| 2005年11月26日(土) |
矢内 真由美『なぜ、雲仙で死んだの。―夫31歳、カメラマン 火砕流に呑まれたあなたに捧げる鎮魂歌』★★★★☆ |
『なぜ、雲仙で死んだの。―夫31歳、カメラマン 火砕流に呑まれたあなたに捧げる鎮魂歌(レクイエム)』 矢内 真由美 ベストセラーズ (1991/10)
本を読んで泣いたのは久しぶりです。
読み終えて、息を殺して泣きました。 涙が止まらなかった。
雲仙で取材中、火砕流に呑まれて命を奪われたカメラマン。 その妻が、回復後に資料となればと書き綴ったメモを元にできあがったドキュメント。
読みすすめながら、私も病院の片隅で一部始終をただ無力に眺めながら共に過ごしている気持ちになりました。
哀しい結末がわかっていても、それでも、「御願い、どうか持ち直して。助かって」という思いでいっぱいになった。
カメラマン矢内さん。 彼にしかできないこと、彼だからできることがたくさんあった。 有能な取材者を失ったことも社会の損失だと思うけれど、何よりも一人の夫として父として本当に素晴らしく生きていけたはずの人だったと思いました。 妻真由美さんとの思い出の中のいくつものエピソードが教えてくれます。
だから、残念でならないのです。
ただの追悼本ではなく(それでもとても重いけれど)、彼女の問題提起には考えさせられました。 それは、取材者の安全よりも、お茶の間の欲求充足、しいては視聴率を優先するという現実。とどまることを知らない視聴者の欲望が矢内さん初め、多くの報道に携わる人を今も危険な現場のまっただ中に送り込んでいる。 改めなくてはいけないこと。 ひととして、想像力を持てばわかるであろうこと。
心に残ったところ。
夫の友人が寄せてくれた手紙の一部。
「困ったときは助けを求めて、すべてを背負わずに。」(p87)
そして妻から夫へのメッセージ。
「あなたが逝ってしまった悲しみより、 私が生きているということが悲しかった。」(P199)
「こんなにまで深く 愛することを教えてくれて ありがとう、まきちゃん。」(p200)
心からご冥福とご遺族のご多幸をお祈りします。
『なぜ、雲仙で死んだの。―夫31歳、カメラマン 火砕流に呑まれたあなたに捧げる鎮魂歌(レクイエム)』
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