与太郎文庫
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1969年02月28日(金)  音楽のよろこび 〜 バーンスタインの三段論法 〜

 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19690228
 


 Bernstein, Leonard    19180825 America    19901014 72 /作曲・ピアノ・指揮
♀Montealegre, Felicia Cohn 19220206 Chile America 19780616 56 /女優・ピアノ/Leonardの妻
♀Yashida-Krafft, Barbara  1927‥‥ Duitch 鎌倉  20031127 76 /日本文学/吉田 秀和の妻
 吉田 秀和    音楽批評 19130923 東京            /
/1957二十世紀音楽研究所(柴田 南雄&入野 義朗)設立〜《主題と変奏/モーツァルト》

 
── オムニバス形式の台本の構成について貴重な意見を出してくれた
ロバート・ソデック,メアリー・アハーンと,編集上のすぐれた協力者
であり,この本の名付親であるヘンリー・サイモンおよび私の助手
ジャック・ゴットリープに心から感謝する.
── レナード・バーンスタイン
/吉田 秀和・訳《音楽のよろこび 19660228-19690228 音楽之友社》
 

 
 目次
 
 序論 適切な方法 ……………………………………………………  3
 
 架空の会話
  ロッキー山脈での自由討議 ……………………………………… 13
   第1景 なぜベートーヴェンなのか? 
   第2景 意味とは,どういう意味? 
 
  あの偉大なアメリカの交響楽にいったい何が起こったのか? 31
  なぜ2階に駆けあがってガーシュインぶしを書かないのか? 46
 
 間奏曲 カリフォルニア州アパー・ダビング …………………… 59
 
 オムニバス形式による7篤のテレビ用台本
 
  ベートーヴェンの《第5交響曲》 ……………………………… 67
  ジャズの世界 ……………………………………………………… 89
  指揮法 ……………………………………………………………… 118
  アメリカのミュージカル ………………………………………… 149
  現代音楽入門 ……………………………………………………… 180
  ヨハン.ゼパスチャン.バッハの音楽 ………………………… 223
  何がオペラを大きく(グランドに)しているか? …………… 263
 
 訳者あとがき ………………………………………………………… 303
 

 
── 序論 適切な方法
 
 ものごころついて以来ずうっと,ぼくは大勢の友達や同僚,先生や学
生それからごく普通の市民たちといっしょに,音楽について話しあって
きた.しかしこの数年間は,公衆を相手にして,音楽について語るよう
になった.つまり,ぼくもまたあの善意の人々──組み立てられた音に
たいする人間の反応というすぼらしい現象を解明するよう運命づけられ
た人々──の長い系列に加わったわけである.だがこれは造化の戯れを
説明しようとするような仕事だ.最後には,人間は組み立てられた害,
少なくともある種の組み立てられた音を聞くのが好きなのだという,愛
すべき事実を素朴に受けいれるしかないのだから.しかも,音を聞く喜
びには,動物的な興奮からはじまって精神的な高揚にいたる,あらゆる
種類の反応の形式がある.そして世間では,もっとも精神的な反応を呼
びおこすように音を組み立てることができる人々を天才と呼ぶ.こうい
う自明の理は,否定することも説明することも不可能だ.しかし,なん
とかして解明しようと努力することは少なくとも可能だろう.そう,洞
穴の壁に頭をぶつけながら,時折ひらめくビンの先はどの光明をめざし
て闇の中を掘り進んでいった人類の伝統にしたがって.そうしていけな
い理由はないはずだ.
 《エロイカ交響曲》については,使われた音符の数より多くの言葉が
費やされた.その言葉と音符との比率は,もし誰かが計算したら,まっ
たく途方もないものになるにちがいない.しかし,それにもかかわらず
《エロイカ》をみごとに説明してくれた人がいただろうか? ひとつの
音がもうひとつの音につづき,あるいはもうひとつの音と同時にあって,
しかもそれらがあるべき位置に的確におかれていると感じられるような
不可思議を,たんなる散文で説明できるものだろうか? もちろん,誰
にもできはしない.ぼくたちが,合理主義者だといかに公言したって,
この神秘的な領域との境界で立ち止まらざるを得ない.いや,神秘的と
いうよりこれは魔術的といってもいいくらいなのだ.どんな芸術愛好者
だって,切り札がさらされているのに,不可知論者をきめこむわけには
ゆくまい.音楽を愛するということは,信じることなのだ.どんな弁証
法をつかっても,このことを認めざるを得ないだろう.
 歴史上,もっとも理性的な精神の持ち主といわれた人々でさえ,音楽
について語るときには,つねに若干の神秘的な曖昧さを許容して,音楽
が数学と魔術の,美的で完璧な結合であることを認めたものだ.プラト
ンやソクラテスは音楽の習得が青年の精神にとって最上の訓育のひとつ
であると考え.教育上の必須条件であると主弓した.これは音楽が科学
的であると同時に<精神的>であるという理由に基づく.ところが,音
楽以外のすべてに関しては科学的であった,プラトンさえも,音楽につ
いて語るときには.ハーモニー,愛,リズム,それから,たぷん美しい
調べを奏でることができたにちがいない神々のことになると,曖昧な概
括しかできない.しかし彼は,兵士を鼓舞して戦場へ赴かせるには,笛
の音にまさるものはないことを知っていた──今日ではこれを知らない
者はいないけれど.またある種のギリシア旋法は,恋愛や戦争,あるい
は葡萄酒祭り.競技者に栄冠を授けるのに最適だった.それはちょうど,
数学的にもっとも複椎な音階やリズムやラーガの持主であるインド人が,
ある旋法(モード)が,朝の時間,あるいは日没,シバ神の祭礼,行進,
あるいは風の強い日にふさわしいと知っていたのと同じだ.しかし,こ
の事実を説明することはどんな数学にもできなかったし.今でも依然と
してできない.
 ぼくたちも,現在,いぜんとしてこの魔法の壁にぶつかっている.物
理学,音響学,数学,形式論理学の法則を使い,あるいは,経験論のよ
うな哲学的な方法や,目的論的方法をもちいて科学的に解明しようと努
力はしているけれども,一体,それが何の役に立つだろうか? <魔法>
についての疑問はやはり未解決のままだ.たとえば,ベートーヴェンの
あるカルテットに出てくる主題の<形>を,正反合の形式的原理に従っ
ているというふうに説明することができる.つまり,はじめに短い<正>
があり,つぎに質問という形の苦<反>がつづき,最後に<正>と<反>
の矛盾から生まれるひとつの発展<合>がみられるというわけである.
ドイツ人はこの形式を〈stollen〉といい,他の国では<三段論法>と
呼んでいる.言葉,言葉,言葉.なぜ,この主題が美しいのか? これ
は難問だ.同じような形の主題を百,発見することもできるだろう.あ
るいは,同じ原理の変様に基づいた主題だって.しかし美しい主題は,
その中でひとつかふたつしかないのだ.
 ぼくがハーヴァード大学にいた頃,バーコフ(Birkhoff)教授が,美
学的測量法という本を出版した,実際に数学的な方法を展開したもので,
それによりていかなる芸術の対象も一定の美学的価値の連続体にもとづ
いて,その美的評価を行ない得るはずであった.これは尊い努力であっ
た.しかし,何も彼もがいいつくされ実践されたけれども,結局は袋小
路にぶつかっただけだった.人間の五感はある限度までなら対象を測定
できる(目は�召�Yの2倍の長さだということを決定できるし,耳は,
あるトロンボーンがもう一方より2倍の音量を出していることを推定で
きる).だが,それらの感覚自体の美学的反応を測量することができる
ものだろうか? 豚肉の匂いと豆の匂いはどのくらい違うか? どうい
う種類の豆か? どんなふうに料理されているか? 生のままか? 煮
たとしたら,どの位の温度で? もし《エロイカ》が3.2点を得られ
るとしたら《トリスタン》なら何点になるか? あるいはたった1頁し
かないバッハの《プレリュード》だったら? 
 ぼくたちはただせんさくするだけだ.魔的な現象を,事実や力関係,
量,エネルギーによって説明しようとする試みの場合なら,科学の方法
を踏襲するしかない.だが,これらの現象への人間の反応を説明するこ
とは,とうてい不可能である.科学は,雷雨を説明できるけれども,人
々がそれにたいし感じる恐怖感を説明することができるだろうか? も
しできたとしても,人間が雷雨こ際して感じる栄光の感覚は,心理学用
語で説明できるだろうか? 
 
 ※ この序論のより短い形式のエセイは,アトランティック・マンス
リーの1957年12月号に《音楽について》という題のもとに発表された.
── (P3-5)
 
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── バーンスティンの《運命》解説レコードなどあれこれ聴かせてい
ただくうち、対岸の四国も暮れて、手みやげに持参した千枚漬、その夜
氏夫妻の食卓を飾るやいなや、── 編集帖(小石忠男氏宅訪問)
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19700307
 
── すぐれた作曲と指揮の才能を怪し気な 理論でそこなっている彼。
……うんざりさせる彼。米誌《タイム》によれば、その彼こそは、かの
伊達男レナード・バーンスティンだそうである。── 弓弦十話(1)
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19710401
 
── バイロンによれば、世にうんざりする種族と、させられる種族と
があるそうな。── 弓弦十話 (その1)
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19710401
 
── 「学者には�狷匹燹淵蝓璽鼻豊甞惻圓鉢狃颪�(ライト)�甞惻圓�
二種類がある。私は�爛薀ぅ函�Wright, George Ernest)�瓩澄�
── 浅見 定雄《にせユダヤ人と日本人 19861220-19940325 朝日文庫》P271
 

 Wright, George Ernest   19090905 America 19740829 64 /
 Caldwell, Erskine Preston 19031217 America 19870411 83 /

 
 「人間には読む人と書く人の二種類がある。私は書く方だ(出典不詳)」
── 世間には読む人と書く人がいて、コールドウェルは書く方を選んだ。
http://q.hatena.ne.jp/1126175035
 
── コールドウエル「本を読む人と書く人がいる。私は書くほうだ」
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa1422174.html (20050602 19:20 No.1)
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa4710194.html (20090212 05:19 No.1)
 
 下記の月報が挟まれていたので、別項に再掲(OCR)する。
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19690820
 新潮世界文学12 月報19
 
(20090110-0506)
 


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