与太郎文庫
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1997年02月21日(金)  枯葉仙人 〜 老人よ、大志を抱くな! 〜

 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19970221
 
 さきごろ、久しぶりに窓を開けて驚いた。いつのまにか向い側に二軒
の新築住宅が建っている。ガリガリうるさい音がしていたのは、このた
めか。しからば数か月間、ドアから一歩も出なかったことになる。
 とはいうものの招かざる客に応対することもある。たとえば町内会長
である。「町会費の集金ですが、オクサンは」「戻ったら持って行かせ
ましょう」「はいどうも」いつか、いっぺん迅ねてみようと思う「あの
最近のお札はダレの肖像ですか」「へ? 福沢諭吉と誰やらと夏目漱石
ですけど」「誰やらて森鴎外ですか?」「そうです(?)」「なるほど
岩波文庫シリーズか」町内会長は帰り途にボヤく(まるで仙人やな)。
 思い出したぞ、森鴎外ではなく新渡戸稲造だったハズだ。
 
Let'19960528 for Mr.Yoshida,Hajime & Banba,Hisao(両君同文)
 
 ◇
 
 つねづね仙人を自称しはじめて数年、いつのまにかホンモノの仙人に
なりつつあります。先日も、歯医者に出かけて料金を払うと、受付嬢が
妙な手つきで受けとり、おもむろにいわく「マァ、めずらしい」なんの
ことやらわからない。彼女がレジから別の紙幣を取りだして、ようやく
気づきました。伊藤博文と夏目漱石、新旧の顔がならんでいたのです。
「なるほど、博文逝って漱石の時代か」お釣りをくれたからには、まだ
通用するらしい(実は、あと一枚残っています)。いやはや、こんどは
枯葉で払ってみようか、などと考えています。
 
Let'19961224 for Mr.Arai,Masao
 
 ◇
 
 歯科医院で、古い千円札が拒否された夢を、空想する。
「そうか、やはり通用しないのか」とおちこんだが、新約聖書の一節を
おもいだした。
 
「主よ、これはだれのものですか?」と弟子のひとりが、一枚の金貨を
さしだして尋ねると、キリストは答えるまえに問いかえす。
「それには、誰の顔が彫ってあるか?」
「カエサルでございます」アウグストゥスのことらしい。
「カエサルのものはカエサルに返すべし」
 
 そうだ、この千円札は夏目漱石に返すべきなのだ。
 夏目家を訪ねると、仏頂面の鏡子未亡人があらわれて、
「どうしろとおっしゃるの?」
「いや、お返ししてもよろしいが、できれば本物の金と換えていただけ
れば、結構ですな」
「とんでもない、いまはもう世界中どこでもそんなことできませんよ」
「なるほど、ニクソン・ショック以来その通りですな」
 
 ここで新約聖書の故事をもちだしても、漱石本人ならともかく、彼女
が興味をしめすはずがない。せっかく来たのだから、捨てゼリフでも吐
いて退散するか。
 
「先生のご幼名は“金之助”でしょ、だめですか?」
「なにおっしゃるの! そんなこと関係ないじゃありませんか」彼女の
目がどんどん吊りあがっていく(漱石もたいへんだったろうな)。
「いいです、それじゃやっぱりお返ししましょう。どうぞお受けとりく
ださい」
「そんなこといわれても、受けとる理由がございません」
「そうですか。では、さようなら。最後に一句、カエサルに誰か金貨を
返さざる」とつぶやきながら、帰りゆく・・・。
 
Diary'19970221 夏目札のつづき 〜 Joke Box Series 〜
 
 ◇
 


 伊藤 博文 首相1-5,7-10 18411016 山口 Harbin 19091026 68 天保12.0902/射殺
 夏目 漱石 小説     18670209 江戸 東京  19161209 49 慶応 3.0105
 野口 英世 細菌医学   18761109 福島 Ghana 19280521 51 黄熱感染死 53
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 19760701 壱千円 伊藤 博文  76×164mm(C券 青色)19860104
 19841101 壱千円 夏目 漱石  76×150mm(黒色)
 19901101 壱千円 夏目 漱石  76×150mm(青色)
 19931201 壱千円 夏目 漱石  76×150mm(褐色)
 2000.... 壱千円 夏目 漱石  76×150mm(?色)
 20041101 壱千円 野口 英世  76×155mm(  )

 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20041103
── 《札新 〜 紙幣人名録 〜
 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20020701
── 《カエサルに返さる 〜 三教の利 〜》
 
http://www.hatena.ne.jp/1134119718#a7
── 《お金はどこからやってくるのでしょうか?
 
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作成日: 2005/12/16


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