のんびりKennyの「きまぐれコラム」
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2005年02月03日(木)  「Goodbye Johnny 」

   NBCで Tonight Show を30年にわたり続けた
ジョニーカーソン氏が先週亡くなりました。
79歳でした。


   70年代に米国に住み着いた私にとって、テレビで毎晩見る
彼のショウはいろいろな意味で忘れがたいものでした。

その中でも「英語力」ということについて、
彼のショウを通じて私は多くのことを学びました。

学生時代、私は英語に若干自信がありました。
それが、ヨーロッパと米国への長期放浪旅行を通じて
実はまったく使い物にならない低いレベルだと思い知らされ、
日本に戻って総合商社のサラリーマンとなってからは
ビジネス英語の達人を目指してかなり一生懸命勉強した記憶があります。

そしてカリフォルニアの大学院留学と脱サラ起業、
国際結婚で始まる紆余曲折波乱万丈の米国暮らしとなり、
英語との長い格闘の歴史が英語の現場で再スタートしました。


英語を生活言語として使用する場合、

「読む」「書く」「話す」「聞く」の4つの難易度は
どういう順番だと思いますか?

私の経験では、まず「読む」が1番はいりやすいですね。
特に日本人の場合はリーディング偏重の学校教育と
受験勉強のせいもあり、「読む」力は皆そこそこにあるようです。

2番目は「聞く」でしょう。 3番目が「話す」、
そして最も難しいのが「書く」です。

特に「説得力のある良い英語を簡潔かつ知的に書く」という能力は
米国人の中でも大きく個人差の出る極めて難易度の高い行為です。

一方観光客の皆さんなどからよく耳にする言で
「相手の言っていることはわかるのですが、
こちらから話すことが出来ない。 英会話はむずかしい。」
というものがあります。

本当にそうなのでしょうか?

私は違うと思います。

米国に移民してきた外国人が、英語を生活言語として
暮らし始めた時、ある程度の時間がすぎると
急速に英語に慣れてくる時期があります。

これは何によるものかといいますと、
毎日見たり聞いたりするテレビやラジオの放送に慣れてくる。
つまりリスニング能力が高まってくる時期と一致しているのです。

つまり、英語が話せない人の最大のネックは
構文力や発音の仕方などというもののまえに、
滝のように浴びせられる周囲からのスピーディな英語が
実は正確に聞き取れていないことにあります。

この「相手の英語を正確に聞き取る」という力が伸び始めた時、
その人の英語力は大きな壁を破って格段に向上します。

最近では日本でもケーブルテレビで英語放送が
常時見れるようになったと聞いています。
真剣に英語をマスターしたいと考えておられる方には
恵まれた環境だと思います。
私の時代にはFENしかありませんでした。

では、英語のテレビ放送の中で一番わかりやすいのは
どんな番組だと思いますか?

私の経験では、1番わかりやすいのは「天気予報」です。

次がスポーツ中継、

その次がストーリーのはっきりしている「映画」、

そして難しくなってくるのが「ニュース」、

さらに難しいのが「討論番組」という順番でしょう。

そして、最も難解でネイティブと同じかそれ以上の英語力、
時事精通、インテリジェンス、ユーモア感覚、と4拍子揃わないと
とてもついていけないのが、
「スタンディングコメディー&トークショウ」です。

はじめに書いたジョニーカーソン氏の深夜のショウは
日々の米国の最新の動きをジョークと皮肉たっぷりに
早口でまくし立てるのが常で、
なまはんかな英語力ではとても皆と一緒には笑えません。

米国のトークショウには「笑い声」が入っていて、
トークショウホストの早口のショークの直後にどっと笑い声が
入ります。

ほとんどの外国人はこの「笑い」についていけません。
英語力に対する僅かな自信が木っ端微塵にされる瞬間です。

米国で生活を始めた初期の頃、
ジョニーカーソンショウでの彼のトーク内容がつかめずに
なんとも情け無い思いを散々しました。

横で見ているアメリカ人の妻が大声で笑うのですが、
何が面白いのかこっちにはまったくわからないのです。

それどころか、めまぐるしく変わるトピックスに
今彼が何についてしゃべっているかすらわからなくなる
ことがあったのを屈辱感とともに覚えています。

まがりなりにも米国の大学院を修了し、米国で会社を経営し、
周囲からは英語力充分であるかのごとくみられていた私でしたが、
実情はそんなものでした。

そんな私が何年か後に、ある日仕事で遅くなって家に帰り
リビングルームでつけっぱなしになっていたテレビの中で
早口に時事問題を皮肉るジョニーカーソンのジョークが
すんなりと耳に入り、笑いながら服を着替えている自分に
ふと気がつきました。

毎日毎日、英語で暮らし、英語で仕事をし、
英語のテレビとラジオから情報を得る。
それを何年か続けるうちに我知らず英語の聞き取り能力が
アップしていたのでしょう。

その頃をさかいに他のチャネルのトークショウでも
アメリカ人といっしょに笑える様になってきました。

今はメディアから何か情報を得た場合に
そのコンテンツだけが頭に残り、それが英語であったか
日本語であったかは思い出せないのが常です。
英語が日本語と同じように自分の言語として
定着したということなのでしょう。


ジョニーカーソンが引退して随分たち、
人々の記憶から薄れ掛けていた時の訃報でした。


数十年前の私に、自らの英語力の無さを教えてくれた
忘れることの出来無い厳しい師でした。


Goodbye, Johnny

Thank you so much.




Johnny Carson 1926 - 2005 合掌



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