与太郎文庫
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2003年03月09日(日)  《弦楽技法》目次

 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20030309
 
 英雄の生涯

 「私はかつてメンゲルベルグ指揮の『英雄の生涯』(Heldenleben)
の下稽古を聞いたことがあります。オーケストラの人たちはあるアクセ
ントを指揮者の満足するようには示しませんでした。その時彼は劇的な
身ぶりで歩みよって『こんなふうにして主役がはいって来る!』と言い
ました。彼の芝居の才能はたいしたものであったので、団員は直ちに
コツをつかむことができたのでした。オーケストラのバイオリン奏者の
1人が私に言いました。『他の指揮者ならばあのような特殊な効果を得
ようと何度試みても成功しなかったでしょう』と。団員にもっと強く、
あるいはもっとやわらかに演奏するようにとか、または弓の使用量をも
っと多くとか少なくとか指示するのではなくて、心的な視野を与えるこ
とによってかれらの音楽的概念を生かしたのはメンゲルベルグが初めて
でありました。(略)
 「個性を獲得する公式はないと私は思います。もう一度メンゲルベル
グの下稽古の話になりますが、メンゲルベルグ博士は別のオーケストラ
にも全く同一の言葉と身ぶりをもって教授することができたかも知れま
せん。しかし、メンゲルベルグ自身あのような教え方をする瞬間まであ
のような考えは持っておらなかったでしょう。私はあえて言いますが、
『英雄の生涯』(Heldenleben)の下稽古はメンゲルベルグにとっても、
またオーケストラの団員にとっても新たな体験でした。ですからこのオ
ーケストラは真に偉大な師を持ったと言うべきであります。稽古はすべ
て創作的活動であって、きまりきった仕事ではないのであります。」
── アレキサンダー・ブロッホ《バイオリン教授における精神的態度》
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 どうしても書きとめておきたい(引用したい)エピソードのひとつ。
 演奏会やレコードを、受動的に視聴するだけでは得られない命題と、
弦楽器を奏でた者だけが知る魅惑の領域で、聞き手に誘われた語り手が、
過去の記憶について驚きをもって伝えるとき、多彩な人間関係と、絶妙
の時間設定に秘密があるように思われる。
 初演時の、作曲者リヒャルト・シュトラウス指揮、ヴァイオリン独奏
ヴィリー・ヘスなどの存在もオーバーラップしている。

→ 自伝的交響詩《英雄の生涯 18981227-18990303 フランクフルト》


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── マーテンス,F.H./高杉 忠一・訳《弦楽技法 19720310 全音楽譜出版社》P278
目次

 第1章 バイオリン ………………………………………………… 001
 第2章 伴奏 ………………………………………………………… 155
 第3章 ビオラ ……………………………………………………… 160 
 第4章 ビオラ・ダモール ………………………………………… 168
 第5章 チェロ ……………………………………………………… 173
 第6章 コントラバス ……………………………………………… 214
 第7章 ピアノ三重奏 ……………………………………………… 223
 第8章 弦楽四重奏 ■フロンザリー弦楽四重奏団 …………… 239
           ■ニューヨーク弦楽四重奏団 …………… 252
           ■ツェルナー弦楽四重奏団 ……………… 265
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Page(画像番号)

m000a カバー(写真)
m000b 表紙         
m000c とびら        i
m000d 序にかえて 鈴木 鎮一 ii-iii
m000e 原序/目次<第1章  iv-v
m000f   /目次>第5章  vi-vii 
m000g   /目次>第8章  viii-ix 
m001 アルベルト・バッハマン《近代バイオリン演奏におけるスタイルと理論の欠除》
m002
m004 アレキサンダー・ブロッホ《バイオリン教授における精神的態度》
m006
m008 ジョセフ・ボリソフ《バイオリン技巧の根底の簡潔さと近代音階形式》
m010
m012
m015 セシル・バーレー《生徒のための正しい教材の選択》
m016
m019 リヒャルト・ツェルボンキー《個人の体験に基づく教授原理》
m020
m023 デメトリゥス・C・ドゥニス《一連の運動の心象としてのバイオリン技巧》
m024
m027 ハロルド・アイゼンベルグ《現行奏法の混乱から秩序をもたらすための大バイオリン専門家間の相違の緩和について》
m028
m030
m033 フレデリック・フラドキン《バイオリン勉強における教授困難なスタカート及びその他の点に関する謬見》
m034
m036
m038 テルマ・ギブン《アウアー門下としての 2,3の体験》
m040
m043 オイゲン・グルエンバーグ《摩擦。バイオリン演奏における摩擦の制御の重要性》
m044
m047 ブロニスラウ・フーベルマン《耐久練習、名演奏への鍵》
m048
m050
m052
m054 パウル・コハンスキー《近代型バイオリンの音楽と技巧》
m056
m058
m060 フーゴー・コルチャック《弦楽における近代形式と技巧的表現のための実際的示唆》
m062
m064 ビクトル・キュズド《誤ったイントネーションの治療具としてのオルガン。逆ボーイング》
m067 エリス・レヴィ《大家的熟達、単にバイオリンの熟達に限らず》
m068
m070 ミラン・ラスク《セヴシックによる若干のバイオリン演奏に関する基本的原理》
m072
m074
m077 フランシス・マクミラン《バイオリン技巧と今日の達技》
m078
m080
m082
m084
m086 ジュアン・マーネン《バイオリン技巧の衰頽》
m089 エリカ・モリニ《私の見たままのバイオリン技巧、バイオリン協奏曲の歴史的連続演奏》
m090
m092
m094
m096 ミッシャ・ピアストロ《レオポルド・アウアーのもとでの勉強》
m098
m101 アンドレ・ポラア《バイオリン演奏における音》
m102
m104 ミロン・ポリアキン《指を発達せしめるための協奏曲の勉強》
m107 ヴァザ・プシホダ《ヤン・マリヤックの技巧上の発見がバイオリン学生に提供するもの》
m108
m110
m112
m114 ルス・レイ《ニュアンスの構成》
m116
m119 アンドレ・ド・リボピェール《バイオリンの演奏及び教授におけるイザエの理想》
m120
m123 バーナード・ジンスハイマー《バイオリン大家を指導して》
m124
m127 アルバート・ステッセル《バイオリン音楽研究における正しき見解と眠れる見解》
m128
m131 ジョゼフ・ストパク《バイオリン音楽における「声音的文節法」》
m133 ピエル・アドロフォ・ティレンデリ《バイオリン演奏におけるマッサールの伝統》
m134
m136
m138 アルトゥル・E・ウーエ《バイオリン教授に適用される精神分析》
m140 ラオウル・ヴィダス《パリ音楽院におけるベルテリールの教授法》
m142
m144
m146 ロデリック・ホワイト《バイオリン演奏における気質》
m149 フェリックス・ウィンテルニッツ《高等の生徒のためのバイオリン勉強法》
m150
m152
m155 ジョセフ・アドラー《バイオリン演奏におけるピアノ伴奏》
m156
m158
m160 ルイス・スヴェチェンスキー《ビオラの勉強》
m162
m164
m166
m168 パウル・シャーレイ《ビオラ・ダモール》
m170
m173 パブロ・カザルス《新しいチェロ技巧》
m174
m176
m178
m180
m182 ウィリアム・ベンディクト・エバン《チェロの運弓法及び出音の実際的心得》
m184
m187 ボリス・ハンブルグ《チェロの音域、音色及び作品》
m188
m190
m192
m194 ハンス・ヘス《チェロ演奏をりっぱにするもの》
m197 ハンス・キンドラー《チェロ技巧及び解釈》
m198
m200
m203 フェリックス・ザルモント《チェロ勉強の近代的原則》
m204
m207 ウィレム・ウィルク《チェロの演奏及び教授》
m208
m210
m212
m214 ルドウィヒ・E・マノリー 《コントラバスとそのポジション》
m217 アントン・トレロ《コントラバスの実際的及び芸術的研究》
m218
m220
m223 モーリス・カウフマン《ピアノ三重奏の理想》
m224
m226
m228
m230
m232
m234 カール・H・トレフゼン《ピアノ三重奏のプログラムの作製》
m236
m239 アドルフォ・ベッティ《バイオリン演奏の精神》フロンザリー弦楽四重奏団
m240
m243 アルフレッド・ポーション《個人奏者と弦楽四重奏》フロンザリー弦楽四重奏団
m245 ルイス・ベイリー《弦楽四重奏におけるビオラの役割》フロンザリー弦楽四重奏団
m246
m248 イワン・ダルシャンボー《弦楽四重奏におけるチェロの本質》フロンザリー弦楽四重奏団
m250
m252 オットカール・カデック《第1バイオリン》ニューヨーク弦楽四重奏団
m255 ヤロスラヴ・シスコフスキー《第2バイオリン》ニューヨーク弦楽四重奏団
m256
m259 ルドヴィック・シュワブ《ビオラ》ニューヨーク弦楽四重奏団
m260
m262 ベドリック・バスカ《チェロ》ニューヨーク弦楽四重奏団
m265 アントワネット・ツェルナー《第1バイオリン》ツェルナー弦楽四重奏団
m267 アマンダス・ツェルナー《第2バイオリン》ツェルナー弦楽四重奏団
m268
m270 ジョゼフ・ツェルナー(Sr.)《ビオラ》ツェルナー弦楽四重奏団
m273 ジョゼフ・ツェルナー(Jr.)《チェロ》ツェルナー弦楽四重奏団
m274
m276
m278 (奥付)
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