マキュキュのからくり日記
マキュキュ


 (日記)哀れ(M)


昨夜・・・、と言っても深夜、家に着くと同時に、我が友人(M)から消え入りそうな声で電話が入った。
「マキュ・・・、遅くに御免。近々一緒に飲む時間は取れないか?」と言う。
『う〜〜〜〜ん・・・・・・。難しいナァ・・・。仕事が夜中までだし、土日位はせめて、旦那の側にいてやりたいしね・・・・・・』
「おっ! 珍しく殊勝な事言うじゃんか。以前のオマエさんなら、飲むとならばホイホイ尻尾振ってすっ飛んで来たのに・・・・・・。サテは改心したか?」
『そう言うわけでも無いけどさ・・・、何か有ったの? 声に元気ないけど・・・』
「おう・・・。(S子)と別れた・・・・・・」


やっぱり・・・・・・。
私は即座にそう思った。

「マキュに会わせたい人が居るんだよ。俺の最後の女。(笑)今からちょっと出て来いや。今度は凄い美人だぜ♪」
(M)から意気揚揚とした電話が入ったのは丁度今から1年と少し前。
(M)は昔からの飲み仲間で、もうかれこれ16年の付き合いだ。年は40チョイかな? 仕事バリバリの独身貴族である。
ただ、見掛けは小太りで、体裁が良いとは決して言えない。
それに、バカが付くほどのお人好しなのだが、どうも惚れっぽくていけない。
女に入れ込むと、人の忠告がまるで耳に入らない所もある。
私は(M)に彼女が出来る度に呼び出され、その都度(M)の【のろけ酒】に付き合わされて来た。


ヤレヤレ・・・・・・。
私は仕方なく(M)が待つショットバーに出掛けると、(M)はカウンターで女と寄り添いながらにマティーニを舐めていた。
「いらっしゃいませ」と言う店員の声も耳に入らぬ様子で、二人は寄り添っている。
【アァ・・・、来なきゃ良かった・・・・・・。】
暫く二人の後ろに立ち、私は所在無げに身を持て余していた。

「ウォホン!!」
私はどうしてよいのか解らず、軽く咳払いをすると、二人は弾かれたように身体を離した。

「あぁ・・・、マキュ、割と早かったナァ・・・。急に呼び出して御免。・・・・・・アッチへ移るか」
(M)はBOX席を顎で指すとバーテンに移る意向を示し、席を移動した。
席に着き、私の飲み物の注文を終えると、(M)は改まった顔で私にその女性を紹介した。
「こちら(S子)ちゃん。そして、この人は僕のお目付け役のマキュキュ」

【何だ・・・その紹介の仕方は・・・。オマエさんに目なんか付けとらんわ・・・・・・(苦笑)】

「始めましてマキュキュさん。お噂は(M)からかねがね聞いてます」
(S子)は握手を求め、私は笑顔でそれに答えた。
私はそれとなく、しかし、ジックリ彼女を観察した。

なるほど、(M)の恋人にしては、スタイルも良く、着こなしのセンスも抜群で、物凄い美人である。
しかし、(M)と出会ってまだ数日の筈なのに、いきなり初めて会う私の前で(M)を呼び捨てにしている彼女の無神経さが、どうも気になった。
それに、胸の広く開き過ぎたドレスから覗いたブラの肩紐がヨジれているのである。
同時に(S子とMとで、SMか・・・・・・)等と言う、訳の解らないゴロが私の頭の中を駆け巡り(爆)この恋は長くは持ちそうもないな・・・。と、私は直感したのである。

二人は年甲斐もなく、テーブルに隠すように手を繋ぎ、20歳ソコソコならまだ可愛い物を、四十男と三十女である。
私は半ば呆れ返ってしまった。

【ま・・・、嬉しい気持ちは解るけどさ・・・・・・】

私は心で呟き苦笑し、一杯だけ御馳走になると、「邪魔しちゃいけないから、お先に帰るわね。後はお二人でドウゾごゆっくり」と、早々に切り上げたのだった。

それからはチョクチョク(M)のノロケ電話が入って来た。

やれ、何を買ってやっただの、ドコソコへ旅行して来ただの、マキュにもブレスレットを土産に買ってきただの、わざわざ横浜まで行ってドコソコの高級レストランで食事をしただの・・・・・・。
んなぁ〜事はアタシにゃ実にどうでも良い話で、こちとら、明日食う米にも困ってるんダイ!!
ブレスレットなんか良いから、米の10キロも送って来やがれ!! って感じ。(爆)

2ヶ月前くらいから、プツリと電話が来なくなり、ソロソロやばいのかな? と(M)の身を案じていた所。



「いきなり別れたいなんて言いやがって・・・・・・。理由も言わないんだぜ? あんなに金掛けて、あんなに尽くして、あんなに良い思いさせてやったのに、マキュ・・・。何でだ?!」
(M)は電話口でそう嘆いた。

『あんなに金掛けて、あんなに尽くして、そんなに良い思いばかりさせて来たからなのよ・・・・・・』

私は、そんな事を呟きながら、カップヌードルのお湯が、さっきから沸騰しているのが気になって気になって仕方が無かった・・・・・・。


では・・・、(M)に成り代わって、今日の一首

ヤミクモニ [別れましょう] と言われても
君への投資 まだ元取れず




オマケにもう一個。

後ろ髪 引きちぎられつ 立ち去る俺
早く! 今だよ 引き止めるなら







2003年10月09日(木)

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