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JIROの独断的日記
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2002年10月22日(火) 「・・・だから、清の墓は小日向の養源寺にある。」

仕事の都合で文京区小日向(こひなた)へ行った。
 ここは夏目漱石ゆかりの地である。
 
 私は漱石の「坊っちゃん」が好きでたまらない。世間知らずの坊っちゃんが松山の中学に赴任して、世間の醜いところを散々見せ付けられ、ついには体よく追い出されてしまうが、最後に山嵐と一緒に赤シャツと野だを待ち伏せして、ボコボコにして東京の清の元に帰って来る。そのときの嬉しさが手にとるように分かる。坊っちゃんと清は互いにとってこの世で最も大切な存在である。最後の最後、清が亡くなってしまうくだりは、読むものの胸に迫る。しかし、坊っちゃんは江戸っ子だから、クヨクヨしたところを見せたくない。

 「・・・清は玄関付きの家で泣くっても至極満足の様子であったが気の毒な事に今年の二月肺炎に罹って死んでしまった。死ぬ前日おれを呼んで坊っちゃん後生だから清が死んだら、坊っちゃんのお寺へ埋めて下さい。お墓のなかで坊っちゃんの来るのを楽しみに待っておりますと云った。だから清の墓は小日向の養源寺にある。」

 淡々とした語りのなかに無限の愛情を感じる。私は初めて読んだ時にこのラストシーンを一遍で覚えてしまった。うー。いかん。書いただけで泣けてきた・・・・。
 だから、小日向にはいつか行きたいと思っていて、しかし、あまり簡単に行きたくなかった。今回ようやく、積年の願いを偶然にではあるが果たす事が出来て嬉しかった。実際には漱石の菩提寺は養源寺とはいわないのだが、そんな事は関係がない。小日向は坊っちゃんと清が幸せに暮らしている場所なのだ、と改めて、思った。


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