さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2003年01月25日(土) にゃん氏物語 末摘花12

光にゃん氏訳 源氏物語 末摘花12

中門の車寄せ場は曲がって傾いていた 夜と朝は荒廃の具合が違って
見える どこも見えるものは寂しくたまらないが 松の木だけ暖かそうに
雪が積もっていた 田舎風の身に染む景色だと源氏は感じながら
品定めを思い出す こんな家に可憐な恋人を置いていつもその人を思って
いたい その事で想ってはいけない人への恋の苦しみは慰められるだろう

あの人は叙情的な状態にいるが 何も男をひきつける魅力の無い女だ
そう断言しても自分以外の男は あの人をずっと妻として置いておくことは
できないだろう 自分があの人と一緒になったのも気にかかった故親王の
たましいが導いたことだと思った

埋まった橘の木の雪を随身に払わせた時 隣の松の木が羨ましそうに
自分で跳ね起きて雪をささっとこぼした そんなに教養が無くてもこんな時
風流を言葉で言ってくれる人が一人でもいないだろうかと源氏は思った

車の通る門はまだ開けていなかったので お供に鍵を開けてもらうように
行かせると とても老人の召使が出てきて その後を娘か孫かまだ大人で
ない女が真白い雪と対照的に薄汚れた着物で 寒そうに何か小さい物に
火を入れて 袖で覆うようにして持っていた 門は老人の手では開かずに
娘が手伝った 源氏のお供が手伝ってやっと扉が開いた

ふりにける頭の雪を見る人も劣らずぬらす朝の袖かな
老人の白髪頭に雪が積もりそれを見ると悲しくてその人と同じかそれ以上
今日は涙で濡れる朝の袖だなあ と歌い『霰雪白粉粉 幼者形不蔽』
(幼い者は着る着物もなく)と吟じながら 白楽天のその詩の終わりの
句に鼻の事が言ってあるのを思い出し源氏は微笑んだ

頭中将が自分のあの新婦を見たらどんな批評をするだろう何の比喩をする
だろう 自分の行動に目を光らせている人だから いずれこの関係が気づく
そう考えると心が救われない気がした

女王が普通の容貌なら いつでもその人から離れて行くことは容易だった
だがそうでない姿をはっきり見てから かえって可哀想で良人らしく援助を
いろいろしてやるようになった クロテンの毛皮ではなく 絹や綾や綿など
老いた女たちの着る服 門番の老人のための物まで贈った
こんなことは自尊心のある女にはたえられない事だが常陸の宮の姫君は
素直に喜んで受ける それで安心して源氏はそういう世話をもっとして
やりたいと思い生活費なども後に与えた


さくら猫にゃん 今日のはどう?

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