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『舞姫通信』 重松清 新潮文庫 - 2003年04月16日(水)

重松清は読者にいろんなことを教えてくれる。
本作では『生きる事の意義』を敢えて“自殺”というテーマを引き合いにして浮き彫りにしている。
なんといっても太文字で表示されてる“舞姫通信”が心に残る。読み終えた後、第13号まで読み返してみた(笑)
作者の心の叫びだと受け取った。
『きよしこ』が作者の小さい頃の自伝的小説のように、この物語の古文の教師である岸田宏海、まるで重松さんの代弁者のようだ。
舞姫と同じように理由もなく過去に双子の兄を自殺で失った主人公。同僚の教師のように“舞姫通信”を非難できない。宏海の心の葛藤の描写が胸打つ!舞姫通信の回収率が徐々に落ちてくる・・・そして佐智子の妊娠。


いろんな苦しい状況の人々が出てきます。自殺志願を売りにするアイドル城真吾、舞姫の親友だった娘である慶子を持つ教師の原島、実家に死を目前にした父を持つ同僚の坂本、宏海の子供を身ごもってしまう佐智子・・・

ちょっと踏み込みが甘いような気もするが、とっても丁寧に書かれた作品だと思った。読む人それぞれに受け取り方を委ねているような気がする。特に若い方が読まれたら城真吾に対するシーン、熱くなって読むことが出来たでしょう。
主人公が成長して行く過程を味わう事が出来ました。

重松さんの第4作目にあたる本作ですが、第7作目の『定年ゴジラ』あたりから作風がエンターテイメント度が増して来てるような気がします。そう言った意味でも、『幼な子われらに生まれ』と共に 重松さんの原点ともいうべき位置づけの意欲作だと捉えてます。

評価8点。



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