ゼロの視点
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2009年11月19日(木) 世紀の女優対決!!

 ばーさんこと姑から、意外な小遣いをもらってしまった私たち。ある意味、これでばーさんは私たちを買収したつもりだったのかもしれない。というか、ま、絶対にそうだったのだろう。

 3週間も長いことパリに留まり続けた大型台風・ばーさんだが、その期間、夫と私がばーさんについて喧嘩することもなく、ばーさんと夫、あるいはばーさんと私が喧嘩することもなく実に、気味が悪いほど順調にことが進んでいたときのことだった。

 ばーさんが勝手に選んだレンヌへ戻るためのTGVチケットなのだが、これに乗るために、ばーさんに付き添ってモンパルナス駅まで、誰も行けないことが発覚。夫は仕事、私ははずせない用件、夫の弟の息子たち、つまりは孫連中は学校、もちろん夫の弟は国際会議、彼の妻も仕事と、皆それぞれの日常生活であっぷあっぷ。

 その瞬間、ばーさんの悲劇のヒロインモード&暴君ネロボタンにスイッチが入った。《誰も私のことなんかどうでもいいのね!》という定型句にはじまり、《私はいつもあなたたちがレンヌ駅に到着する時間にあわせて、クルマで迎えにいってあげているのに》という、親切押し売り的文句。いやあ、別に歩いていってもたいした距離じゃないから迎えはいらないのに・・・・、と何度もいってるのに、だ。

 自分で選んだTGVチケットだというのに、《だからこの時間帯をみながわざと私に薦めたの?!?!!》というわけのわからん妄想まで出現。で、延々といかに自分が皆を愛し、親切でいるのに対し、誰もその恩に報いることなく、エゴイストばかりと、大げさな身振り手振りと同時に叫びまくっているばーさん。

 パリに来るたびに、連日コメディーフランセーズに足繁く通い、演劇を鑑賞しまくっているばーさんだが、まるでばーさん自身が往年の、底意地悪い約をやらせたら右に出るものはいない女優になったかのよう・・・・・。

 こんなにエゴイストな人ばかりに囲まれた状況を、私は本当に悲しいと思う・・・などと、延々と行っているばーさんの口をふさぎたくなってきた私は、その《悲しい》という言葉を使って、応戦することにした。ばーさんのくそ演技自体に巻き込まれること自体がイヤだったのだが、そんなことにこだわってはいられない、というわけだ。

 《悲しい、悲しいとおっしゃいますがねぇ、わたしゃ、あなたが自分の都合ばかり言って、他人のことをわかろうとしないことが悲しいっすよ、いや、本当に悲しい、ああああああ、なんて悲しいんだ、いや、悲しいというより、まことにもって遺憾だ・・・と形容したほうがいいのかもしれません・・・・・!!!!!》と、ばーさんに負けず劣らず、突如女優モードに入った私。

 《他者のやむにやまれぬ立場を省みず、また、その他者があなたの意に沿うことができないことを、あなたの想像以上の罪悪感を持って苦しんでいることを、わかっていらっしゃらないなんて、ああ、これぞ本当の悲劇です・・・・》

 《そうして、皆の愛を無碍にしながら、愛が得られないと嘆き悲しむことだけに終始されてしまうあなたを、私はそれでも愛しますが、その想いがまったくあなたに届かないこと・・・・、これが悲しいという言葉で表現できないほど辛く切ないのです・・・・》

 ・・・・・と、おいおいゼロ、ちょっと女優やりすぎてんじゃないの?、って、友人らがいたら即座に突っ込まれてそうな、くさーーいせりふを流暢に姑相手に話していた時に、奇跡が起こってしまった!。今回は、面と向かってきつーく言い返すという従来のやり方をかえて、ばーさん以上の嘆き悲しみで出てみた結果だったのだが、このばーさんの口から、次の言葉が出てきたのだ!。



 《私、ちょっと言い過ぎちゃったわ・・・・・、本当にごめんなさい・・・・》



 えええええええええええええええええ?!?!?!?!?、ばーーーさんの口から、こめんなさぁぁぁぁあああああああああいぃぃぃぃぃぃいいいいいいっ?!?!?!?!?!?。ひえーーーーーー、すっげーーーー、おったまげーーーーなどと、心ではお祭り騒ぎになっていた私だったが、そんなことは表情に出さず、相変わらず女優モードで、こんなばーさんの肩を抱いて《いやいや、私のほうこそ、本当に駅に一緒に行けなくてごめんなさい》なんて続けてしまった、わはは。

 どっちがどこまでたぬきなのかはわからぬが、ま、とりあえず、本日のところはめでたしめでたし。一件落着させた私は、大急ぎで知人たちとの待ち合わせ場所に、全力疾走・・・・・・・・・・・・・・・・・、ああ、マジで疲れた!。


 

 


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