睦月の戯言御伽草子〜雪の一片〜
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道標過去へそれから


2002年04月08日(月) 春雷

天轟かす古き神々
その御足踏みて、大地震わし
その御腕なげうち、天蓋を裂く

風に乗りて、雲に泳ぎ
地を射ては、空をどよもし
浪を逆立て、雨水を下す

人の祖よりさらに古き、
強き疾き神々よ

願わくば、
その大いなる力もて
我らに天と地の恵みを
もたらさんことを
御矢の黄金の稔りと
ならんことを

田野に五穀の豊饒を
山河に五色の霓虹を
人心に五情の幸福を

「ああ、コクトが詠っていますねぇ。」
「コクト?雷では・・?」
「春が近づいた合図ですよ。」
「ここには春は、ないって聞いたぞ?」
「あるんですよ、短いですけどねぇ。」

午後の茶室で足がしびれるのをがまんしていると、どこからともなく聞こえてきた声と雷・・・
おかげで僕は足を崩す事ができた。

「まだ、慣れないんですねぇ。」

含み笑いでお茶を点てるこの宿の主人はおっとりしているのか、天然ボケなのか、僕には見当もつかない。

実際得体の知れない人だ・・・
そう言う僕の方が主人にすれば得体の知れない人物なんだろうけど・・・・
ここは、いつも雪がふっていて、雪明りで明るい程度だ。
それでも、住人は明るい、いい人ばかりだ。
ただ、ひとつ・・・・
住人は、人ではない。
みな、動物なのだ。
もちろん、僕のような人間もいる。
けれど、人間はこの宿に何泊かすると、どこかへ行ってしまうのだ。
宿で働く動物たちは、とても働き者で世話好きだ。
人間ばかりの村もあるらしいのだけれど、僕はなんだかここが気に入って、もう、どのくらい世話になっているんだろう。
でも、本当に居心地がいいんだ・・
毎日毎日降る雪も気にならないくらい・・・


お地蔵様の資料は『ojizosan.com』を参考にさせていただきました。
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