与太郎文庫
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1977年12月06日(火)  PRAD《印刷入門》 例会レポート(簡易印刷)

 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19771206
 
【昭和52年12月05日(月)第1回例会】
 
白髪 お忙がしいところ お集まりいただきまして たいへん光栄です
 私は 販売促進については まったくの素人ですけれども こうして
皆さんの専門的なお話を聞く機会にめぐまれ ごいっしょに勉強させて
いただくことになりました
── 阿波でございます かっこうよく申しますと フリーのデザイナ
ーでしていわば組織に属さない制作者として実は四ヶ月前から こ列席
の吉藤さんと毎週プライベートに勉強をつづけてまいりまして 他の皆
さんにも呼びかけて一緒に勉強しませんか というようなことから本日
の席が設けられた次第です 当初は私が司会をつとめまして できるか
ぎり広範囲の業種にたずさわる人たち そして ユーザー メディア 
エージェンシー クリエーターそれぞれ第一線で活躍する人たちの参加
を得て 有意義な懇談会に発展させたいと考えます 初対面の方も多い
ようですので ご着席の順に 自己紹介ねがいます
土井 スクリーン印刷をやっています 販売促進という点では 私の仕
事は裏方に属するんですけれども ともかく勉強てきるいいチャンスの
ようですので参加させていただきました 機会がありましたら私の仕事
についても皆さんに理解していただけるよう説明したいと考えています
樋口 釣六年前から 本屋を営んでおります くわしいことを聞かずに
参りましたので 今日のところは皆さんのお話を拝聴させていただきま

吉藤 呉服屋を営んでおります さきに阿波さんからお話のありました
とおり 毎週水曜日にいろいろなテーマで話しあっておりまして その
結果 販促というテーマにしぼって それぞれのお立場でご活躍の皆さ
んとお話できますと おたがいに参考になることが多いと考えまして本
日お誘いしたわけです 私の場合は毎回かならず出席いたしますので、
どうか宜しくおつきあいください
河部 津山市で美容院を経営しております 実は 昨日この会のお誘い
を受けてたいへん卿未をもちました なにぶん 遠方になりますので 
あるいはご迷惑をかけることもあるかもしれませんが できるだけ努力
いたしますので いいアイデアをいただきたいと存じます
佐藤 広告代理店に勤務しております 今回は 会の趣旨などくわしく
聞かせていただきたいと思います
── ありがとうございました この他数人の方にお誘い申しあげてお
りますがご多忙とみえて ご欠席のようです
 
……このあと前頁の発題《販促の拠点》が述べられ、さまざまの立場か
らの反論や質問誤解かあったことは否めません。単なる利益団体や圧力
団体でないことを発起人の側から強調され、次回に委ねることになりま
した。
 
【昭和52年12月I4日(水)第2回例会】
 
吉藤 メンバーの問題は当初 私や阿波さんの交友範囲で こういう人
ならば という勧誘しかできなかった 仕事の間を縫ってのことですか
ら 今後もこのままの方法で続けていきますと 若干不安が残りますね
 たとえば十人なり十二人のメンバーが固定してしまえば あとはそれ
ぞれの人たちを通じて増えたり減ったりしながらも 維持できるかもし
れない もうひとつの問題点といいますか 私みたいに 自由に 飛び
あるける人が比較的すくないんです とくにこの師走店を空けて こう
いう会に出席するなど考えられない という人も多いんです それと 
週一回はとても無理だとか 月一回くらいで来年になれば何とか出られ
るかもしれない という人たちですね 
── ロータリー・クラブの例をみても熱心な人とそうでない会員はあ
るにせよ各々忙しいトップが集まって永く続いているわけですから や
ってやれないことはない というのか私の原則論なんですけれどもね
吉藤 だから ある程度のノンバーが そろっていれば 二人や三人欠
席しても目だだないけれど 四五人の場合ですとごっそり抜けたという
結果になる(笑)
河部 当初のメンバーを固定するまでは過一回が無理なら月二回ではど
うか というような検討も必要かもしれませんね
── いくつかの悪条件のような要素は考えなかったわけではないんだ
けれどもひとつの実績として 私と吉藤さんは この四ヶ月 忙がしく
はない といいながら 過に一回の勉強を続けてきたのがこの懇談会の
母体になったわけでしてねしかし 全体的なテーマを定めたり 目標を
明らかにしていくためには やはり固定したメンバーの結束が必要です
ね 
河部 来週は これこれのテーマだから誰と誰はかならず資料をもって
出席してください という風な形が望ましいですね
── たとえば 月に一回くらいは特別ゲストのような人を聴いて 会
員以外の人にも呼びかける という運営方法も 可能だと思いますよ
河部 ロータリーやライオンズの例ではまず時間厳守ですね 極端な場
合は朝の七時に始めるとか 欠席や遅刻は罰金をとる 新車を買ったメ
ンバーがおりますと 排気量に応じて寄付金をとるとか いろんな理屈
をつけて 捲きあげる(笑)そのお金はプールしておいて もっぱら善
用されるわけで 徹底してしまえば 問題ないようです
 
 ■ ペナルティと規約
 
河部 ただし 一挙にそのレベルを要求できるかと申しますと やはり
その前にしなきゃならんことも われわれの会で考えなければならんと
思いますね 罰金にしても どんどん払って何とも差支えない人たちだ
から 永続きするわけて 罰金払うかわりに子供に手みやげ買って帰ろ
うか(笑)なんていうことを考えるようでは無理でしょうね
── 紳士協定といいますか これらはどうも欧米のスタイルですね 
日曜日にかならず教会へ行って 収入の何パーセントを献金するとか 
日曜日に働いてはいかん などという社会的慣習のもとでさらに厳しい
規律を守るのが紳士の条件なんでしょう
河部 私どもの美容業界でも 北海道の例ですけれど 札幌会場で朝6
時の集合なんていうのがあります 旭川あたりからメンバーが来る も
し雪でも降ったらどうするのか といいますと そういう心配があれば
前日に来てホテルに泊ればよい(笑)そのグループは例会のたびに売上
の状況や 蛸足のアイテアなんかをどんどん持ちよって意見交換もする
し ヨーロッパ研修旅行なども カメラマンを同行させまして 帰って
くると映画にしてテレビで流すわけです
── 一糸乱れないというか まるきり無駄のないグループですね そ
こまで徹底してやるからこそ 効果が生じる
河部 私の属している会では つい先日宝塚で例会がありまして 私の
つもりはどうせ近いんだし 高速道路に乗っかって宝塚のインターチェ
ンジに出れば 何とかなるだろうと タカをくくっておったんです と
ころがタクシーがぜんぜん来ないんです(笑)最初から狂ってしまいま
してね 路線バスを待ってみたんですけど これも来ない 結局 いち
ばん近い私が いちばん遅刻して到着しまして他のメンバーはと申しま
すと 新幹線の発着から道路の混みぐあいまで 綿密に計算して乗られ
た 今日のツケはぜんぶキミだ(笑)
── 組織のトッフ1まもとより 部下や対人関係を考えるとき 時刻
厳守ということが重要ですね その上で なおかつ時間を余らせていっ
て自分の時間を確保するというのが理想でしょうね
河部 ロス・タイムと申しましてね 
一人のために何人で何時間のロスタイムが生じた というわけですね
吉藤 この会でも 一分につき百円というふうに決めてもいいんじゃな
いですか
── ロスタイムについては しばしば聞きますね 一人の人が六分お
くれて 十人を待たせたから つごう一時間の損だという論理ですね 
これは私いささか疑問の点もあると思うんてすがね
河部 原則だけは通してもいいんじゃないですか 電話一本で欠席とい
うのは ちょっと軽すぎるから やはりペナルティを課したほうがスム
ースだと思います
── ペナルティについて 私はひとつ考えていることがあるんです 
たとえばある会社で 社員が遅刻するとしますね当然 上司が文句をい
う 叱るわけですその上てペナルティを課すかどうが が問題なんです
 この場合のペナルティは昇給賞与で合理的にあらかじめ契約にもとづ
いたものとしての話ですけど 私の考えでは ペナルティがきちんとし
たものなら叱るという行為は 無意味なのではないか ないしは 叱っ
た場合には ペナルティを免除するとか 実状をみると どうも半分づ
つ というケースが多いみたいで どちらも徹底していない 
吉藤 その点で典型的なのは日本の警察ですね 叱って 点数とりあげ
て さらに罰金をとる アメリカじゃ 点数か もしくは罰金ですね
── 叱らないんですか 毎度ありがとうという(笑)
吉藤 点数をとりあげる のが叱ることでしょうね ところで この会
の規約のようなものを みなさん いつごろ作るべきだと考えておられ
るでしょうか
── まったく規約のない会というのも考えられますね もうひとつは
メンバーのうちの誰かが つまり一人が 草案のようなものを作って 
それを修正・承認する形でまとめあげる方法ですね 私の考えを申しま
すと 後者の場合 どうしても最初の草案をこしらえた人の雰囲気が支
配的になるのではないか あるいは一般性をもちながら なおかつこの
会の独自の性格を織りこんだもの ということになると 相当にむずか
しいんじゃないか ですから ある程度までメンバーが固定して その
上で 先の紳士協定のような原則がいくつか必要になってくるペナルテ
ィにしても 最初は ともかく時間だけ守りましょう という風な期間
を経て ゆるやかに育てていくのが理想的でしょうね
土井 最終的な構想といいますか この会の方向のようなテーマを も
っと時間をかけて たとえば半年くらい阿波さんなりが話をつづけられ
て その間にいろいろあ業種の人たちに呼びかけて 一度でもいいから
聴きにきてもらう その席でフリートーキングの時間もある というの
が 当面 必要じゃないですか
吉藤 正式の入会ということじゃなくてとにかく一度 参加していただ
くわけですね 気にいった人には 会員になっていただく
── 大きなテーマとしては販売促進があるわけですから それに至る
きまざまのコースが考えられます ケース・スタディもその例ですね 
問題は そうしたケースにどれほどのかかわりが得られるか という点
でしょう 今日の話はまるで関係ないじゃないか ということも 当然
あり得るわけで しかし そのことこそ 平素失っている問題意識なの
かも知れませんね
 
 【昭和52年12月21日(水)第3回例会】
 
── 今回の収穫は 販促の実際面でのケースが くわしく述べられた
ことだと思います 録音テープを要約してみると新聞・放送などの媒体
の機能にはじまりその前後に 通信社や広告代理店が存在することが解
明されています これらの媒体を活用する上で パブリシティという分
野があり 単なる企業広告でなく 公共的な情報提供であれば 広告以
上の効果が生じます その異母姉に当る概念がボランティアであり も
ともとは地域内の発想であることが認められました 限られた地域内で
のコミュニティとしてミニコミが再評価されるわけで 技術的な向上と
ともに まだまだ開発さるべき魅力を秘めています たとえばお年玉つ
き年賀はがきの番号を 顧客の会員番号と一致させるユニークなアイデ
ア(河部氏)をはじめ 童話乍家とイラストレーターの合作による少部
数の紙芝居(土井氏)などは注目すべきものと思います さらに アル
バイト高校生の活用によるいくつかのメリット(賃金・機密・人間関係)
が のちのち有力な顧客層に成長する例も興味しぶかく議論されました 
 
 【昭和52年12月28日(水)第3回例会】
 
── さきほど 皆さんカ喋られるまで約30分にわたって 河部さんに
美容業界の流通ならびに経営の実状を 伺っておりました その要約を
 私なりに復称してみますと まず 美容業界においては技術部門と販
売部門のふたつがあるわけで 販売部門とは要するに化粧品のことです
ね そのメーカーでビッグ・ファイブをあげれば たとえば資生堂……
河部 いえ 美容業界では資生堂はずっと下位になります
── すると 化粧品業界と美容業界はまるで別の市場なんですね そ
こで河部さんのお店では 美容業界のトップメーカーであるところのロ
レアルに力を入れられた結果 営業所の倉庫を上まわる在庫をもってお
られる こうなると 先の技術部門と販売部門のウェイトが 他のお店
に比べて あきらかに販売部門の伸長いちじるしく 将来予想される価
格面での競合についても 充分な対応力を備えたわけで マスセールに
不可欠な販路の拡張と実績は すでに確保されたようです 私たち素人
が美容室について抱いていたイメージは 主として技術部門に限られて
いましたが 現実はこうした段階に来ているわけですね ただし こう
なるに至ったのも 私よくは存じませんけれど 美容院のお客さんは 
平均して一時間ばかり座っているわけですから いわゆるセールス・ト
ーキングの時間に恵まれた商売でもある と思われますね
吉藤 これは正にそのとおりでしてね 先だって私も 河部さんのお店
を見せてもらって感心したことなんですよ たとえば数千枚のカルテが
ありまして 河部さんが たえず目を通されて いつ何時でも目的に応
じて選別できるらしいんです だからダイレクトメールにしても 
必要な内容を 必要とする顧客に対してだけ届けられるわけで まこと
に効率的だと思いますよ
── 密度のたかい顧客管理力晋求される時代になったんですね たと
えば野球ファンの例ですとセ・パ両リーグの選手登録数は約600名にす
ぎない(笑)
 
 ■ 顧客管理の実際
 
河部 私どもの商売では お害さまの顔を覚えることが最初の仕事でし
てね 若い子をはじめて店に出しますと とりあえず十人くらい お客
さまの顔と名前を書かせてみるんです この覚えかたが なかなか苦労
でしてね なにしろ頭髪はシャンプーして泡だらけ 白いクロスをかけ
ますので顔かたちを覚えるというのは不可能なんです(笑)ひとつの方
法は履物の種類や色で覚えることですね そして早くお名前をカルテか
ら発見するのかフロントの任務ですね
吉藤 名前で 呼びかナることが重要なことでしょうね
── 客商売にかぎらず 記憶そのものを管理するというのが アメリ
カ方式といえるかもしれませんね《セールスマンの死》なんて戯曲もあ
りましたけれど 担当者が死んだり 配置転換になっても困らないよう
なファイリング・システムが完成しているわけです 新米の担当者がハ
イウェイをぶっとばして スーパーマーケットの仕入部長に会いに行き
ます“昨日は奥さんのお級生日でしたね 息子のジョン君はお元気です
か”というような話題を初対面でやってのけるんです
吉藤 FBIなんかも すごい資料室があるらしいですね
── FBIの資料室については 小噺がいくつかありますね この方
はたぶん犯罪関係者が中心でしょうけれど 日本の場合は 資料とかカ
ードの形式でなくもっぱら生き字引きが主役ですね 古い旅館なんかで 
何年ぶりかで訪れた客に支配人や女中さんだけでなく 掃除の爺さんま
でが顔を憶えていて“久しぶりでございます この前に来られた冬より
も今年はしのぎやすうございます”などという 最近はどうか知りませ
んけど
吉藤 ヨーロッパ・スタイルは また別のやり方になるんでしょう
── ヨーロッパでは 伝説みたいなのが多くて たとえば ライカで
したか ベンツでしたか 砂漠のまんなかで故障したので 無線連絡し
たらへリコプターで運んできたとか(芙)
吉藤 ロールスロイスの話じゃなかったですか
── 各社それぞれに伝説があるのかもしれません アメリカ式がカー
ドによる知識情報サービスであるとすれば ヨーロッパ式は 技術もし
くは物的保証なんですね たとえば ダンヒルのパイプは吸口の部分を
 最初から二つ作ってあって製造番号が刻んである 吸口が折れたり損
傷した場合には 早速おなじものが届けられるわけです 最初からスペ
アとしてお客に売るんじゃなくて 料金だけは先にとっておく 顧客管
理の前に品質管理の傾向が強いんですね
吉藤 きもの屋の例で 私が感心したのは顧客カードに反物の切れはし
を貼ってるお店があるんですよ これなんか欧米のいいところをミック
スしてまして(笑)先方の 好みやコレクションが 一目でわかります
からね
── きものの場合は カケツギなんてことはやらないんですか
吉藤 あんまりないですね 染め直しなどは きものだけの技術でしょ
うけど
── 切れはしを用いる例は 洋服屋さんでボタンのついたのを昔から
くれますね あれなど先のヨーロッパ的発想からしますと お客に渡す
べきではなくて お店やメーカーで保管したほうが いいみたいですね
吉藤 婦人服などでは 来店の回数が多いから利用価値は高いでしょう
 色彩の組みあわせなんかも お店で相談できるようになれば便利です

── 美容院では この応用はできませんか たとえば毛髪の見本をカ
ードに貼るとか(芙)
河部 顕微鏡など使って 徹底的にやるお店も出てくるでしょうね い
まの私の店では 簡単な器具を使って診断したりしています 毛髪の規
傷などを早く原因を発見して適切な処置をする上でもいろいろ応用でき
ると思います
 
…… このあと美容院と歯科医院の共通点などが論じられ、後半はオフ
セット印刷に関する質疑応答がありました。第3回例会でもスクリーン
印刷への関心が高まっていますので、まもなく《印刷シリーズ》として、
例会のテーマになることでしょう。
 
 ◆
 
(2005/09/08)


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