2004年01月11日(日)

愛されたい


去年の今頃、
BAZRAの「叱ってリーゼ」をリピートで何時間も聴き続けていた。
毎日毎日、2ヶ月は聴いていたけれど、
不思議と飽きなかった。
学校にいる間は、早く帰って聴きたいとずっと思っていた。
「叱ってリーゼ」を聴くことでだけ、
私は無になれた。
無にならなかったら次の日学校へ行けなかった。
おかしかったんだ、あの頃は。

一人ぼっちだと寂しくて死んでしまうのではなく、
愛されている自信がないと寂しくて死んでしまうのだ。
うさぎも、人間も。

両親の目はいつだって兄に向いてきていた。
小さい頃からずっと感じていた不安は
異母兄弟だと告白されたあの夜にはっきりとした。

ママは偉い。
自分と血の繋がっていない兄を、
私と変わらぬ愛情を注いで育てた。
孫より自分を優先する祖母から私と兄を掴んで離さなかった。

14歳のあの夏まで、兄と母親が違うなんて知らなかった。
本物の兄弟と疑うことなく育ってきた。
いや、お母さんが違ったって、本物の兄弟だけど。
あの時だって今だってそれは変わらなくて、
これからだって私と兄は本物の兄弟。

だけど、不安はずっとずっと前からあったんだ。

本当に変わらぬ愛情だったのか?

小さい頃から私は頑張っていた。
いい子でいなくては、ママが振り向いてくれない。
パパも振り向いてくれない。
兄は何もしなくたってママがずっと見てくれているけれど、
私はいい子でいなくっちゃママが見てくれないの。
勉強が出来ればいい子になれると信じていた。
大人が自分を見てくれる、とも信じていた。
頑張りがそのまま反映される勉強は楽しかった。
どんどん上がっていく成績。
成績表の結果がクラスで二番になった。
「すごいね」
ママは言ってくれた。
目線は兄のままで。

愛されているという印が欲しかった。
褒められることが愛されている証だという間違いを
見てみぬフリをして過ごしてきた。

高校一年生が楽しかったのは、彼女に出会ったから。
彼女の中に、私のスペースが自然に出来たから。
やっとやっと見つけた、愛されている自信。
この人となら、自分が自分でいられる。
飾らないでいい。
お互いの中に居場所がある安堵。
隣にいてくれる安心感。
大丈夫、彼女は絶対自分を裏切らない。

夏休みを過ぎておかしくなり始めたのは
彼女の隣にいるのが自分ではなくなったから。
つまらない嫉妬。
それでも彼女は私の手を握ってくれていた。

二年生になって、彼女の隣には素敵な友人がいた。
どちらから寄り添うこともなく、気が合うから一緒にいる。
二人のことが大好きだったけれど、
二人でいるのを見るのは大嫌いだった。

彼女の隣にいるのはどうして自分じゃないのだろう?

力尽くで引き寄せてどうして上手くいく?
そんなことしたくなかったし、出来なかった。
力尽くで引き寄せた彼女は、たぶん笑顔を見せないはずだから。
やっと見つけた安らぎの場所は、再び失われた。

家に帰ったって両親の関心は専ら兄で。
あの頃は大学進学関係があって、余計に。
父は体調を崩していたし、母の機嫌もよくなかった。
勉強以外の過ごし方を教えてくれた彼女は隣にいなかったし、
一人で部屋に閉じこもって無になる儀式を繰り返すことで、
自分の存在を確かめた。
本もよく読んだ。
とにかく、忘れたかった。日常の一切を。

今年一年がそんな不安を感じることなく過ごせたのは、
兄が一人暮らしを始め、
両親の関心はまるきり私のことでいっぱいになったから。
ママが、私を気にかけるようになったから。

誰かに愛されていないと不安なの。
自分が生まれてきたのは、ママとパパが夫婦でいる為。
ママが出て行ったら兄は母親に二度捨てられたことになる、って
いつかママが言ってた。
自分が生まれてきた理由なんて考えたくない。
何かの為だなんて思いたくない。
兄と母を結びつける接着剤の役割の為だけに生まれてきたなんて
そんなこと思いたくない。

愛されたい。
誰でもよかった。
誰かに愛されたかった。
だけど離れていくのが怖くって、裏切られるのが怖くって、
自分から突き放した。
突き放したって、好きだって言って欲しかった。

ずっと、ママに愛されてるって言う自信が欲しかった。
臆病だから、何度も線を引こうとした。
だけど、引ききれなかった。
ママをどうでもいいだなんて思えなかった。
たった一人しかいない母親だもん。

18年間生きてきて、こんなに幸せなのは初めてかもしれない。
両親の関心が自分に向いている幸せ。
この人たちの子どもなんだっていう幸せ。
大学に入って、また兄と同じ土俵に立ったら、
また愛情の比は兄に傾くかもしれない。
だけど、たぶんもう大丈夫だ。
両親はちゃんと愛してくれてる。
そう自信がもてただけでも、すごく幸せだ。

だけどあと少しだけ、甘えていようと思う。




過去  日記一覧  未来

 アイタタタ日記宣言

 メールフォーム / love letter