| 2011年04月08日(金) |
坂井 克之 『脳科学の真実--脳研究者は何を考えているか』★★★★☆ |
 坂井 克之 『脳科学の真実--脳研究者は何を考えているか (河出ブックス)』
メモ。
「はじめに明言しておきたいことは、メディアに頻繁に登場する脳科学にもとづいた主張が、実際の脳研究の現場の考えをまったくと言ってよいほど反映したものではないことです。」(p15)
この本では、「お茶の間の脳科学」と「現場の脳研究」の違いを説明してくれています
「実際には脳の働くメカニズムは複雑でまだまだわからないところがあるのに、前頭葉が活動する課題を続ければ脳が鍛えられる、などという単純なお話は、『これは効きますよ、奥さん』と言って健康器具を宣伝する、みのもんた氏のせりふ以上のものではなく、なんら科学的なものではないというものです。」(p39-40)
「現実には『脳科学による証拠』はほとんど存在しません。あるのは脳科学の『仮説』です。仮説は検証されなければなりません。そして仮説というためには、どういう結果が得られたら仮説が棄却されるかを、あらかじめ明確にしておく必要があります。」(p50)
「現代社会の余裕のない状態におかれた人々は『考える』ことよりも『信じる』ことを選ぶものなのです。」(p51)
「脳科学者」と「脳研究者」。ダークサイドに引き寄せられてしまう脳研究者がいるのはなぜか。研究者のダブルスタンダードの使い分け。
「もちろん大多数の研究者はこのような誤解を与えることを着たいしているわけではありませんが、『脳の活性化』という何気ない表現がどのように受け止められるか、現在の社会の風潮を考慮に入れて但し書き付きで情報発信をする必要があります。」(p188)
脳科学風の「語り」をする人を、「脳文化人」。 脳科学で明らかになったことの中から明らかに面白い側面ばかりを取り上げてウケを狙う「芸脳人」。面白くて文芸的であっても科学的ではない。
著者の願い。 「フェアな情報発信によって、研究者と一般の人々の間にわだかまっているアンフェアな思いを変えてゆくことができれば、私はうれしいです。」(p212)
わかりやすくて読んでて楽しかったです。 ありがとうございました。
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