のんびりKennyの「きまぐれコラム」
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2000年03月24日(金)  「砂漠の夜・満天の星」 

  先日Los Angelesの弁護士事務所に用事があり、
Las Vegasのオフィスから車で往復した。
いつもは飛行機のシャトル便を利用する。

今回あえて5時間も自分で車をころがしたのは、LAでついでに寄りたい所が何箇所かあり、
それらが地理的に離れすぎていた為、自分の車があった方が便利と判断した為だ。

早朝、まだ薄暗いうちにLas Vegasを出て、15号線を一気に南下する。

左右の景色は、米国の砂漠(正確には土漠)特有の茶褐色の原野、その向こうに180度の地平線。
きらいなドライブでは無い。

頭の中で弁護士との打ち合わせ内容をまとめながら300マイルを走りきってしまう。
途中1度短い休息をとっただけでLAのダウンタウンまで走ってしまうのだから
私もまだまだ若い(自分で勝手にそう思っている)。

ゴルフ仲間でもある弁護士事務所の連中とビジネスランチ。
一度別れて、数箇所で用事を済ませた後、会議に臨む。

予定外に長くなった会議が終わったのは夕方。
一晩泊まって明日戻ってはどうかという弁護士のすすめを振り切って駐車場へ。

明日は朝からギッシリと予定が入っている。
どうしても今晩中にLas Vegasに戻らねばならない。
(徹夜のドライブは昔さんざんしたものだ、大丈夫だろう・・・)

すでに夕食の時間だったが、ここで何か食べて、ビールでも飲んでしまえば
もうとても夜を徹して300マイルを走る気力は維持出来ない。
ロードサイドのドライブスルーで特大のハンバーガーとコーラをピックアップ、
そのまま砂漠の道へと向かった。

眠気覚ましのカーステレオを大音量にして、片手でステアリング、片手でハンバーガー。
深夜のフリーウエイを90マイルでぶっとばす。
「ポリスがいないとイイな・・・」

3時間ほど走ったところで、どうにも眠気に勝てなくなり、
ちょうどあった道路補修用の待避スペースに車をつっこみ停車。

窓をあけると冷たく新鮮な空気が流れ込んできた。
気持ちが良い。

それまで大きな音で鳴っていたカーステレオを切った瞬間、突然の静寂が訪れた。

腰を伸ばそうと、ドアを開け、車から降りる。
真夜中の砂漠のど真ん中、全くの静寂と深遠の闇。

ふと見上げた瞬間、思わず息をのむ。

深遠の闇に、細かいガラスのクズをぶちまけた様に
冷たく輝く満天の星。

降るような星空とはまさにこれのことか。

感動。

静寂の中で無数の星に包まれ、動くことが出来ずに立ち尽くす。

どれほどの時間星空にみとれていただろうか・・・

ふと思う。

(俺はいったい何を急いでいるんだろう・・・)

(もっとのんびりいこう、のんびり・・・・)


車にもどり、ゆっくりと動きだす。

今度はうるさい音楽は無し。
エアコンも止めて、窓をいっぱいにあけ、のんびりところがす。

自然に口をついて唄が出た。
大好きな「星に祈りを」。

忙しさの中でしらずしらずのうちに、夜空の星を見上げたりすることを忘れていた。

ずっと長いこと、どこかに置き忘れていた大切なものが、
突然見つかった様な奇妙な気分で車をころがす。

東の空がうっすらと白んでくる頃、前方に不夜城Las Vegasの街が
ぼんやりと見えてきた。


私はぎっしり詰まった今日の予定を変えて、ゆっくり休むことにしようと既に決めていた。


Kenny |MAILHomePage