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『天国の本屋』 松久淳&田中渉 新潮文庫 - 2004年07月18日(日)

《bk1へ》
面白い本、心に残る本を他人に伝え共感を分かち合いたい。
本好きの自然な気持ちである。
出版不況の昨今であるが売上の絶対量が減っているだけで依然として膨大な出版数の本が出版されている。
その中でいかに本をセレクトして読み吸収して行くか。
ある意味において本好きの醍醐味であろう。
本を選ぶ時点で読書が始まっていると言っても過言ではないのではないか。

我々がネットを通じて書評を書いたり読んだりする行為って、ネットを通じた“口コミ”作業と言えるんじゃないかな。

本作はその口コミの典型的な例といえる成功例の本である。
なんと発信地は東北地方のとある書店から始まった。
今や映画化もされて一大ムーブメントとなっている。


物語はいたって単純である。
遅まきながら今回初めて手にとって率直な感想はやはり本好きにはたまらない内容となっている点である。
本作は読者に現実ではありえないとわかっていても、究極の心の安らぎの空間をもたらしてくれている。

私たちが普段避けられない現実によって精神が飽和状態となった時、やはりこう言う作品を読むと心が緩和して行き気持ちががマイルドになるんじゃないかな。
ただ、熱き恋愛小説を予期して読まれた方は物足りないかもしれない。
どちらかといえば恋愛と言うより周りの人(性別問わず)に対しての思いやりというか気配りに重点を置いて読まれた方がベターだと思う。

現世では無気力な生活を送っていたさとしが天国に行って一変、本屋の店長代理に就任してコツコツと天国で朗読を聞かせ変化して行く。
さとしの朗読がユイの心を開かせたのは間違いのないところである。
そのさとしの変化というか成長が現世でのありえない夢を成し遂げれたんじゃないかな。
まるで読者に“幸せって自分で掴み取るものですよ!”と天国の神様が教えてくれてるように感じれた。

まさに“大人の絵本”っていう言葉がピッタシである。
本好きにとっては“必読の1冊”といえそうですね。

評価8点  
2004年69冊目 (旧作・再読作品17冊目)  




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