マキュキュのからくり日記
マキュキュ
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■ (日記) 六年間大変ありがとうございました。


先週の土曜日で実質「マキュキュのからくり箱」を閉める決意をしました。
どうか突然の店仕舞いに関しては、お怒りや落胆や驚愕もおありでしょうが、精一杯ギリギリのギリギリまで頑張ったんだな・・・とお察しくださりたく、お許しを願いたいと思います。

昨日で電気が止まる事を解っていながらも、なす術もなく、又、いつものように助けてくれると言い出してくれた親友の言葉へも甘えきる事ができなかったのは、ささやかな私のプライドと贖罪の念からでした。

今回又助けてもらっても今後持ち直せるかどうかもわからない私などに、もうこれ以上無駄なお金を使って欲しくは無かったと共に、私がそれほどの価値のある人間だとは思えない事が自分自身で数多くあり、もうそろそろ人に甘えず、自分の決着は自分で付けなければ・・・と思ったのが本当の理由です。

そもそもあのような景気の低迷期に差し掛かった時期に、五十歳近くにもなって、十年近いブランクが有るにもかかわらず店を持とうなどと言う事自体が、無謀と言えば無謀だったのかも知れません。
ただ、体が弱い私はそれしか生きる術を考えられなかった事も事実でした。
癌は克服したものの、結構重い癌だったらしく、私は直ぐにでも転移して死ぬと思っていたので保険金やらを「最後くらいは自分にご褒美を・・・」と全て使い切ってしまい、しかし癌は成りを潜めたまま一向に現れず、再発もせず、文無しになり路頭に迷いながらも主人は再就職をし、一方パートを転々としていた私は、自分の愚かさに死にたくなり、遺言状を書きたい一心で最後の貯金をはたいてパソコンセットを買いました。

おぼつかない手つきで文字を打ち始めていく内に、いろんな事を書いてみたくなり、どんどん書くことが楽しくなり、駄文日記をweb上で公開しはじめたら徐々に読書も増え、その読者達が「本を作ってみてはどうか? 出版費を皆で寄付するから」と提案してくれたとき、自費出版に掛かるお金の膨大さを知っていた私は、「本が売れなければ数百万と言うお金は水の泡になる。もしも私に生きる道を提供してくれるというなら、小さくてもいいからもう一度店を持ちたい」とお願いしました。

当時松本には不況でやり手の無い店がゴロゴロしていて、五十万ものお金が有ればやれる店は結構あったのです。
その願いを受け入れてくれた日記の読者や、地元の友人、以前経営していたエポックと言う店の常連などがカンパをしてくれ「マキュキュのからくり箱」が出来上がったのです。
資金提供者に日記の読者が多かったのでエポック�靴任呂覆�、「マキュキュのからくり箱」という日記に使っていたヘンテコリンな名前にしました。
無一文の私に読者や友人たちが「今までの購読料だから」という事で大切なお金を提供してくれ出来上がった大切な大切な私の城でした。
しかし、僅かな貯金も無く(つり銭の事すら忘れていてつり銭の2万も借りて開店に漕ぎ付けたほどです)始めた店は、経営直後からかなり厳しいものが有りました。

それでもかなりの浮き沈みはあったものの、何とか新たな常連も付き始め最初のうちは良かったのです。
しかし数年前、私の怪我、夫の自損事故と手術、夫の母の死、車検、様々なお金が掛かる問題が立て続けに起った辺りから、どんどん雲行きが怪しくなり、仕舞いには今週は出来ても来週はもう無理かもしれない・・・と思うことが多くなりました。
輪をかけて景気の低迷は絶望的な加速度で松本の夜を閑散とさせてゆきました。
「又来るからね〜」という客の言葉に「又も今度も無いかもしれない・・・・・・」と胸の中で呟いていました。久しぶりの人が来るたび、いつも今日がこの店で会う最後かもしれない・・・という思いでした。

ビールが仕入れられない、家賃が払えない、そんな事はしょっちゅうで、親友や常連が仕入れ金や家賃などの協力をしてくれ、「私たちのシェルターをたたまないで」と泣けるような言葉も沢山頂き、何とか地べたに這いずるような気持ちで今までやってきたのですが、もうここ2年ほどはシェルターどころではなく、お客の方が私の愚痴をうんざりしながら聞くと言った酷い様になっていました。
もちろん、お客さんの中には本当にあの店を愛し、こんな私を丸ごと受け入れてくれるような人たちも結構いました。
でも最近の私は多分心療内科に行けば鬱病と診断されるだろうと思うほど、生きる事に意欲をなくしていました。

私は正直者なので、歯の浮いたようなお世辞やお客を持ち上げる事はできないのですが、常にお客さんには地位や収入や年齢に関係なく、本音でフレンドリーに関わってきたつもりではいます。
でも、私は長い事水商売をやってきたので人の心の奥底なども有る程度は読めるので、全てのお客様に心を許していたわけではないですし、虚しい思いをする事も多々有りました。
特に死ぬほど苦しくなってからは皮肉な事に、人様の心がとても冷静によく読めるようになりました。

口先だけの人、偉ぶった人、客同士のくだらない確執、陳腐で着古したような意見や説教ばかりを唱えるような人、決して心のこもらぬ奇麗事ばかりを言う人・・・・・・などなど・・・・・・。そういう人達を内心では受け付けなくなりました。
しかし水商売なのですから様々なお客さんが居て当然な訳で、本来それを一纏めに考えて分け隔てなく接するのが賢いやり方なのでしょうが、私は人間が出来ていませんので好き嫌いがモロに顔に出てしまったり、あまりにデリカシーの無い人や、人の気持ちを読もうとしない人間はとても苦手で、貧乏なくせにお客を追い払ったり出入り禁止にした人も居ました。

私なりに美味しいものを提供しようと努力したり、いい歌を聴かせようと頑張ったり、人様が居心地の良い様に気楽ながら親身に接したりと、できる範囲で私なりに努力はしてきたつもりですが、どれも中途半端でなかなか利益には繋がらず、益々経営は厳しくなり自分を責めるようになりました。
「マキュキュのことが皆大好きなのだから・・・・・・」そう言われるたびそれは嘘だ・・・・・・。と、思うようになったのです。

好きな人も居るかもしれないけど、確実に嫌いな人が増えている・・・・・・。
そんな気持ちや焦燥感や自己嫌悪が最たるものになってきたのはここ最近でした。
もっと惨めになるのは嫌だ。少しでもからくり箱が惜しまれている中(うち)にたたみたい。
前回店を辞めるかどうか悩んだときに「辞める二ヶ月前には言ってくれないと家賃は掛かるからね」と再三言われたのですが、もう私の手元には電気代はおろか、1万円強のお金しか残っていません。
しかも今月来月と二台続きで車検もあるのに、全財産1万強では話にもなりません。

昨日は電気が止まらないうちにと思い、せめて今までお世話になった店が人手に渡るとき、余りに汚れていては申し訳ないと思い、掃除を一人でしに行きました。
夫が「会社を休んで俺も手伝う」と言ってくれたのですが「いいの、一人にして」と言い、昼過ぎから夜まで掛かって色々な想い出を思い返しながら、出来る範囲で片付けました。
片付けをしている最中に電力会社から「電気代今日払いに来なかったけど、どうしましたか?」と言う電話が入り、嗚咽しながら「もう無理です・・・。先週末で何とかなると思ったのですが、思ったよりも暇で作れませんでした・・・。今、このまま店を明け渡す覚悟で店の掃除をしに来ているので、せめて明日まで電気を止めないでください・・・」と懇願しました。
今日は明るいうちに掃除の続きをしに行こうと思います。

店を辞めてどうするの?と言われましたが、正直解りません。
1万では夜逃げも出来ないので、市役所に相談に行き、前回聞いてきた色々な方法を検討し、とりあえずは家賃の安いところに移り住み、私もパートを探そうと思います。
店の違約金の2か月分は徐々に月賦で返済していこうと思います。

一昨日の日曜日「今夜は最後の晩餐になるかもね」と、冗談めかして主人と話していたのですが、私には魔の二月が来る事は去年辺りから不安で仕方がなかったので、昨日掃除をしながらフト、「どこかから飛び降りちゃおうかなぁ・・・」と何度も思いました。
でも、やはり私は生きていたいし、何か人の心を掴むものを書くまではどうしても自ら死んではならないような気がするのです。
高利貸しから借金をしている訳ではないし、クレジット会社の借金があるわけでもないし、大丈夫!! 命までは取られない!!
そう思いました。

生活を縮め、二匹のネコを受け入れてくれるボロ屋でかまわないから、何とか市の援助を受けてでもそこに移り住み、ひっそりと物を書きながら主人と暮らして行こうと思っています。

店の開店時にカンパをしてくださった方々、6年間応援し続けてくださった方々には大変申し訳ないと思っています。
店を守りきれずにごめんなさい。
でも、この六年間は私にとても貴重な様々な想いや経験を沢山くれました。
これからも物は書いていきたいのでミクシィも、昨日まではどうしようか迷いましたが止めないで続けようと思います。
3〜4日は主人との時をゆったり過ごしたいので、日記も途絶えると思いますが、多分私のことなので直ぐに書き始めることでしょう。

なお、ボトルを取っていただいた人はご一報くださればお返しします。
本当に六年間「マキュキュのからくり箱」を愛してくださってありがとうございました。

もうひとつ、暖かくなったら来てくれると言っていたケンさん、あきらちゃんさん、そしてその他の人たちも、待ちきれずに大変申し訳なかったです。


でも、今の私は案外元気です。
どうかご安心ください。



2011年02月08日(火)

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