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『重力ピエロ』 伊坂幸太郎 新潮社 - 2003年06月18日(水)

冒頭から衝撃的なフレーズで始まる。
「春が二階から落ちてきた。」

舞台は仙台、異母兄弟の泉水と春と闘病中の父親との3人の親子愛と兄弟愛を描いている。連続放火事件と落書きと遺伝子の謎が結びついた異色作であるがミステリー度はそんなに高くない。

とっても博学な作家だ。巻末の参考文献の数は驚くほど多い。
評価の分かれ目として、遺伝子等の博学な知識を披露している部分を楽しく読めるかどうかがポイントとなっているような気がする。
そう言った面では中だるみもあったような気もする。

物語としての展開自体は読めた部分も多かったがそれを超えた感動と言うのももたらせてくれた作品である。
もっとも読まれた方の大半はそうだと思いますが・・・

文体も重厚さはまったくなくて洒落てて読みやすくそして知識がつく新時代の小説といえそう。
巧妙なフレーズも多用しており既に作者自身のスタイルを完全に確立してるものだと言えよう。
ただミステリーとして期待され読まれた方は肩透かしをくらうかもしれません。
“家族小説”として読まれた方には心地よい感動が待っているといって良いでしょう。
ちょっと胸が痛くかつ熱くなる小説です。

本多孝好さんの書評はこちら

評価8点。


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