火葬

 亡くなった日の夜は、にょらを腕に抱いて寝た。といってもずっと顔を見ていたので、実際に眠ったのは1時間程度だったと思う。顔が腫れ、人相が変わってしまうぐらい泣いた。

 月曜日の午前中いっぱいはにょらを抱っこして過ごし、葬儀屋さんから棺が届いてからはにょらをその中に寝かせた。ただ眠っているとしか思えないやさしい顔だ。花をたくさん入れる。

 火曜日には、先日注文しておいたにょらのごはんが届いた。

 そしてきょうはお別れの日。桐の棺とドライアイスのおかげで、にょらはきれいなまま眠っている。棺から出して抱っこしたり一緒に写真を撮ったりして過ごした。安らかな寝顔。よく見ると、目に涙がたまっていた。

 午後3時ごろ、家から歩いても行けるところにある火葬場まで、車に棺を乗せてゆっくり行った。にょらが好きだったU2のCDとCDラジカセも積んだ。

 火葬炉の前で最後のお別れ。持っていったCDをかける。にょらのまわりにはたくさんの花を散りばめていたけど、さらに病院から届いた花束と夫が買ってきた花束を入れる。にょらをさわったり言葉をかけたりするあいだ、火葬場の人は部屋の隅でずっと待っていてくださった。

 お別れの決心がつき、お焼香をしたあと棺が炉の中に入れられる。合掌して見送る。そして点火。待合室で仏壇や位牌の見本、犬猫グッズなどを見て過ごす。40分ほどで呼ばれ、部屋へ案内される。

 にょらはお骨になってもきれいだった。

 一目見て、にょらが天国に行けたのがわかった。これが頭蓋骨、これが第一頚骨と、骨の説明を受ける。背骨はほぼ完全な状態で残っていた。普通は崩れてしまうことが多いらしい。脚の骨はしっかりして太い。歩けなくなったこともあったのに。しっぽの骨はばらばらになって散らばっていた。下あごには歯も残っている。爪もある。うんちまであった。そういえば、亡くなる2日前にしたのが最後だった。

 頭蓋骨と下あごの骨と頚骨は最後に入れるからと別にされる。最初はおふたりでひとつの骨を一緒に入れてくださいといわれ、大きめのを選んだ。そのあとはそれぞれ好きなようにお箸でつかんで骨壷に入れていく。つかめる限りの骨をつかんで入れたあと、細かいものは火葬場の人がはけで取って入れてくださった。全部入れてもらえるとは思わなかった。とても丁寧で心がこもっている。そして粉骨され(頭蓋骨が入るように)、頭蓋骨、下あご、第一頚骨の順に入れられる。そして最後に第二頚骨(のどぼとけの部分)。これは奥様が代表でといわれ、わたしがお箸でつかんでそっと入れた。

 泣きじゃくりながらお骨を拾う姿を想像していたのだけど、泣かずにできた。にょらはもう苦しむこともなくなったのだと、お骨を見て思えたから。不思議に静かで厳かな気分だった。

 にょらは幸せそうに旅立った。苦しみのない世界へ……。





2003年10月29日(水)
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