カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 うつぶせ

=うつぶせ=

冷たい手をかざすと、ほら、僕が見えたでしょ。そのままにじり寄って、首もとに手を置いて、力を込めれば 僕は、寝返りも、小さな声も漏らさない。最後に薄く目をあけて、君の目の下、小さなほくろを見つめる。失われた視線は、見透かしたまま宙に漂って、その先、幾光年分かの夢をみる。君の夢を見たよ、光のスピードで、じりじりと失われていく夢。
そんな光は、心を凍らせてしまうから、僕は最後に君の顏を忘れないように、眺めたくて 眺められない どうせ忘れてしまうからと、気を抜いた瞬間、息がもれた。手を止めた君。指先が震えて。それに涙を誘われた。僕は、ほら。綺麗な表情で殺して、と 言ったのに。

ふと開いたふりして見つめた君を包み込む僕の優しさが、抱かれる君を芯まで冷やして、震えさせる。

死化粧は君に。
泣く子は嫌いなんです。



2008年09月16日(火)
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