さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2003年03月06日(木) にゃん氏物語 紅葉賀02

光にゃん氏訳 源氏物語 紅葉賀02

源氏が悲しんで帰っていくことが度々目に付けば 邸の人々も
不審に思ってしまうので宮は心配で王命婦を昔ほど可愛がらない
人目に立ってしまうので何も言うことはなかったが源氏に味方する
者として宮は王命婦を憎むこともあるらしいので命婦は悲しく思う
王命婦は意外なことになるものだと嘆いていた

四月に若宮は母宮と宮中に入る 若宮は普通の赤子よりとても大きく
もう子供らしくなっていた この頃は体を起すよう寝返りもしていた
ごまかす事のできないような若宮の顔つきだが 帝は思いもよらず
優れた子は似るものだと思ったようで新皇子をとても大切にした

源氏の君をとても愛していたのに東宮にたてることは非難を受ける
のを恐れて実現できなかったのを帝はいつも一生の後悔に感じている
源氏が成長するにつれて以前にもまして王者らしい風格がそなわって
いくのを見ると心苦しくて堪えられない そう思っていたがこんな
身分の高い女御から同じような美しい皇子が生まれたので これこそ
欠点のない宝子だと可愛がる それを藤壷の宮は苦痛に思っていた

源氏が音楽遊びに参加している時に帝は抱いてきて
「私には子供がたくさんいるが お前を小さい頃からよく毎日見た
だから同じように見えるのか よく似ている気がする小さいうちは皆
こう見えるのだろうか」と言ってとても可愛がっている様子だった
源氏は顔色も変わる気がして 恐ろしいがもったいなくて嬉しくて
身にしみて複雑な気持ちで涙がこぼれそうになった
喋ろうとして口を動かす様子がとても美しく見えたから この顔に
似ていると言われるのは光栄だとも思った
宮はあまりの心苦しさに汗を流していた 源氏は若宮を見ると予想も
しない思いに心乱されるので苦しく思って退出した

源氏は二条の院の東の対に帰って 気持ちを落ち着けてから後に
左大臣家に行こうと思った 前庭の植え込みの中に何となく青く
なっている所に目立つ色で咲いていた撫子を折り それを添えた
長い手紙を王命婦に書いた

よそへつつ見るに心も慰まで露けさまさる撫子の花
思いをそらしながら見ているけれど心の気分を紛らすことはできず
涙を強く流させる愛しい撫子の花
花を子のように思って愛することは不可能とわかりました
とも書いてあった
誰も来ない隙に命婦は宮に見せて
「つゆほどの返事を… この花びらに書くほどつゆばかりの」
と申し上げる 宮もしみじみ想って悲しい時であった

袖濡るる露のゆかりと思ふにもなおうとまれぬやまと撫子
袖を濡らす方のゆかりの縁だと思うにつけても
そうは言っても疎ましくなる愛しい大和撫子
ただそれだけわずかに書き留めたように書いた紙を喜んで命婦は
源氏へ届けた
いつものように返事はないものと思って涙を落としていた所に
藤壷の宮から返事が届けられた 源氏は胸いっぱいになってとても
嬉しい事でも涙を落とした

物思いをしながらじっと寝ている事に堪えかねていつもの慰め場の
西の対に行った

少し寝乱れた髪もそのままに部屋着のうちかけ姿で笛を親しみ深く
吹きながら座敷を見ると紫の女王は撫子が露に濡れたように可憐に
横になっていた とても可愛い 溢れる愛嬌で 帰宅してもすぐ
来ない源氏を恨めしそうに向こうを向いてすねていた
源氏が座敷の端の方に座って『こちらへ来なさい』
と言っても知らん顔をしている

「入りぬる磯の草なれや」と口ずさんで
(潮満てば入りぬる磯の草なれや見らく恋ふらくの多き
私は潮が満ちると海の中に隠れてしまう磯の藻なのだろうか
貴方を見る事は少なくて恋しく思う事ばかり多いのです)
袖を口元にあてているのが可愛くて賢く見える
『ああ憎らしい そのような歌を口ずさむようになりましたか
いつも見ていないといけないなんて思うのはよくないです』
と言って源氏は琴を女房に取り出させて紫の君に弾かせようとする


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