青の階

2005年05月05日(木) 白いほうが熱い

小さい頃は花火が苦手だった。
手に持った細い棒の先端から白い光が勢いよく噴き出してゆくのは、
その光が赤い粒となってアスファルトの上を転がるのを見るのは、
ほとんど恐怖だった。
きっと動く火が怖かったのだと思う。
ゆらゆら動くロウソクの静かな炎と対照的に
花火の火は勢いを持ち、明るく火花を散らして燃えるから。
浴衣に火の粉が燃え移りそうで、不安で、
花火を持つ手を遠くに伸ばして体から火を遠ざけていた。

そんなことを思い出しながら花火をした。
怖がりのわたしも今では花火が大好きで
指と指の間にはさんで一度に沢山の花火を振り回したりする。
あんまりみんなが一斉に花火に火をつけるもんだから、
煙がどんどんどんどん空に向けて立ち昇ってゆく。
真っ暗だった空が煙のせいで白く濁った色になる。

そっと、隣の友達から火をうつしてもらう瞬間が好きだ。
橙色に染まった手元、触れそうで触れない指、
一つの火を、同じものを、共有している気持ちになる。

すっくとひとりが立ち上がり、
ガンマンのように筒を持つ手を上空に向けた。
一発、二発、三発、四発…
打ち出し花火がきらきらきれいに尾を引いて琵琶湖の水面に流れて消えた。


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