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| 2003年01月28日(火) |
3.おもいで、くもりぞら。 |
「…手塚君、どうかしましたか?」
思い出の中の大和の顔は、いつも自分の目線より高い位置にある。卒業して以来会っていないから、今はどうなのかわからない。 その日は薄曇りで、なんだか空気までぼんやりしていたように、手塚は記憶している。 卒業式を終え、テニス部員達との挨拶もすんで、帰ろうとしているその背中を手塚は引き止めた。その時は自分の事で精一杯だったから気が付かなかったが、卒業式の後だと言うのに、なぜか大和はひとりだった。 「大和部長」 「もう、僕は部長ではありませんよ、手塚君」 大和はそう言って笑った。相変わらず無精髭を生やし、薄く色の付いた不思議な眼鏡をかけている。すでに詰襟はゆるめられ、だらしのない格好になっていた。卒業式の日くらい髭を剃ればいいのにと手塚は思ったが、でもとても大和らしい気がした。 「僕に何かお話ですか」 そういえばさっきは全然話せませんでしたものねえと穏やかに大和は続け、手にした黒い筒でポンと自分の肩を叩いた。大和は、卒業証書以外何も持っていない。 その場所がどこだったか、手塚は明確に思い出せない。ただ、まわりに他の人間がまったくいなかったし、随分と静かだったから、校舎の裏か部室の脇か、そのあたりではなかったかと思う。手塚の記憶の中にあるのはただ大和と、薄曇りの空と、そして桜だけだ。 手塚は、じっと大和を見上げたまま、しばらく黙っていた。 そして、 「俺、部長のことが好きです」 おもむろに、言った。 何も、考えていなかった。 何も考えられず、ただ、言う事しかできなかった。 「手塚君」 「部長のことが好きです」 もう一度言った。その間も、手塚は大和を見つめたまま目線をそらさなかった。手は震えていたが、ぎゅっと握りしめていた。
大和の表情は、まるで変わらなかった。 「…そうですか」 驚きもせず、慌てもせず、ただそれだけを言った。
なんて残酷な人だろうと思った。
------------------------------------ 手塚は自分自身の事はあまり深く考えずに行動してしまう子だと思う。 それできっと、すごく我侭な子だと思うよ。
hidali
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