幹部隊員が、軍隊の設置や、集団的自衛権の行使を可能とする内容の憲法改正案をまとめ、10月下旬、自民党憲法調査会の中谷元・改憲案起草委員会座長に提出していたことが4日、分かった。

この中で示された趣旨はすべて同党の改憲草案大綱の素案に反映されている。憲法改正という高度な政治的課題に「制服組」が関与したことは、政治が軍事を監督するシビリアンコントロール(文民統制)を逸脱するとともに、公務員の憲法尊重擁護義務にも違反する可能性が高く、批判を浴びそうだ。

 中谷氏に提出された改正案は「憲法草案」とのタイトルが付けられ、陸自の中枢である陸上幕僚監部防衛部防衛課防衛班に属する二等陸佐の名前と、職場の連絡先が添付されている。(共同通信) - 12月5日2時18分更新



 

 というのだから、明らかに「特定の政党」の「政治の方向に影響を与え」たわけである。 

 それでは、自衛官に言論の自由は無いのか?というと、国防に関しては制約される、と云わざるを得ない。

それは、政治に軍人が介入して戦争に巻き込まれた、今からたった60年前の苦い教訓に基づいており、なおかつ、上述の如く政治的行為の禁止はずっと以前から明文化された国法で規定されている。今に始まったことではない。

新聞などマスコミも「シビリアン・コントロールに反する恐れがある」と書いたり、放送したりするのは、根拠が曖昧で良くない。れっきとした法律と政令の規定があるのだから、きちんと説明すればよいのだ。

結論的に繰り返すと、小泉首相が本件に関して問題なし、といくら云おうが、既に国法により、自衛官がこういう事をしてはいけない。と定めているのである。行政府たる内閣と、当然その長である内閣総理大臣は、国権の最高機関(憲法第41条)である国会が定めた法律を破ってはならないのである。


2003年12月06日(土) 「首相、涙でイラク復興誓う…2外交官合同葬 」 外交官が亡くなったことは自衛隊派遣の理由にならない。
2002年12月06日(金) 小柴、田中両氏、ストックホルム到着、のニュースを聞いて、色々と思いを巡らせる。

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