みちる草紙

2007年03月13日(火) ヴェルサイユ〜エッフェル塔【1】

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↑「全て表示」にしてご覧下さい。但し200枚近くあります(ーー;)
ヴェルサイユの庭園やエッフェル塔などは
サイズを最大にして見ると、臨場感が増す感じ。

さて、今回も長〜い記録を。(私の覚書なので無理して読まんでよかよ)

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前夜は20時前に寝たのですが、疲労でそのまま泥のように眠りほうけ
朝になっても自力で目を覚ませないのではないかと
携帯電話のアラームを(日本時間のまま)セットしておきました。
朝の6時に起きるためには、何時に設定すればいいんだ?てな具合に。

ところが、深夜の3時か4時頃、腹痛を覚え目を覚ましました。
腹がゴロゴロ鳴っている。きっと寝る前にガブ飲みしたエビアンのせいだ。
フランスの水道水は飲めないこともないが、日本と違い硬水で
稀にお腹を壊すことがあるので、ミネラルウォーターを買いなさいよと
ガイドブックに書いてあったのだ。だからそうしたのに。

結局、朝食の時刻までに何度かトワレットを出たり入ったり。
街中で突然クルより、ホテルにいる間で寧ろ良かったと思いながら。
でもこれで、お腹がスッキリ軽くなった状態で出かけられる。
今日は早速遠出するのだ。パリ郊外のヴェルサイユまで。

朝食をとる部屋はレセプションのすぐ脇にありました。
ビュッフェ方式で、トレーに好きなものを取ります。

熱いコーヒーと牛乳がプレートの上にのっている他には
クロワッサン、チョコチップロールパン、小さいフランスパン、
シリアル2種、冷たい牛乳、ハム、固ゆで卵、種抜きプルーン、
カットオレンジ、シロップ漬けフルーツ(缶詰)、ヨーグルト、
カマンベールチーズ、バター、ジャム etc.. 野菜はない。

フランスの朝食は質素だと聞いていましたが
なかなかどうして、起き抜けなんかこれで充分な気がします。

コーヒーは、味は好きだけど飲むと頭痛がして電車に酔うことがあるので
普段あまり飲まないのですが、何か温かいものをお腹に入れたくて
カップに熱い牛乳と半々に注ぎ、カフェ・オ・レにしていただきました。

コーヒーが滑らかでおいしい。牛乳をこんなに入れても胃にもたれない。
そしてクロワッサンがまた何ておいしい。甘い良い香りがする。
日本のパンと何が違う・・・バターなのかな。さすがにパンの国だ。
ヨーグルト(DANON)は、ベリーの風味はするけれど果肉の塊がない。

カフェオレとパンの他は、ハム、卵、プルーン、チーズ、ヨーグルトで
すっかりお腹が一杯になりました。

日本人の宿泊客が、先に朝食をとっていました。
初老の夫婦と、若い女性二人組。女一人はやっぱり私だけか。

食事を終えて部屋に戻り、いよいよ出かける準備。
ガイドブックは重いし、外で開けば旅行者であることが丸わかりで
スリのターゲットになる恐れもあるので、置いて行くことにしました。
大丈夫だ、今日の目的地はヴェルサイユだけ。
ルートをメモしたものさえあれば、あとは多分必要ない。
雑誌から破り取った地図を折りたたんで持って行けば良い。

それでも一抹の不安が胸をかすめます。
何度も路線図を確認したり、持ち物を確かめたり
何より、気分を落ち着かせるのにグズグズそわそわしてしまい
ホテルを出た時は9時を過ぎていました。

「さあ行こう!」
無理に気持ちを奮い立たせて、ようやく外に出ました。
朝のパリの街を行く人々は、昨日の夕方見た時よりどこか慌しい。
調子を合わせるように、大股でスタスタとメトロの駅に向かいました。

自動改札機は、日本のそれとちょっと仕様が違うようなので
他の乗客の入り方を見て、真似をすることにしました。
切符を差し込むと、ピッと吐き出し口に出てくる。
それを取ってターンスティールをガシャンと押し
更に、前にある扉を押して開け、中に入るという仕組み。

改札を抜け、階段を少し降りたらすぐホーム。
奈落の底のように深い大江戸線に慣れてしまっているせいか
地下鉄と言ってもこんなに浅いものかと驚きました。

日本を発つ時、パリのメトロは危険だとさんざん聞かされていましたが
ホームで待つ人々は、見たところごく普通の老若男女ばかり。
白人と黒人の割合はほぼ同じくらい。私と同じ黄人はちらほら。
目立って無防備な様子を見せなければ、危険はなさそうに思える。

最初に乗るのは、ラ・デファンス行きの1号線。
この線だけは、ドアの開閉が自動の上、駅名のアナウンスが入ります。
乗り込むと、日本のラッシュアワーほど混んでいないものの
座席は埋まり、大勢の乗客が乗っていました。
バーにつかまって立ち、努めてクールな表情を作り長年の住人を装う。
それでも空いた手は肩から提げた鞄の端をしっかとつかんで。

コンコルド駅で一旦降り、バラール行き8号線に乗り換えました。
アンヴァリッド駅に着くと、今度はメトロからRERに乗ります。
RERの乗り場まで、表示に従い長い通路を延々歩く。
どこからともなく、ヴァイオリンの音色が響いてきます。
奏者が楽器にアンプを繋ぎ、通路で一心不乱に弾いているのです。
動く歩道の両側の壁は、奇妙な壁画がいっぱいに描かれており
構内は、香ばしいパンの香りが充満していました。

RERのヴェルサイユ・リヴ・ゴーシュ行きはC5号線なのですが
「C」の表示はあるものの、「5」がどこにも書かれていない。
行き先に“Versailles”とあるから、これでいいのだろうか・・・。

同じホームの反対側で、日本人らしき母娘が列車を待っていましたが
私はその隣に停車しているのに乗り込んでしまいました。
あとで思えば、どうせヴェルサイユ宮殿を目指すのであろう同朋に
素直について行けば良かったのです・・・。

RERの車両はメトロに比べ、一段と荒んだ印象を受けました。
二階建ての造りながら、全体が老朽化して薄汚れているし
窓は引っかき疵や落書きだらけだし、シートの茶色い革は古びてボロい。
そして、郊外に向かう電車だからなのか、乗客はまばら。

外国で、こんな怪しい列車で、たった一人で郊外に出ようとしている・・。
ガイドブックにあった、RERの治安についての記述が頭に浮かぶ。
一階車両の中央辺りに座を占めながら、緊張で身が引き締まる思い。

見渡すと、労務者風の中年男性や胡散臭げな黒人男性の他
前方にはブロンドの若い女性が一人で乗っている。
ビジネスマン風の男性や、年老いた女性も何人かいる。
大丈夫、まだ日が高いもの。悪人が蠢き出すのは大抵夜だ。

列車が発車し、通り過ぎる景色を車窓から眺めながら
停車駅の名前をひとつひとつ確認していました。
ジャヴェル… ムードン・ヴァル・フルーリ… ヴィロフレー・リヴ・ゴーシュ…
次の分岐で、ポルシュフォンテーヌに来ればOKだ。
果して、ポルシュフォンテーヌの標識が見えました。これでひと安心。

ところが次に止まったのは、ポルシュフォンテーヌの文字を見てから
かなり経ってからでした。駅名を見ると、ヴェルサイユ・シャンティエ… 
違う!
反射的に座席を立ち、慌てて列車から降りる。
やっぱり、乗る時に駅員にでもちゃんと尋ねるべきだった。
引き返そうと、ホームの階段を駆け上がる。
でも、どの列車に乗れば戻れるのかがよく判らない。
途方に暮れる中、ここでもパンの香りが駅の中に充ちていました。

多分これだ。と、また適当なアタリで乗り込む。
止まった駅は、サン・シール… また間違えた!!。・゚・(ノД`)・゚・。
これはいかん!どんどん目的地から遠ざかって行く!
こうなったらタクシーでも使おうと、駅を出ることにしました。

改札機に切符の差込口がないので、戸惑っていると
黒人女性がフランス語で何か言いながら、改札を素通りして行きました。
多分『出口では切符要らないのよ』と教えてくれたのでしょう。
そうだった。日本とは違うのだ。

改札を出て、インフォメーションと書かれた事務所に入りました。
インフォメの人たちは、着飾った三人連れの黒人娘の相手をしていて
私の方には目もくれません。注意をこちらに向けると、何やら怪訝な表情。
C5号線に戻る方法か、或いはタクシー乗り場を訊こうとしましたが
座っていたおばさんは、フランス語しか話せないようでした。
何かごちゃごちゃ言っているけど、当然こちらは理解不能。
『メルスィ…』
もういいよ。がっくりして駅の外に出る。

そこは、やけにだだっ広く閑散とした、駐車場だか広場だかでした。
タクシー乗り場なんてどこにも見当たらない。参ったなオイ・・・。
そこへ、本を読みながら足早に歩いて行く、東洋系の黒髪の女性が。
これはこれは、もし彼女が日本人であればラッキーだ。

「エクスキュゼ・モワ・・・」
しかし、彼女の返事はフランス語だった・・・。
もうダメか・・・でもここで望みを捨ててはいけない。
試しに英語で訊いてみるのだ。
「すみません、私はフランス語が話せないのです。(←ここだけ仏語)
 この近くにタクシー乗り場はありませんか?」
『タクシー?この辺では、タクシーは電話で呼ばないと来ませんよ』
英語が通じる!良かった!(T∇T)

『どこへ行きたいのですか?』
「ヴェルサイユ・リヴ・ゴーシュ駅です。
 だからヴィロフレー・リヴ・ゴーシュに一度戻りたいのですが」
彼女は、私が改札からずっと握り締めているカルト・オランジュを見て
気の毒そうにこう言いました。
『これは・・・4ゾーンまでの切符ね。このサン・シールは5ゾーンに入るのよ。
 戻るには、一度切符を買い直さないといけませんね』

何と、私は電車を乗り違えたばかりか、越境してしまっていたのでした。
フランスでは精算システムがないため、万一乗り越しがバレると
問答無用で45ユーロの罰金を徴収されるのです。危なかった。

彼女は、因幡の白うさぎを救った大国さまのように親切な人でした。
わざわざ一緒に駅まで戻り、表示板を指し示して
どのホームの電車に乗れば良いか、丁寧に教えてくれたのです。
何度も厚く礼を述べ、その女性に別れを告げました。

大枚で乗り放題のパスを買ったのに、まだ切符を買い足すのは
不本意だけれど仕方がない、タクシー代や罰金を払うよりマシだ。
窓口で切符を買い、東洋人女性に教わったホームから列車に乗ると
ちゃんとヴィロフレー・リヴ・ゴーシュに着きました。
今度こそ間違えないぞ。
ヴェルサイユ・リヴ・ゴーシュ行きのホームをしっかり確認し
列車が来るのを待つ。でも念のため、また誰かに訊くことにしよう。

ベンチに座っていると、向い側のホームで声高に叫ぶ声がします。
見ると、小柄な黒人のおばちゃんが、若い女性二人を小突きながら
何か大声で喚き散らしているのです。
女性たちはうんざりした表情で、あまり相手にしない余裕を見せながら
クレイジーなおばちゃんをあしらっています。
同じホームで電車を待つ人々は、皆そちらに注目して様子を窺っている。
ひとしきり怒鳴ったあと、おばちゃんはスタスタ歩いて行きました。
あの人がこっちに来たらどうしよう・・・。

そこへ、プラチナブロンドの華奢な女性が現れ
階段を降りて私のいるベンチの側まで来ました。
リュックをしょい、ベンチの端に足をかけて靴紐を結び直しています。
よし、この人に訊いてみよう。

「すみません、ヴェルサイユ・リヴ・ゴーシュに行くには
 このホームで良いのでしょうか?」
さっき一生懸命暗記したフランス語でこう訊ねました。
『シャトー・ド・ヴェルサイユへ行くの?』
「イエス。このホームは正しいですか?」
咄嗟にどうしても“ウィ”が出ず、途中から英語になる。
彼女はトルコ石のような青い目で微笑み、答えました。
『そうですよ、ここから二つ目です』
「メルスィマダム、メルスィボクー!」
『オールヴォワール』

ようやく正しい列車がやってきて、ほっとした気持ちでそれに乗る。
いかにもといった観光客を満載した、賑やかな電車でした。
ぎっしり乗り込んだ若い男女は、皆英語で喋っています。
大幅なロスのせいで、やっとの思いでヴェルサイユ・リヴ・ゴーシュ駅に
たどり着いた時には、既に11時半を回っていました。
パリから30〜40分で行けた筈が、2時間もかかってしまった・・・_| ̄|○
RERって日本のローカル線並みに本数が少なかったから。

続く (長すぎて制限文字数オーバー)


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