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『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂幸太郎 東京創元社 - 2004年02月11日(水)

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ボブ・ディランの曲を聴きながらこの作品を楽しめた方を心の底から羨ましく思う・・・

前作『重力ピエロ』にて直木賞候補にノミネートされ一躍文壇のスターダムにのし上って来た感の強い伊坂さんの最新作であるが、本作ではさらに一層の成長のあとが見受けれる点は嬉しい限りである。

前作は少し展開の読めた部分と、中だるみ感やくどい描写もあったような気もするが、本作においてはウィットに富んだ洒落た会話と構成、ミステリーを読むに当たっての醍醐味を十分に味わえる内容となっている点は高く評価したい。

ズバリ本作のテーマは“熱い友情”。ミステリー部分としてとっても読者を惹きつけた要素として本作の構成の巧さがある。
“現在”と“二年前”を交互にまじえながら展開して行くのであるが読者はきっと物語の序盤から釘付け状態となるであろう。“なぜ本屋を襲撃して広辞苑を盗まなければならなくなったのだろうか!”と言う純粋な疑問を抱いて・・・
どのように2つの話が収束するのだろうかと思いつつ読み進めて行くのであるが、違和感なく伊坂さんに“心地よく騙された”というのが率直な感想である。

読み終えたあと反省したのであるが(苦笑)、会話のひと言ひと言が大きな伏線となっているところである。

やや傍観者的(?)な“現在”の主人公の椎名が少しだけど物語の終盤には成長した姿が見出せるところは微笑ましく感じられた。

あと作品全体の内容として“動物虐待問題”“人種差別問題”についても触れており、読者に強い教訓を示唆してくれたことを感謝したい。
“クールな語り口”でもたらされる“圧巻のラスト”を堪能できた方はまさに“伊坂ワールド”にドップリはまったことの証である。

評価9点。オススメ作品    
2004年15冊目 (新作12冊目)


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