「失われた10年」・・・いろいろなところで使われています。日本ではバブル崩壊後処理できない不良債権を背負い停滞する経済を指しています。これは10年では済まないでしょう。
スリランカでは、10年前の今日、当時の大統領「プレマダーサ」がメイデー行進の最中に銃弾に倒れました。今日はその10回目の命日です。その後、政治は混迷し、民族紛争の泥沼化して、この10年間はスリランカ国民に大きな停滞を与えてしまったのです。
「プレマダーサ」は何を考えていたか。それは発展途上国の「貧困」問題です。彼の最も重要な政策は「住宅政策」であったのです。彼は国内に多くの住宅地を造成し、貧しい人達に生活の基盤を与えました。先進国においても投資の重要な要素は「住宅建設」です。住宅建設は森林伐採、土地開発、土木作業、住宅建設、電気ガス水道のインフラ整備等の需要を喚起します。そして多くの様々な雇用を生み出します。彼は並行して農業用地を整備し地方の産業振興を図りました。こうした活動を通して、地方に労働需要を起こし、貧しい人達に基本的なインフラ設備を供給したのでした。
彼は、民族対立問題、発展途上国の主要課題を正確に把握していました。「貧困対策」に加えて「教育問題」にも腐心し、初等教育を充実させ、次代を担う子供たちに夢と希望を与えたのです。
その後の10年がどうであったか。今はどうなのか。直視することがつらいです。政府の経済政策は外資導入・経済の自由化です。確かに我がNTTを初め、Shellとか、マレーシアの会社とかが投資を行い、基本的なインフラ整備は進んでいます。しかし、政府が外資導入と同時に外資と約束したことは「料金の値上げ」なのです。相当の賃上げ(インフレ)がない限り、一般庶民はそうした恩恵を受けることはできないのです。外資導入が成功するには、それと歩調をあわせた着実な「貧困」の解消がない限り貴重な「富」は海外に流出するだけです。
石油とか金が採掘されれば別ですが、そうでない限り基本的に農業政策をしっかり確立し、地方の貧困問題を解決することが大切だと思います。IT産業振興とか、金融ハブなどの夢はありますが、まず足元を固める必要があります。教育問題はさらに深刻です。子供の将来を考える人達は無理して、一部の有名学校に進学させます。しかし大学教育は停滞しています。さらに大学を出ても職はありません。10年前から全体の識字率があがっているとは思えません。
その意味で、今こそ「プレマダーサ」大統領の政策に立ち戻る必要があります。特にスリランカ北部の貧困対策は深刻です。この解決がない限り、民族紛争の再燃は避けられません。
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