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『ジョッキー』 松樹剛史 集英社 - 2003年04月28日(月)

第14回小説すばる新人賞受賞作です。
主人公中島八弥は腕は悪くはないのだが、要領が悪い為に成績は三流ジョッキーに成り下がっている。ある事情があって厩舎に所属しないフリージョッキーとなった為に騎乗依頼がないとたちまち生活苦になってしまうのであった・・・

とってもリアルに競馬の世界を描いている。たとえば馬主と調教師あるいは騎手との関係。結構現実は弱肉強食の世界なんだなあということが本書を読めばわかります。
競馬に関する知識があるかないかで理解度が全然違ったものとなってくるでしょうが、知らない人でもそれなりに楽しめます。

主人公の再生物語といっていい本書は読後感がとっても爽やかな小説だと言える。とにかく人間臭くって好感持てる。きっと自分に置き換えて読むことも出来るでしょうね。失踪した先輩騎手を心に引きずって生きている点なんか特に共感できました。
あと何頭か出てくる馬がそれぞれ個性的で楽しませてくれる。レースのシーンなんか自分が騎手になりきった感覚にさせてくれるほどリアルです。
競馬好きな方だったら“あの馬のローテーションはきつい!とか、距離適性はどうだ!とか、追い出しのタイミングが早い!とか”を感じながら読めると思う。

読み終えたあと、競馬の世界ってある意味で資本主義世界の縮図なんだなあとつくづく思いました。
恋愛感情も(3人ほど恋人対象となる女性が出てきますが)少しほろ苦くって却ってよかったです。

評価8点。


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