英国留学生活

2003年11月14日(金) 禁色

と言っても、三島のことではない。
今日は、ローマのテキスタイルの授業だった。
ローマのトーガは、3.5m〜4m(前期から後期)なのか。
絹ならともかく、ウールだとかなり重かっただろう。
ナズグルの長衣は、7メートルだったっけ?

ローマ帝国が始めて、服飾で位階をあらわすことにしたらしい。
古代紫、フェニキア紫といわれる染料が、
ローマにおいては皇族以外には禁色だったが、
位階を表してはいないものの、古代ギリシャにおいても特殊な色だったと思う。
(日本でもそうだけど。聖徳太子の冠位十二階の最上位だった筈。)
トロイア戦争のギリシャ側の総大将アガメムノンは、
戦争終結後、ミュケナイに戻り彼は妻のクリュタイムネストラと
その情夫アイギストスに殺害されるのだが、
殺される前のシーンで紫染めの布が出てくる。
それを踏んで神々の怒りを買うことを怖れるアガメムノンを
クリュタイムネストラが唆して、結局踏ませてしまうのだが、
それが彼の死を暗示している。(巻き込まれたカッサンドラは気の毒だ。)
そこで歌唱隊の「死すべき人の子の身で、紫染めを踏むことは許されぬ」
とかいう歌が、印象的だった。

その続編と言うか、彼らの子供たちエレクトラとオレステスが、父を殺された
報復の為に母を殺すという話で、エレクトラにコロスが
「クロノスは心優しき神ですもの、癒せぬ傷も時が癒してくれましょう。」
とかいう歌詞が好きだった。(好きな割にうろ覚えだが。)
この歌詞が出てくるのは確かソフォクレス作の方だったと思う。
クロノスというと、子殺しの神のイメージが強いから。
ただ、普通子供たちを飲み込んだことになっていて、
フランシス・ゴヤの「子供を食らうサトゥルヌス」のように食いちぎっていたら、
いくら神でも復活できんじゃろうと思う。

クリュタイムネストラは、トロイア戦争で娘イフェゲネイアを生贄として
アガメムノンに殺されたことを恨み、夫を殺し、
その娘エレクトラと息子オレステスは、父の復讐の為に父の従兄弟
アイギストスと母クリュタイムネストラを殺す。この近親の争いは、
一応呪いというか、因縁の賜物なのだが。
子供らは冥府の女神へカーテの僕、復讐の女神エリニュスに追われるが、
彼らの処遇は、神々の投票で決まることになり、母を知らぬアテナとアポロン
が彼らに味方して、死刑を免れる。
この伝説には、ミュケナイの母系制(多分母権制ではない)から、
アポロンに代表される男性中心社会への移行があるといわれていて、面白い。

トロイア戦争は、史実的には勿論ヘレネとパリスのバカップルが原因ではなくて、
当時のギリシャ世界より遥かに豊かだった、東方との貿易をトロイの地理的
優位性によって独占していたのを、ギリシャ小国家群が奪取しようとしたため、
と言われていて、十字軍の影にヴェネツィア、ジェノヴァの商人がいたことを
彷彿とさせてこれも面白い。

ところで、ネット環境が悪くて、映画『トロイ』の予告が、
コマ送り&顔は紗が掛かっている状態でしか見られない。
が、ちょっとあの船団のCG不安だなあ。うーん。
出演者のギャラ高そうだもんなあ。
ヘレネは美人さんっぽいけど、余りそこに焦点当てなくて良い、と思う。
あ、ヘレネの娘のヘルミオネは、オレステスとアキレウスの息子、
ネオプトレモスと結婚するんだったな。
ハリーポッターのハーマイオニの語源はここだろうけど、
彼女も母親ほどじゃなくても、結構はた迷惑な人だと思うんだよね・・・。


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