与太郎文庫
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2006年02月10日(金)  電辞苑 〜 社内敬語と電話の受け方 〜

 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20060210 
 
 島田紳助事件の謎は、吉本興業の女性マネージャーが、かつての上司
を呼捨てにしたことが発端らしい。世話になった元常務(木村 政雄)
を呼捨てにされたので、紳助が怒ったのだそうだ。
 
 吉本興業も、紳助も、元常務も、みんな口を閉ざしたままなので、他
の理由があるはずだが、世間の多くは納得してしまった。
 なにやら企業内敬語という文法が、存在するらしいのである。
 
 そもそも日本の敬語は、天皇を頂点として、各々の立場をあきらかに
するための言語システムだったが、天皇が求心力を失なったのに、文法
だけが形骸化している。
 
 その結果、先祖代々の美風を受けついだ人々はともかく、まるで縁の
なかった人々まで古代敬語を学び、見よう見まねで使いはじめたので、
世の中全体にバラバラの言語システムが散在してしまったのだ。
 
 与太郎は、国語文法には弱いが、うえつかたに拝謁してインタビュー
した経験があり、一流企業の社員にも知己があるので、これをもとに、
いわゆる社内敬語について、手引きとなるサンプルを記してみよう。
 
 ◆ 基礎編
 
「もしもし、山田商事さんですか?」
「さようでございます」
「御社(おんしゃ)に、田中さんは居られますか?」
「あいにく、弊社(へいしゃ)には、田中と申す者は居りませんが」
「おかしいな、ずっと前から居ないんですか」
「失礼ですが、どちら様でいらっしゃいましょうか?」
「えーと、わたしは鈴木と申しますが」
「あの、どちらの鈴木さまでいらっしゃますか?」
「田中くんの、友だちですけど」
「さきほど申しあげましたように、弊社には田中と名乗る社員は、以前
も今も、在職しておりません」
「あんた、田中って呼捨てにするのは、失礼じゃないか!」
「失礼いたしました。田中さまというお名前は、弊社に在席しません」
「あっそうだ。田中じゃなくて、中田くんだった。中田さん居ますか?」
「少々お待ちくださいませ」
(♪)
「お待たせいたしました。弊社の中田は二名居りますが、どちらの中田
でございましょうか?」
「なんだって? 中田太郎だよ」
「少々お待ちくださいませ」
(♪)
「お待たせいたしました。中田は二名居りますが、太郎は居りません」
「待てよ太郎じゃなかったかな。それじゃ何ていうの、お宅の二人は?」
「あの、鈴木さまは、中田にどのようなご用件でいらっしゃいますか?」
「また呼捨てにしたな。中田くんが電話に出てから話せばいいだろ」
「申しわけございませんが、弊社では業務中の私用電話は、お取りつぎ
いたしかねますので、ご用件を承りまして、あらためて本人からお返事
さしあげることになります。つきましては、鈴木さまのお電話番号を、
頂戴いたしとうございますが、いかがでございましょうか?」
「なんだと、どっちの中田でもいいから電話に出せよ!」
「少々お待ちくださいませ」
(♪)
(ドスの利いた男声に代わる)
「お待たせしました。営業部の中田ですが、何か?」
(ガチャリ)
 
 ◆ 応用編
 
 サラ金の催促では、最初から「中田二郎さん、いらっしゃいますか?」
とフルネームで特定する。「どちら様でしょうか?」と聞くと、社名だ
か地名だか、あいまいに「中野の鈴木です」というふうに答える。
 
 女声で「銀座の鈴木でございます」といえば、察しがつくはずだ。
 向こうで手を横に振ってる社員がいれば、やんわりこう答える。
「中田は、ただいま席をはずしておりますが、いかがいたしましょうか」
 
「あらそう、戻ってらしたらお電話ちょうだいしたいんですけど」
「かしこまりました。中田は、鈴木さまの番号を存じおりましょうか?」
「よーく、ご存知ですことよ。それじゃよろしく。オッホッホ」
 
 このまま終るわけがないので、小一時間たつともう一度かかってくる。
「さきほどの鈴木でございます。中田さん、お戻りになりまして?」
「あいにくでございますが、さきほど中田は急用で外出いたしました」
 
「まぁ、お忙しくて結構でございますこと。お帰りのご予定は?」
「こちらでは、スケジュールを把握いたしかねております」
「あらそ、そいじゃ今晩お待ちしてますって、伝えといてくださいな」
 
(つづく)
 
(20060209-0210)
 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20041106
── 《土下座考 20041026 謝罪会見》
 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20041030
── 《喜怒哀願 〜 Way of Thinking 〜》
 
http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=1061001
── 《島田紳助事件で社内の人間への敬語 20041029-1231》
 
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