マキュキュのからくり日記
マキュキュ


 【年間絵巻】(やっと仄かな希望が見えた)


試練続き・辛い事だらけの去年の一年間が終わり、今年に入って、突然、希望の光のような物が差し込んで来た。

今振り返ってみても、去年から今年に掛けての一年は、本当に辛かった・・・・・・。

1月・・・ 
一昨年に引き続き、苦しいながらも比較的平穏な正月を迎えた。
私はデパートのテナントである、ブティックのパートで2年目を迎えていた。

一方主人は精肉店(個人経営)で配達の仕事。やはり、2年目を迎えるが、一向に正社員にはしてくれない。

2月・・・ 
主人が突如、狂牛病を理由に、生肉店をリストラされる。
しかも、募集当時の『正社員募集』という誘い文句は出鱈目で、散々見習い期間を引き伸ばされたあげく、結局は最後までバイト扱いだった為、失業保険も何の保証も無かった。
12時間も拘束されながら、残業手当も出ず、確かに可笑しな会社だった。
それでも頑張り続けて来た意味は何だったのか・・・・・・。
それでも辞めさせられなかった理由は、仕事を変わり続けてきた主人に、我慢をさせる為だったのに・・・・・。
主人が可哀想になる。

一方、私は先輩たちの話を元に、会社(ブティック)の経営方針の汚さに、憤りを感じ始める。

3月・・・ 
中々主人の仕事が見付からず、私のパートだけでは生活もままならない。
支払いの滞納が、又、増えはじめる。
絶望の日々。

4月・・・ 
主人の高校時代からの親友に誘われ、やっと主人に念願の仕事が見付かる。
主人が長年のキャリアを誇る、ユニットバスの組み立ての仕事で、しかも、親友と同じ職場なので、主人、「コレが最後の砦だと思って頑張るぞ!」と、何時に無く猛烈に張切っている。
しかし、給料は一ヵ月後だ。
それまでを、どう乗り切ればいいのか・・・・・・。
そう思った矢先、主人の持病の痛風が出てしまう。
折角、再就職したばかりなのに・・・・・・。

この頃、絶望的な気持ちから、或る『リスカ』のチャットルームを覗く。
そして(R)と知り合い、ネット上に文章を載せる事を勧められる。
日記・文章を載せる事に、希望の喜びを感じる。

一方、私は、酷い腰痛と、会社のあくどさに悩む日々。
とあるスーパーで、私は昔の友人にばったり出会い、彼女の店のチーママになってくれと頼まれる。アルバイトを探していた私は、幸運を神に感謝した。
様子見で、ブティックに勤めながら、夜の3〜4時間、時給1000円で、彼女の店を手伝い始める。
しかし、何時も厨房の中に「社長」と言う、友人より遥かに年下の男がいて、その人に「このバカ女! てめぇ〜殺すぞ!」と、怒鳴られまくってる友人を見て、「な・・・ナンダイ・・・、この男と、この店は・・・!?」と、疑問が過ぎる。


5月・・・
主人の初給料。『ヲヲ!? 思ったよりも全然良いじゃん♪ この調子! ガンバレ!ガンバレ〜!』
主人の給料に合わせ、私も昼・夜働けば、コレで、少しは楽になれると、一安心。

一方、私の夜の店では、自分で経営してた頃の客達も徐々に来出してくれ、私個人の売上もどんどん上がって行く。
友人から、夜一本に絞ってくれと口説かれる。
しかし、彼女の彼氏でもあるらしい、常に仏頂面で、厨房に陣取り、売上計算で文句ばかり言っている「社長」とやらの存在が、何時も気になり続けていた。
(イケ好かない奴・・・・・・)
しかし、夜一本に絞れば、時給もアップすると言われ『私が全ての責任を持つから! お願い!』という彼女に口説き落とされ、ブティックを辞め、夜一本に絞る。
一番乗りで店を開け、食材仕入れも自分の車でし、掃除も、お通し作りも、私の役目で、「チーママ」だと言われた割には、時給1200円は、どうかと思う・・・・・・。
でも、もうブティックを辞めてしまったのでやるしかない。

6月・・・
主人は順調。
私も不満は有れど、まぁまぁ順調。店の売上が私の客だけで、25%アップする。
これだけやれば、文句はあるまい。

7月・・・ 
此処で一気に暗雲が立ち込め、人生最大の悪夢がやって来る。
末日、心待ちにしていた給料日。しかし、主人に「会社の都合で給料が明日になるらしい」と言われ、(給料が遅れるなんて珍しい)と思いつつも、明日まで待つか・・・と、ほっと溜息。

一方、売上思考ばかりで、客を客とも思わない「社長」とやらの考え方に憤慨し、友人に講義する。
この頃、以前居たと言う女の子が、毎月渋り顔で店に来ていた為、「何か有ったの?」と聞くと、「ずっと給料が貰えないんですよね・・・」と言う。
「・・・・・・マジ!?」
しかも、店のドアには、数回に渡り、「半年以上家賃滞納!」明渡し要求の張り紙が・・・・・・!
給料も遅れるわ、明らかな計算違いが有るわの始末・・・・・・。
とんでもない店に入ってしまったのかも知れない・・・・・。と、不安が募る。
計算違いを社長じきじきに講義する。すると、
「俺が間違いをすると思ってんのか! このバカ女! 殺すぞ! てめえ〜」と、怒鳴られる。
(親にも主人にも、未だかつてそんな酷い言葉を浴びせられた覚えはない)
庇いもしないし、何も言えない友人に、失望感と怒りが爆発する。

8月・・・
昨日(先月末)の給料が、今日になると言うので、パソコン学校からの帰り、(偶には外食でもしようかなぁ〜)と、ワクワクしながら主人を待っていたが、何時もの時間になっても帰る様子が無い。
携帯を覗いてみると、主人からメールが・・・・・・。
「マキュキュ、ゴメンネ・・・。さようなら・・・・・・」と入っていた。
慌てて主人に電話を掛けると、何とか繋がった・・・・・・。
「もう、俺はダメだ・・・。これから死ぬね・・・・・・」と呟く主人。
「なにが有ったのよ! 説明だけでもしに帰って来なさい!」と叫ぶ私。
話を聞くと、慣れない機種のユニットバスの壁に穴を空けてしまい、その発覚を恐れた主人が、思わずコーキングでその穴を隠してしまったらしい。
失敗はその一度ではなく、その少し前にも、同じように壁を壊してしまったと言う。
その時は、何とか許してもらい、弁償金も社長と主人とで折半したと言うが、2度も続いた失敗にパニクった主人は、思わずその失敗を隠そうとしてしまったのだ。
良心に苛まれ、その日の夜、社長に正直に話そうとした以前に、現場監督に見つかってしまい、会社の名前に傷を付けたと言う理由で、6月末で首になっていたのだそうだ。
折角良い仕事に付き、喜んでる私に話せるわけも無く、この一ヶ月、何時死のうかと、ずっと悩んでいたと、始めて聞かされた。
「じゃぁ、給料はゼロ・・・・・・?!!」
私はショックの余り、気を失う。
7月の一ヶ月間、一体主人はどんな気持ちで居たのだろう・・・・・・。
会社に行く振りをしながら、絶望感と、自己嫌悪だけを胸に、ハローワークに通ったり、架空の給料を作る為、金融会社を当たったりしていたと言う。
(無論、無職では借りられなく、それはそれで正解だったのかもしれないが・・・・・・)
そして、今月1日。主人は「会社の都合で給料が明日になった・・・」という、精一杯の苦しい嘘を言い残し、死ぬ為に山に登ったのだ。
主人を責めてはいけないと思う、でも、私の口を付いて出るのは、主人への恨みつらみばかり・・・・・・。

心神喪失常態の私は、店のママと、「社長」に、已む無く相談する。
しかしそれを境に、益々、人の弱みに付け込むような扱いになる。

精神的、金銭的に、もう、ボロボロだった。
「もう、二人で死んじゃおうか・・・・・・」と、暗澹たる日々が続く。

今月の終わりになって、やっと主人に仕事が見付かる。
夫は大手コンクリート会社の見習い社員になった。

9月・・・
こんな精神常態の中で、社長に酷い事を言われる。
「貴方みたいなババァは使うつもりが無かった。でも、ママから客を持っているし、料理も上手いと言われたので、仕方なく使っていた」
此処で初めて、利用されただけだと知り、友人に対しての不信感がピークに達する。
余りの社長の暴言に、切れまくった私は、(もう、どうなっても良い・・・・・・。)と、腹をくくった。
「てめぇ〜こそ死ねよ! このバカ男!」
とやり返し、その日を境に店を辞める。
コレで、今度は私が無職になってしまったが、妙に小気味良かった。

一方、主人は一ヶ月の見習い期間を経て、正社員となる。
手取りは少ないが、全ての保険等が完備された会社なので、コレからが楽しみだ。
後は、無事に末永く続いてくれる事を祈るのみ。

半月後、知人の紹介で、今現在私が勤めているパブの話を聞く。
話によると、元々、1部(7:30〜1:00)・2部(1:30〜6:00)とに分かれ、それぞれの経営者が居、家賃を折半しながら経営している店だと言う。
その1部に私が参加する事で、彼女の負担も更に半分になり、私も毎月10万足らずの参加料で、店のママになれるわけだ。

1部のママは、韓国の女性で、頑なな所も有るが、とても真面目な人間である。
同じ時間帯で二人のママが居る店と言うのも珍しいが、折角戻ってくれた客達との接点も持って居たかったし、これと言った働き口も無かったので、私は参加する事に決めた。

10月・・・
あえて、共同経営者として、店に参加する。
客達も喜んでくれ、先ず先ずのスタートを切る。

一方主人は、持病の痛風も出ず、休まず頑張っている。

11月・・・
先月の売上に比べ、多少減ってはいる物の、オープン当時に忙しいのは当たり前なので、これから徐々に頑張れば良いと思う。
焦りは禁物。
店が狭く、厨房には2部の荷物が一杯で、得意の手料理を店では作れないので、仕方なく家で作っては店に運ぶ毎日。
しかし、不景気と、飲酒の取り締まり強化で、客足が鈍い。
私も、先月までの苦しさが尾を引き、売上をあげても、焼け石に水常態。
相棒の彼女もお茶ッ引きの日が続く。彼女の焦りと苛立ちが、私にも感じ取れる。

一方、主人は順調に頑張っている。

12月・・・
相棒との共同経営にズレを感じ始める。
お互いに、良心的な商売形態は同じなのだが、性格が正反対。

酒も飲まず、人間付き合いも億劫な彼女。
酒は飲むわ、人間好きな私。

全てにけじめを付けないと気が済まぬ潔癖症の彼女。
大雑把で、事なかれ主義の私。

韓国クラブのママ上がりの彼女と、洋風居酒屋上がりの私とでは、客層も全然違うし、接客法のギャップも出てくる。

12月始め、突如、相棒から、店をギブアップしたいと言われる。
彼女の客層が年配なので、飲む回数もどんどん減り、もう客を呼ぶ自信がないと言う。
このままでは半分の家賃を払うのも、苦しいと・・・・・・。
確かに不景気で、何時もの12月とは明らかに違っている。
駅前なのに人通りも少ない。

この月、思わぬ出費に苦しむ。
店のエアコンは壊れるし、私の車まで壊れる始末。
両方の修理代だけで、家の家賃分が飛んでいった。
どうしてこんな事ばかり続くのだろう・・・・・・。
やっとこれからだと思っていたのに・・・・・・。
全ての歯車が噛み合わない。
彼女が抜けてしまえば、無論、私一人で家賃を負担するのも無理な話だ。
私が参加してから、まだ僅か、3ヶ月である。
ボトルを入れてくれた客達にも、申し訳が立たない。
せめて、1月の末にしてくれと彼女を説得し、私も脱退を決意する。
あぁ〜、コレで再び身の振り方を考えなければならない。
もう、良い怪訝に、勘弁しちぃくりぃ〜〜〜〜〜っ!!

極め付けに12月後半は最悪だった。
※先ず、携帯が止まってしまったが、復活できないままだった。1年の内の、一番の稼ぎ時に携帯が止まるなんて・・・・・。
※更に、12月27日から、1月5日に掛けて、9度5分も熱を出すような、重い風邪を引いた。
※週末の書き入れ時になると、毎週、大雪に見舞われた。
※座薬を使い、無理をして行けば、客が来ない。
※どうしても無理で、休めば、「昨夜、大勢連れて行ったのに、店が開いてなかった」と、文句を言われる。
※クリスマスも、ロースとビーフを焼き、鞭打って行ったのに、二日間で一組しか来なかった。
※十数年会えなかった友人が、正月に帰っていたらしく、十人ほどの団体で来ようと思ったが、携帯が繋がらないので、休みかと思って諦めた・・・。と、後に聞かされた。

本当に、コレでもか、コレでもか・・・、と言うほど、神様には執拗に意地悪をされた。
そんなやこんなで迎えたお正月は、さも悲惨だった事は、言うまでも無い。(爆)

本当に、この一年を振り返ると、辛い事の連続だった。
主人を責め、自分を責め、自己嫌悪に陥り、しかし、成す術も無く、ただただ、目前の辛さから逃げたかった・・・・・・。
全ての事に、やる気が薄れ、自信を喪失し、気ばかりが焦っているのに、何も手に付かない常態だった。
何かを始める事がとてつもなく恐ろしかった。良かれと思った事が全て裏目に出てしまった。今も恐ろしさはある。でも、何もせずには暮らせるわけは無いのだ。

今年に入った途端、友人から思わぬ朗報が飛び込んできた。
とても破格の家賃、破格の保証金で、店が持てそうなのである。
しかも場所は、長年経営していた私の店が有った場所にホボ近い。
私が持っている客達も、気軽に立ち寄れる場所である。
大した借金をせずに、又、私だけの城が持てそうなのである。
みんなの意見を求めても、絶対にやるべきだと言ってくれた。

余談だけれど、私が信じている占いが有る。
細木数子の六星占術である。
私は水星人のマイナスなので、去年の年運が、『健弱』という小殺界、月運の大殺界が、毎年、12・1・2月なのである。
今思うと、正に、ピッタリと当たっていた。
しかし、今年は、2月を過ぎれば、年運が『達成』という幸運期なので、今は苦しいので、いち早く、間も空けずにオープンしたいのは山々だが、三月迄待って、オープンしようと思う。

お客の退屈しのぎに、店にパソコンなんかを置き、客達に習いながら少しづつPCの腕も磨きたい。
私の家に、気軽に友達が集まってくるような・・・・・・、そんなアットホームで、安く遊べる、楽しくて暖かい店にしたい。
この不景気な時期に店を出すのは勇気が要るが、愛情を込めて美味しい物を作って、安く気軽に遊べる所なら、皆来てくれると思う。

もう一度私は、小さな花を咲かせたいのだ。





2003年01月10日(金)

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