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『アンクルトムズ・ケビンの幽霊』 池永陽 角川書店 - 2003年05月23日(金)

鋳物工場に長年働く西原は工場内における不当なタイ人に対する扱いに直面しながら、自分自身の過去の初恋相手への過ちを思い出していくのであった・・・
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ひとりの男として主人公の葛藤はよくわかります。
人種差別を題材としていて題材的にちょっと重めですが『コンビニ・ララバイ』とともに作者の代表作のひとつとして数えられる秀作であると思う。

特に『三たびの海峡』をお気に入りの方なんかにはいいと思う。
感動度では落ちるかもしれないが、現実に起こりえてる話なんで読者においては本作の方が身近に感じる事は間違いなし。
タイ人やフウコ、あるいはスーイン。外人がすべて純粋な人物として描かれているのでやはり日本人に対する警告的な意味合いも多く持ってそうな話ですね。

あと、ひとりの男の再生物語としても読ませてくれます。
男性読者はこちらの視点で読まれることが自然と多いと思われます。
社長からのタイ人に対する不法就労の入管への通報を引き伸ばしつつ自分の過去を顧みて行きます。

家庭内においても、今まで妻や息子になんとなく引け目を感じて生きてきた西原が、自分を取り戻して行きます。
彼がちょっと頼りないところが良いのですよね(笑)

全体を通して、私も主人公と同じように良心と葛藤しながら読み進めれました。
読者は誰もがきっとスーインは幸せに生きていると信じて本を閉じてることでしょう。

評価9点。オススメ




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