与太郎文庫
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2003年12月17日(水)  自立 〜 若者よ、大志を抱け 〜

 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20031217
 
 ことし若者は27才と4ヵ月で、生後一万日を迎えた。
 満28才、または満56才になると、生れた日とおなじ曜日にもどる。
(19000301〜21000228)
 
 かつて県立高校の普通科に合格した時には、国公立大学にすすんで、
そこそこの会社に就職して、平穏な人生がはじまると予想していた。
 高校生活は思ったほどには快適ではなかった。進学校などといっても、
みんなが国公立大学に入れるわけではない。成績上位の、一割から二割
が志望校に入れるだけで、ほとんどは無名の私立大学や専門学校などに
すすむことがわかった。
 
 卒業の前に、担任の先生による「進路指導」がはじまった。
 成績表をもとに、入れそうな大学の名を告げられたが、どれも聞いた
ことがない。親に相談しても、就職するしかなかった。
 高校のあっせんによって、ちいさな建設会社に就職した。入社試験も
なく、社長の面接だけで合格した。
 
 社長の奥さんが専務だった。専務のお友だちだという女の人がやって
きて「結婚するとき、ぜったい必要だから」と生命保険をすすめられた。
 毎月一万円が給料から差引かれることになった。
 
 はじめ数ヶ月は、見習いだからという理由で穴掘りばかりやらされた。
 事務員として採用されたはずだったが、一年たっても穴掘りだった。
 意を決して、社長に聞くと「君は字がヘタだから、事務には向かない」
と云われた。
 
 毎日々々穴を掘って分ったことだが、大学に行かない者にとっては、
高校時代の受験勉強が、まったく役には立たなかったことだ。しかし、
会社の同僚を見わたすと、中卒や大卒ともども、おなじように穴掘りを
している。ほとんど給料も変りがないらしい。
 
 これ以上穴掘りはゴメンだった。ついに一年半で退職する。
 テレビで宣伝している求人雑誌をみて、コンビニ店に再就職した。
 ここでも、社長の奥さんが専務だった。
 社長夫人には、生命保険のかわりに、車の損害保険をすすめられた。
 厚生年金や社会保険や雇用保険などは差引かれなかった。
 
 八年間まじめに働いたので、社長が給料を(少しばかり)上げてくれ
たが、翌月には専務の一存で取消されてしまった。
 
 つくづくいやになって退職する。
 厚生年金や社会保険に加入していなかったのに、たちまち国民年金と
国民健康保険の督促状が届く。雇用保険をかけていなかったので、失業
すると貯金を食いつぶすしかなかった。
 収入がないまま放っておいたが、一年たつと底をついた。
 
 携帯電話料金や生命保険などが、預金残高不足のために、催促される。
 とくに生命保険は、別の担当アドバイザーが「どうなさいますか」と、
たずねてきた。「払えない」というと「解約しますか?」と云われた。
「はい」と答えると、すぐに手続きされた。
 
 約十年間の掛金合計は120万円だったが、返金されたのは27万円
ほどだった。高校卒業から十年、これだけが手もとに残っていた。
 友人の(紹介ではなく)すすめで、ショップ・チェーンに再々就職を
果たす。ただし、一ヶ月は見習い期間で、正式採用ではない。その間、
マンションを借りるため、敷金など約13万を支払った。
 
 身のまわりのものを積んだ中古車と、携帯電話とキャッシュカードが
全財産である。
 若者よ、いまこそ自立のはじまりなのだ。大志を失ってはならない。
 


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