みちる草紙

2007年03月12日(月) フランス到着

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記憶が新しいうちに自らの覚書として記します。(だから長いですよ)


今回申し込んだのは、完全フリープランのパックで
旅行代理店にホテルとエアチケットの手配だけしてもらいました。
航空券をポンと送って来て、あとは一人で勝手に行けよというものです。

添乗員付きの団体ツアーだと高くつく上、時間や行動が縛られるので
好きな時に好きな場所に行き、好きなだけ見て好きなだけいられる
自由な旅がしたかった。殊にフランスはそうしようと決めていました。

フライトを除けば、丸々滞在出来るのは僅か三日間。
それでも、パスポートの更新や情報収集など、事前準備が大変でした。

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寝過ごすといけないので、用心のため夜通し起きて出発に備え
朝の5時前に家を出る。外はまだ真っ暗で人通りもない・・・。

6時池袋発の成田エクスプレスに乗り込む頃
ようやく日が昇ってきました。
車窓から、しばし見納めとなる東京の風景を眺めながら
ハラハラドキドキ、否が応でも気持ちが昂ぶる。
海外女一人旅。大丈夫かなぁ・・・。
池袋を出た時はガラガラだったのが、東京駅に着いた途端に
どっとお客が乗り込み、車両はたちまち満席。
フランス語旅行会話本を手にウトウトしていると
あっという間に成田空港駅。7時半に到着。

まだ混雑というほどではないが、既に多くの人が
チェックインカウンターに並んでおり、気がはやります。
北ウィング第一ターミナルのJAL/ABCカウンターで
予め送っておいたスーツケースを受け取り、海外用携帯電話をレンタル。
ABC係員の手際の悪さにイライラ(-"-;)早くしてよ〜もう。
チェックインの際も、受付のお姉さんが何やらモタついている。

『お客さまのチケットは、これだけですか?』
「・・・そうですけど・・・?」

お姉さんが席を立ち、どこかに行ってしまいました。
何か足りないの?代理店からはそれしか送って来てないぞ。
ま、まさかここまで来て飛行機に乗れないなんてことは・・・(滝汗)

『お待たせして申し訳ありませんでした』
何だか知らないけど、取りあえず無事チェックイン完了。
しかし、スーツケースの重量が18kgもあった!!
20kgまでは無料で預けられるが、超過すると追加料金を取られる。
そんなに余計なもの詰め込んだ覚えはないのに・・。(いや詰めたかも)
やばい、これじゃお土産が買えないかも知れない・・・。

出国審査を済ませ、搭乗ゲートへ。
チェックインまでに手間取ったせいか、座席は後方のアイルシート。
窓際が良かったのに。この窮屈な席で12時間余のフライトか・・・。

9時35分、定刻通り離陸。靴をスリッパに履き替える。
パンツスタイルの制服がかっこいいエールフランスのアテンダント達は
外国人も日本人も皆愛想が足りない気がする。エコノミーだからだろうか。
しばらくして食事が提供される。肉か魚か訊かれ、魚をチョイス。
昨夜から何も食べていないのに、あまり空腹を感じない。
添えられていたライスは、縁が糊状に固まっていてマズイ。
エコノミークラスの機内食なんて所詮こんなもんか。
長身のイケメンパーサーが飲みものの希望を訊きにくる。
えっ♡『マダム』って私のことですか?

機上の時間。直行便とは言え、この長さは苦痛以外の何ものでもない。
機内は乾燥してうすら寒く、すぐに目が覚め、咳が止まらない。
二度目の機内食が済み、しばらくすると
パリに向け高度を下げ始めているとのアナウンスが入る。

現地12日14時(日本時間12日22時)、CDG空港ターミナル2C到着。
入国審査の係員は睫毛の長い黒人男性。終始無言。
スーツケースもスムーズにピックアップ、ホテルへの送迎車を待つことに。

代理店の専用車は片道14,000円とバカ高いので断り、ネットで調べた
シティラマ社のエアシティサービスを予約しておいたのですが
これが時間になってもなかなか来ません。心配になってくる。
到着ターミナルの8番ゲート指定で、乗車予定時刻は到着の一時間後。
実際は14時の到着だが、予定では14時20分になっているから
きっと迎えはその一時間後、15時20分に来るのだろう・・・。

怪しげな黒人が大勢たむろするゲートのベンチで一人、心細く待つ。
天気いいなぁ。風は少し冷たいが寒くない。これがフランスの空気。
写真を撮りたいが、引ったくりが心配でカメラを取り出すことはせず。

15時20分、車は来ない。40分、まだ来ない・・・。
ゲート番号を何度も確認したから、場所を間違えてはいない筈。
遅いな。電話してみようか。
ゲートの中に戻り公衆電話を探すが、それと思しき場所には
電話機が撤去された跡だけ残り、穴から電話線がぶら下がっている。
うーむ困った。レンタルした携帯電話を取り出した、その時。

『ミス×××?』
ゲートの回転ドアから中年男性が入ってきて、名前を訊いてきた。
手にはエアシティサービスのボード。
「イエ〜〜〜ス!」
ああ良かった・・・。

『随分待った?』
「待った。40分以上も」 本当は2時間近く待ってたけどな。(怒)
ドライバーのおじさんは英語が話せるようでした。

『別のお客さんを拾ってくるからちょっと待ってて』
ターミナルを周回してドライバーが一旦降り、すぐに戻って来ました。
『今回他に誰もいないから、ここに乗って』
と助手席を指します。
「お客は私だけ?」『そう』
送迎車の助手席に積まれるとは思ってもみなかった。
まあいいや、ここなら見晴らしが良いから。

『フランスは何度か来たことがあるの?』
おじさんが色々と話しかけてきます。
「いいえ、初めて」
『仕事は何をしているの?学校の先生?』
「先生じゃない。ただの会社員」 ・・・先生に見えるんか。
『じゃあ・・・秘書?』
「そう」
『帰りの飛行機は何曜日の何時?』
「金曜日の10時半」
『そうか金曜日か。じゃあ朝早くホテルを出ないとね』

「ここからパリ市内までどのくらいかかる?」
『大体40分だね』 成田に比べるとかなり近いな。
「おじさんはフランス生まれ?」
『出身は南米だけど、ロンドンに三年くらいいたよ』
はあ、それで英語がうまいんだ。

おじさんが道々ガイドしてくれました。
『ほら、コンコルド』
『あれはサン・ドニのサッカースタジアム』
「フランスチームが優勝した時の?」
『そうだよ。サッカー好き?』
「サッカーは興味ないの。
 サン・ドニのバジリク聖堂に行きたいんだけど、この近く?」
『ああ、あれの裏っかわ』

高速道路を降り、パリの街中に入りました。
日本とは違う風景に見とれながら、夢中でシャッターを切ります。
『ムーラン・ルージュだよ』
「どこ?どれ?」『あれ』
ということは、この辺りはモンマルトル界隈だな。
この国の歩行者は、路駐の多い車道を左右ろくに見もせず渡る。
ドライバーはそれを器用にひょいひょいよけて通ります。
「おじさん運転うまいね」
『ああ、仕事で毎日乗ってるからね』

話すこともなくなり、しばらくの間双方無言。
すると、おじさんがやおら口を開き、こう言うではないか。
『今晩、レストランでディナーを一緒にどう?』
はい?
『君をホテルに送り届けたあと食事がしたい。あちこち案内するよ』
こ、これはもしや・・・ ナンパか?
なるほど、日本の女は軽いと思われていると聞くけれども
それにしても仕事中に客を誘うとはさすがフランス人。いや南米か。

無視して「あの建物は何?」とか言いながらなおも写真を撮っていると
『君は私の質問に答えていないね』
「だっておじさん、仕事中でしょう」
『終われば関係ないよ』 ・・しつこいぞ?(-_-;)

「レストランで食べたら高いじゃない。
 私ね、お金がないから食事はモノプリの惣菜で済ますつもりなんです」
こちらの財布をあてにしてもダメだと暗示した訳です。
すると納得したのか、それ以上は誘ってきませんでした。

『もうすぐホテルに着くよ』 やれやれ。
『君の帰国の日は、朝7時に迎えにくる。
 前日にFAXを入れるから、フロントに言って受け取るんだよ』
「わかりました」

車は17時頃ホテルの前に止まり、おじさんがフロントまで
スーツケースを運んでくれ、私に代わって到着を告げていました。
礼を言いながら5ユーロ紙幣を渡すと
おじさんは固く握手して去って行きました。

ヴァウチャーを渡し、チェックイン。
フランスでは1階が0階なので、部屋は205号室ですが3階にあります。
客室はツインルーム、濃いオレンジ色が基調の室内。

長旅の疲れもあり、そこですっかり着替えて寛ぎたいところですが
その前にやることがありました。
日曜と月曜しか販売していないというカルト・オランジュ(定期券)を
駅へ行って買わねばなりません。
財布とパスポートと航空券、それに顔写真を用意してきたバッグに詰め
最寄のメトロ駅、パレ・ロワイヤル・ミュゼ・ド・ルーヴルに向かいました。

初めて歩くパリの街。
彫刻をふんだんに施した石造りの建物は
東京の煤けた真四角なコンクリートビルとは色がまるで違う。
通りを行き交う人々は、殆どがコーカソイドかニグロイドのよう。
私と同じモンゴロイドは少ない。ここは本当にヨーロッパなんだ。

記憶上の地図を頼りに、ルーヴル宮沿いをてくてく歩いて行くと
目当ての駅は難なく見つかりました。
階段をほんの十数段ほど降りたところに、もう窓口と改札がある。
果してたどたどしいフランス語が通じるだろうか。

「4ゾーンまでのカルト・オランジュを下さい」
『4ゾーン?』
窓口の無愛想な駅員が、指を折って訊き返します。
「そうです」
50ユーロ紙幣と写真を出すと、代わりにオレンジ色のカードを渡され
名前を書くよう指示される。貸してくれたボールペンは書きにくい。
駅員は無表情のままカードに写真を貼ってラミネートシールで覆い
クーポンと一緒にグレーのケースに納めてお釣と一緒によこしました。
よっしゃ!先ずはカルト・オランジュげっと!!!
明日から三日間、この電車・バスのフリーパスを移動に使います。

日没までまだ間がありそうなので、周辺を散策することにしました。
地図によれば、駅前にあるあれは、きっとパレ・ロワイヤル。
一旦ホテルまで戻り、その前の通りを歩いてみることにしました。

夕暮れ時の見知らぬ街の通りを、勝手知ったるかの如くずんずん進む。
結構歩いたけど大丈夫、帰りはもと来た道を戻ればいいんだから。
定期券を買えただけで、もう大胆になっています。
しばらく行くと、中央に騎馬像の建つ円形の広場に突き当たりました。
すごい。通りをちょっと行っただけで、こういうものが普通にあるパリ。

像に近づいて写真を撮り、さあ引き返そうとしたところ・・・
あれ?今来たのはどの道だっけ??

広場からは、幾つかの通りが放射線状に延びており
自分が今歩いて来た通りがどれなのか、判らなくなりました。
多分これがそうだろう、と適当にアタリをつけて歩き出すと
バンク・ド・フランスの文字が入った儼しい門構えの建物が。
フランス銀行だ。これは地図では確かホテルの斜向にあった。
なんだ近いじゃん。平気だ、余裕。

そこで大して慌てもせず、再び歩き出したのですが
実は全く違う方向へオペラ大通りに向かっていたのでした。

途中、見かけた雑貨屋に寄り、エビアンの1リットルボトルを2本購入。
お腹はあまり空いていないものの、喉がカラッカラ。

大通りに出ると、右手にオペラ・ガルニエらしき緑色の丸い屋根。
待てよ。あっちがオペラ・・・ということは、ホテルは・・・。
やみくもに歩いていると“モノプリ”“京子”“ポール”などといった
店の看板が見えました。それらはガイドブックに載っていて覚えていたので
ホテルから遠くないことは解っていましたが、方向感覚が今ひとつ。

止むを得ず、近くにいた人に道を尋ねることにしました。
三脚を立てて街の写真を撮っているかっこいいお兄さんに近づき
「すみません、パレ・ロワイヤル・ミュゼ・ド・ルーヴルの
 メトロスタスィオンはどこでしょう?」
と、拙いフランス語で話しかけてみました。
するとお兄さんは清々しい笑みを浮かべながら
『ここを真っ直ぐ行って左側ですよ』
と、英語で答えてくれました。
「ありがとう!メルスィボク〜ムッスィユ♪」
慣れないせいか、どうしても英語が先に出てしまう。
ともあれ、お兄さんのお陰で無事ホテルに帰り着くことが出来たのでした。

既に19時を回っていましたが、空はまだ薄明るい。
日没時刻は日本の真夏と同じくらいです。フランスってこうなんだ。
携帯で日本に電話してみたものの、応答がない。
無理もない。向こうはもう深夜の3時を過ぎているのだから。
ここで初めて、腕時計をフランス時間に合わせました。
それまで日本時間のまま、8時間引いて時刻を数えていました。

テレビを点けると、美女が司会者に何か答えているバラエティらしき番組。
当然ながら、何を言っているのかさっぱり解りません。
英語の番組はないかとチャンネルを変えてみましたが、なさそう。

身体も疲れているけれど、喉の渇きがもう限界。
買ってきた水をごくごく流し込み、まだ20時前でしたが
何も食べずにベッドに潜り込みました。
そう言えば、日本を発つ前から殆ど寝ていない。
くたびれ果てて、食べものを買いに行く気力などありませんでした。


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