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■ 誰もいない。。。(地域の安全編)
帰り道、携帯電話が路上に落ちていた。 最初捨てられているのかな、とも思ったが、一応確認。 しっかり、二十分くらい前に通話記録。ストラップもしっかり付いている。 となると、これは捨てられたとは考えにくい。 通話ボタンを押すと、しっかり「プー」という音。
悪用してやろう。
落とす奴が悪いんだ。
と、わたしは思わないので、すぐに交番に届けることにした。 そして自宅の最寄の派出所まで来て、中に入ってみる。 わたしの目に入って来たのは−
「ただ今、パトロール中です」 の文字。あ〜そうかそうか、この寒い中、地域の安全の為、警らに回られているのですね。感心なことです、税金泥棒とか言う奴がいるかもしれないのに…… いや、まて、まて、え? なに、いないの……
そしてその下に小さな文字で、「御用の方は、受話器をとってお話ください」と書いてある。
ここでちょっと横道。たとえば、暴漢に追われているとする。やっとの思いで派出所まで逃げてくる。するとどうだろう、派出所には煌煌と灯はともっているものの、誰もいない。しかし、暴漢は追ってきているのだ。途中で携帯で電話することもできなかったくらいだ。当然、受話器を上げる暇、もしくはその文字を目にする時間はない。さあ、どうする… はて、こんなことで地域の安全は守れるのだろうか…
緊急でもないから110番はおかしい。 なので、大人しく、その文字に従い、受話器をあげる。と、直ぐに電話は通じた。
警察人「(緊急な感じ)どうしました?」 わたし「いや、携帯電話を拾ったので届けに来たら、誰もいないみたいなんですけど…」 警察人「は?」 わたし「いや、ですからね、携帯電話を拾ったんで来てみたら、誰もいないんですけど。」 警察人「携帯電話?」 わたし「はい、携帯電話。」 警察人「(明らかにテンションが変わり)ああ…。それはどうもご苦労さまです。」 わたし「いや、あの、どうしたらいいですかね?」 警察人「(唐突に)あの、お時間ありますか?」 わたし「え?」 警察人「お時間大丈夫ですか?」 わたし「時間は、あの、大丈夫ですけど…」 警察人「今、警邏中の人間をそちらに向かわせますので、お忙しいところ申し訳ありません。」 わたし「…(納得はいかないものの)わかりました、待ちます。」 警察人「申し訳ありません、すぐに向かわせます。ちなみに、そこはどこの派出所ですかね?」 わたし「え?(しらないのかよっ!とは突っ込まず)井草八幡の前の…」 警察人「あ〜、善福寺ですね。」 わたし「…なんですかね?(どこに書いてるかわからない)」 警察人「じゃあすぐに向かわせます。あ、ちなみにお名前は?」 わたし「藤井です。」 警察人「藤井さんね。すぐ行かせます。」
と、電話は切れる。
……。 なんなんだ。さっきの疑問、受話器を上げて「助けておそわれるー!」となった場合でも、「そこはどこの派出所ですか?」と言うつもりなのか? または、「おそわれる〜!」って途中で切れてしまったら、「今の襲われたのは、どこの派出所だ?」ってイチイチ派出所に電話して回るのだろうか、しかもその派出所には警察がいないのだ…。安全は大丈夫なのだろうか…危惧危惧危惧
奴は携帯と言った途端、明らかにテンションが下がった。まあ、それはいい。 奴は突然、「お時間ありますか?」と会話の流れをしらない質問、しかも否定のしようのない言葉、大体、その日、わたしは帰ってきたところなのだ。出かけるならいざしらず。そしてもし、「時間ね、ないっす」と言ったらばどうなっていたのだろうか。まあ、それもいい。 奴は直通電話になっているにも関わらず、そこ、どこですかね?と聞いた。恥ずかしいにも程があるんじゃないのか。国家の威信に関わりはしないのか? それにわたしは「善福寺ね」の問いに答えてはいないのだ。しかしまあ、それもいいだろう。 奴は「すぐにいかせます」と言ったのだ。
しかし、待てど暮らせど、警邏中だった警察官はやってこない。 五分たち。 十分たち。
その間にも、警察官でない人たちが派出所の前を通り、警察もいないのに、そこに座っているわたしを不思議そうな目で見ていく。
十五分たち。 いたたまれないし、寒い。 とりあえず、煙草を表に出て吸う。(ちゃんと携帯灰皿持ってます) それでも来ない。 と、派出所の電話が鳴った。 もしかしたら、遅れていることを思って電話をかけてきていると思った。そのセンが一番強そうだった。しかし、だからといって、受話器を上げたら、「暴漢に襲われそうなんです!」なんてことになっていたら、それはもう一体どうしたらいいのかわからない。わたしも「そこどこですか?」とか答えとけばいいのか? なんかの事件であったとして、わたしがその詳細を聞いて、連絡先を聞いて、再び受話器を上げ、さっきの奴に説明をするという本当に意味のわからないパターンまで考えてしまった。そうしたところで、どうせ最後に、「そこ、どこですか?」と聴かれるのは目に見えているのだ。 また、電話を取ってみたら「警察ですか?」と言われたら、わたしはとりあえず「ちがいます」と答えるしかないわけだし、もう少し緊急でない場合は、「実はわたしは警察の者じゃないんだけど、かくかくしかじかこういう事情でこの派出所に二十分くらいいるだけで、どっちかと言うともう寒いし帰りたいし…」と説明から始まって、泣き言を言いそうな位だ。
電話が鳴り止む。 もう、こうなったら、どうでもいいや。 わたしはカバンから本を取り出し、読み始めた。 深夜、あそこの派出所、警察官いないのに、煌煌と灯のついた下で、警察官じゃないお兄ちゃんが、小説を読んでるんだよ。どうも、あの派出所に恨みを持ったお兄ちゃんが死に切れずに出てくるらしいんだよ… と、もうそんな意味のわからない事を噂にされてもおかしくないほど、おかしな状況だった。 それから十分後、都合、電話をしてから三十五分。 漸く、警察官は現れた。 手続きは、三分で終わった。
…すぐじゃないじゃないか。手続きはすぐ終わったけど。 すぐというのは三十分以上の事を差すわけがない そして「地域」と言うのは、自転車で三十分以上掛からないところだと、わたしは認識する。 そしてそして思う。その警察官も電話に出た奴と一緒だ。 「なんだよ携帯電話かよ。」 テンションが下がったんだろうねえ、きっと。 でもわたしはいい人だから、その辺は突っ込まなかった。 こうしていい人はいなくなっていくのだ。
携帯電話がちゃんと落とし主の所に戻ったことを祈りつつ−
ごう
2004年11月20日(土)
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