久しぶりに本を読んだ。 昨年金沢のホテルに泊まっている時、 サガンが死んだことを新聞で知った。 なので買ってきたのは当然「悲しみよ、こんにちは」 途中で主人公がネズミ色のドレスを着た女性を「美しい」と賞賛するシーンがある。 わたしにはネズミ色というとみすぼらしい、というイメージがあるので 美しいと言う表現は新鮮だった。 ついでにその表現から、映画「8人の女たち」の中の あるキャラクターが着ていたネズミ色のドレスを思い出した。
ドレスのサテンがきらきら光っている。
滑らかなその手触りがわたしの頭をぼやけさせる。
久しぶりに、自転車で大学に行った。 印画紙を買いに行ったのに、目的を忘れて 関係ない小説とお菓子を買って帰ってきた。 しかし、昨夏痛めた足は、随分調子を取り戻してきたようだ。 この道、あの坂、鉄塔、晴れた空、物憂い午後、 わたしが愛している季節のことをまざまざと思い出し センチメンタルな気分のままに坂を下り降りた。 帽子にあたった風が耳元でひゅうひゅうと唸っていた。 はやく夏よ来い。
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