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『太陽の搭』 森見登美彦 (新潮社) - 2004年03月02日(火)

太陽の塔
森見登美彦著

出版社 新潮社
発売日 2003.12
価格  ¥ 1,365(¥ 1,300)
ISBN  410464501X
何かしらの点で彼らは根本的に間違っている。なぜなら私が間違っているはずがないからだ、と宣う、ひねくれた学生の夢想を描く。膨らみきった妄想が京都の街を飛び跳ねる! 第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。 [bk1の内容紹介]

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第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞作である。
でもファンタジー小説というより迷わず“青春小説”のジャンルに分類したい。
“青春っていいものだ!”こういう小説を読むとそれが実感できる。

文章は伊坂幸太郎さんに輪をかけたような個性的というかユニークな文章である。

良く言えば“理路整然”、悪く言えば“理屈っぽい”という形容が相応しい気がする。
文章だけでなく、登場人物も個性的で奇抜な人物のオンパレードである。
常に妄想を抱きながらも現実に背かないで生きている点が読者に訴えかけるのであろう。

現役の京大大学院生らしいリアリティさが売りで、特に京都の地理感のある読者が読まれたら楽しめる事だと思う。

少し難を言えば、枚数が少ない(200ページ余り)のでいいが、これ以上増えれば文体的に鼻につく部分も見受けれる(?)ので読者も疲れるかもしれないなあという懸念はある点かな。

本作はほぼ私小説的なものかもしれない。
素直さに欠ける主人公の森本が、いかに素直な人物であったかがわかるのがポイントである。

内容的には“自分を袖にした”水尾さんの研究と、周りの変わった友人たちのエピソードの描写に終始している。
“クリスマス”に対する執念深い“思い入れ”は若さの特権なんでしょう。

最後に水尾さんに対する深い愛情を感じ取れて本を閉じれた読者は、回り道をしたけどひとかどの“純愛”を体験した喜びを忘れないはずだ。

愛情の深さはインパクトの強い“タイトル名”にも反映されている。

少し創造力が豊かになったような気がするのは気のせいだろうか?
この作家、次作もっと期待して待ちたいですね。

評価8点。    
2004年24冊目 (新作18冊目)


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