8時間軟禁事件

 このところネタがないので、古い話をひとつ。

 その日わたしにはやるべきことがあり、朝からそれにかかりきりになっていた。時間に追われていたので、ほかのことにはいっさい気持ちが向かなかった。そういえば、しばらくにょらを見てないなあ……。そう気づいたのは、夕方近くになってからだった。

 ふだん、日中はどこかで寝ていることが多く、姿を見かけないのは珍しいことではない。しかしその日は朝起きたときに見た記憶しかなかった。いくらなんでももう出てきてもよさそうなものなのに……。ちょっと心配になってきた。

「にょらちゃ〜ん!」と呼びながら、にょらが入りそうなところを捜してみる。返事がない。もう1周同じところを捜し歩いていると、どこかで遠い声が。その声を頼りに歩いていくと、なんとクローゼットの中から聞こえるが戸は閉まっている。ま、まさか……。恐る恐る開けてみる。

「うにゃ〜〜〜!!」

 頭上からけたたましい声。にょらちゃん、あんたなんでそんなところに……。にょらを抱いておろしながら、記憶をたどってみる。朝わたしはこのクローゼットを開けただろうか、それとも閉じ込めたのは夫……? にょらは(猫はみなそうだと思うが)暗くて狭いところに入るのが好きで、足音もたてずにやってくるから、クローゼットを開けたすきに入ったのに気づかず閉めてしまったのかも。そこではっと気づいた。にょらは上の棚にのぼっていた。ということは……。その下にかかっている洋服をかたっぱしからチェック。

 が〜〜〜ん!! わたしのお気に入りのワンピースがぁぁぁぁ。よりによって、このワンピースに爪をたててよじのぼったらしいのだ。無残にもワンピースの袖と肩のところに引きつれと穴が数箇所……。く〜〜〜 (T^T)。

 わたしがいた部屋とこのクローゼットは離れていた。呼んでも叫んでも開けてもらえず、必死でよじのぼったのだろう。たぶん、閉じ込めたのはわたしだ。朝からだから、ざっと短めに見積もっても8時間。罰としてはちと厳しいが、犠牲になったのがワンピース1枚でまだよかった。にょらもよくがんばったよ……。ふぅ。

 後日、問題のクローゼットを開けて探しものをしているとき、ほのかに覚えのある臭いが……。いやな予感。臭いのもとをつきとめるべくあれこれ探っていると、どうやら新品の下着類をまとめて入れてあるカゴがあやしい。取り出して中の下着を1枚1枚めくってみる。……やはりあった。ころころのうんちが。8時間も閉じ込められていたのだから無理もないよねえ。にょらも後ろめたい気持ちがあったのだろう。ちゃんとそれらしいところにして、上に丁寧に下着をかぶせておくところがいじらしいではないか。さいわい硬いうんちなので下着もそれほど汚れていず、虫もわいていなかった。

 それ以来、クローゼットを開けるときは十分注意するようになったのはいうまでもない。



2003年04月02日(水)
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