さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2003年01月18日(土) にゃん氏物語 末摘花07

光にゃん氏訳 源氏物語 末摘花07

男の方は もともとの美貌を今夜はお忍びで目立たないよう化粧をして
なんとも艶に見える 風流の解かる者などいない粗末な所なのにと
命婦は気の毒に思う 女王がただおっとりとしている事が間違いはなく
会話で出過ぎた真似をみせないだろうと安心に思っている 自分が責任
逃れをしたので気の毒な女王をより不幸にしないかと不安は残っている

源氏は相手の身柄を尊敬して しゃれた今どきの風流女より気が抜ける
くらいおおらかな感じがよいと思っていた 襖の向こうで女房たちに
勧められ少しにじり寄ってくる時に 微かな衣被香のかおりがしたので
自分の想像は間違っていないと思う 長い間思い続けた恋だと上手く
話しても 手紙の返事をしない人は口の返事もしない
『どうすればいいのだ』源氏は溜息する

『いくそ度君がしじまにまけぬならん物な云ひそと云はぬ頼みに
何度貴方の沈黙に負けて話しかけただろう 貴方が物を言うなと言って
くれないかを頼みにして…言ってくれませんか 私の恋を受けるのか
受けないのかを』 女王の乳母の娘で侍従と言う才気な若い女房が
見るに見かねて女王のそばへ寄り 返事をした

鐘つきてとぢこめんことはさすがにて答へまうきぞかつはあやなき
鐘を鳴らして貴方の言葉を止めてしまう様に貴方の話をお断りする事は
やはりできない と言って返事ができないのはわけが解からないのです
若々しい声で重々しく物の言えない者が代返したようにみえないので
源氏は貴女としては馴れ馴れしいなと思ったが初めての返事が嬉しくて

『こちらがなにも言えなくなります
云はぬをも云ふに勝ると知りながら押しこめたるは苦しかりけり』
何も言わないのは口に出すより価値があると思うが おし黙って心の
中だけにおさめているのは私にはせつない事でした

それから色々と取りとめない事を誘うように真面目に源氏は語り続けた
しかしあの歌だけで他の返辞はなかった こんな態度を男性にとるのは
何か特別の考えがあるのだろうかと思い 源氏は軽蔑されてるようで
悔しかった そして源氏は襖を開けて入ってしまった

命婦はうっかり油断した事で女王を気の毒に思い そこにいられなくて
知らぬ顔で自分の部屋へ帰った 侍従と言う若い女房は光源氏なので
女王をかばう力もない こんな心構えなく関係してしまう女王に同情
するだけであった 女王はただ恥ずかしさの中にいた 源氏は結婚の
はじめはこうなのがいい 独りで長く大切に育てられた女はこんな
ものだと事情を解かってあげる だけど女に納得しない点があった
これ以上愛情が惹かれる所はなかった がっかりしながらまだ夜が
明けないうちに帰ろうとした(理由は後ほど解かりますにゃん)
命婦はどうなったか心配で眠れず 物音も知っていたが黙っていて
「お見送りします」の挨拶もない 源氏は静かに門を出て行った


さくら猫にゃん 今日のはどう?

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