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人物紹介


バイトの先輩達
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K先輩と別れて一人で電車に乗りながら、私は自己嫌悪で落ち込んだり、今日を振り返ってドキドキしたりを繰り返していました。
家の側に着いた時間は、まだ門限の一時間近く前でした。
親にバイトだと嘘を行って出かけた手前、あまり早く帰宅できず、私はバイト先のスーパーに寄ることにしました。

私は普段、平日は学校帰りの制服のままバイトに行き、私服で行く土日は大半の人が入った後の午後からが多く、帰宅はバイトの中では一番最後でした。
買物もバイトの休み時間にバイト先の制服のまましていたので、私服で行った私を珍しがっていました。
バイト先には、その頃、ほんの少しだけカッコいいなと思っていた一つ上で、背の高い男の先輩が居ました。
滅多に会話する事は無かったのですが、その日は私が挨拶をすると
「びっくりした。印象違うから」
と言われ、少しだけ嬉しくなりました。

レジの側に行くと、社員の人に言われました。

「あれ?法事だったんじゃないの?」

私はK先輩のことで頭が一杯になっていて、すっかりその頃には自分が法事と嘘を付いたことを忘れていました。

「終って、一回着替えて来たんです」

多分、かなりたどたどしい言い方になってしまったと思いますが、内心物凄く焦りながら、なんとか答えました。
そして、この法事という嘘を考えてくれた友人Oのレジに並び、「終るの下で待ってるから」と伝えました。

バイト先では、私と同じ高校のOともう一人の三人が高3で一番年下でした。
年上の女性ばかりの環境は、末っ子の私にとっては居心地の良いもので、年上のバイトの人とも社員の人とも仲良くしてもらっていました。
その中で、特によく話をしていたのは、バイトで1つ上のCさんと5つ上のMさん。2つ上の社員のTさんでした。

各売り場のバイトは、主婦と男性の学生バイトでした。
その中には、子供の頃の同級生の母親が居たりしたのですが、男性は一人同級生がいるだけで、あまり接点が無く会話も殆どしたことの無い人ばかりでした。
ただ、一人だけ。
閉店間際に掃除用具を取りに行く場所にある売り場のバイト、Yさんとは世間話程度をする仲でした。
Yさんは、K先輩と同じ学年の私の一つ上で大学生で。
最初は、高2の冬にYさんの方から「寒いねぇ」などと話かけてきてくれて、それから少しずつ話をするようになっていました。

Oを待っていると、そのYさんがバイトが終って通りかかりました。
挨拶すると近づいてきて

「今日、休みだったの?」

と聞かれたので

「実は、内緒なんですけどサボりなんです」

と答えました。
そういう事も気軽に言える雰囲気をYさんは持っていて、気さくなお兄さんという感じでした。

「おー、社員の人に言いつけてやろ〜」

からかうようにYさんに言われたので、

「いいですよ?Tさんと話できるんですか?」

と聞き返しました。
Yさんは以前、社員のTさんに怒られた事があり、それ以来苦手になったと言っていました。

「いや、俺、無理だわ」

案の定、Yさんは笑って言い、お疲れと言って帰っていきました。

Yさんが帰った後、同じ一つ上なのに、どうしてK先輩とはこんな風に会話が出来ないんだろう?とまたいつもの繰返しの自己嫌悪に陥りました。
そこに、今度は5つ上の女性、Mさんが通りかかり、私を見つけると近づいてきました。

「お疲れ様です」

と声を掛けると、

「亞乃、今日、サボったでしょう?」

と笑いながら言われました。

「ええ?なんで知ってるんですか?」

と思わず聞き返すと

「あ、やっぱりそうなんだ。その格好、どう見てもデートじゃん」

とさすが年上だなぁと思えるスルどさでMさんに指摘されました。
そして、相手は誰よ?とふざけ半分で聞かれたので、私は正直に

「好きな人なんですけど、私のことどう思ってんのか分からない相手なんです」

と答えました。
Mさんは、

「ふぅん。彼氏じゃないんだぁ?てっきり相手居るかと思ってたのに」

と意外そうに言いました。

「そういう風に見えます?」

と私が聞き返えすと、

「あの(同じ高校のバイト)3人の中で、亞乃が一番大人っぽく見えるし」

とMさんは答えました。

「え?Oの方が落ち着いてません?」

私の中では、私よりも数段Oの方が大人だと思っていたので聞いてみました。

「ああ、Oね。あの子は、確実に彼氏居るでしょ。」

このMさんの答えを聞いて、大人の女性の勘は凄いなと思いました。
3人の中で彼氏が居るのはOだけでした。
でも、Oは他のバイトの人とも社員の人とも話す方では無かったし、Mさんが知ってるハズも無かったのです。

「ええ?なんで、分かるんですか?」

私は思わず驚いて聞き返すと、

「女かどうかぐらい、見てれば普通、分かるってぇ」

とさらっとMさんに言われ、なんだか私が恥ずかしくなってしまいました。
ということは、私も他の人から女かどうか分かられてしまっているんだろうか?
そう思うと同時に

「え?じゃぁ、私ってどういう風に見えてるんです?」

と聞いていました。

「亞乃は・・・どっちかなぁ?って微妙なとこだね」

微妙っていうのは、どういう感じだろう?と私は更に疑問になりました。
でも、今の会話で少なくともMさんには、私がまだ女じゃないと分かられたような気がしました。
でも、キスぐらいは・・・と思われているような、そんな雰囲気も感じました。

この時が、MさんにK先輩のことを話した最初でした。
この会話から約一ヵ月後。
MさんによってK先輩への想いが変わっていくような事があるとは、全く思いもしませんでした。


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