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『春風ぞ吹く 代書屋五郎太参る』 宇江佐真理 新潮社 - 2003年07月04日(金)

宇江佐真理の時代小説は本当に読みやすい。
本作は男性主人公の武家物の人情話が綴られている。
内容は恋愛小説に青春小説をミックスしたような作品に仕上がっている。
他の宇江佐さんの作品と比べて、ほのぼの度においては飛びぬけているような気がする。

要因はズバリ主人公五郎太の性格に尽きる。とっても心優しい。
主人公のキャラがいいから、周りを取り巻く人々もとってもいい。

生活苦のために代書屋の内職をするかたわら、大好きな紀乃との結婚を果たすために必死に学問に励む五郎太が微笑ましい。
たまに喧嘩をするシーンなんかも上手く織り交ぜていて適度にやきもきさせてくれるところも心憎い。

代書に持ち込まれる騒動は1篇1篇人情味のある話が語られ連作短篇集ならではの特徴が出ていて作品全体としても機能している。
特に五郎太の師匠や恩師達(二階堂秀遠・橘和多利・大沢紫舟)の過去にまつわる話はどれも泣ける話となっている。
個人的なベストは「千もの言葉より」かなあ。

あえてファンとして苦言を呈すれば、最終編がちょっと書き急がれたような気がしてならない。
でもとにかく爽やかで暖かい作品なのは間違いない。

江戸時代の受験の実態もわかり、現代と同じく大変だったのだなあとちょっぴり切ない気分にもなりました。
女性の方、読まれて主人公に惚れてください。

評価8点。

宇江佐さん著作リスト《こちら》


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