selenographic map
DiaryINDEX|past|will
音を聞いていないと不安になる。誰もいない世界の静寂が己を圧し殺してしまう。人はこんなにも溢れているのに、己の唯一人を見つけることはどうしてこんなにも難しいのだろう。そもそも己の唯一人など存在しているのだろうか。
[独りであるということに慣れておくことは必要]だと貴方は云う。 独りでいることに慣れていたのだ、ほんの少し前までは。今まで独りでいることの方が多かった。それが普通で、常だった。それでいいと思っていた。 でも己は出会ってしまった。出会って今度は人が傍にいてくれることが当然になって、それに慣れてしまった。そして不安に怯える。壊れてしまうことなんて知っているから、幸福の数だけため息を数えた。 いつも束の間に幸福だから、いつ捨てられるかと怯えている。捨て駒としての価値しか己には無いということを散々思い知らされて生きてきた。卑下しているのではない。そうやって他人から見られているということに気付いただけだ。もう十年近く前から、そう思い知らされてきた。 独りの寂しさを忘れているわけではない。忘れられるはずがない。今誰かを求めるのは、誰かを求めれば仮初めでも手が差し伸べられるから。ただそれだけの理由から。
過去の過ちを思い出させないで呉れ。己は愚かで生きている価値さえないのだから、そんな事云われなくたって分かっているから。これ以上追い詰めないで呉れ。今はもうきっと忘れてしまっているだろうに、記録されたものはどうしてこんなにも強いのだろう。 どうしていつまでも記憶に残って消えないのは幸福な記憶ではないのだろう。
|