
以下、本の感想。大ファンのカジノ専門のギャンブラーで文筆家でもある、森巣博氏の小説
『セクスペリエンス』。
森巣さんは、長らくオーストラリアに在住しており、奥様は有名な学者さんで、息子さんは天才。森巣さん自身も、大変リベラルな方で、論理的かつ情熱的な文章をお書きになられる作家さんです。
まず、これは読み手をだいぶ選ぶ小説です。
タイトルからして、ロマンティック・ラブ・イデオロギーに洗脳されている人は手に取らないので大丈夫として、ある程度、社会に存在する権力作用(主にジェンダーの。)がどんなものなのか知っている人でないと、ダメなのかも、と思いました。その上で、以下、個人的感想。
舞台はオーストラリアのシドニー。主人公のフランとその親友アンジーは、大学時代の同級生で、二人とも「偶然に」同じ弁護士という仕事を選択することになるんだけど、その選択に至るまでの「個の差異」の描き方がすごく好みでした。
第1章の性描写は、個人的にちょっと暴力的過ぎて「うえっ。。」ってなったけど、その後の各章との繋がりと話の展開の仕方などを考慮し全体としてみると、純粋にエンターテイメントとしても面白かったし、また、エミール・デュルケームの自殺論や上野千鶴子先生の言葉やピョートル・クロポトキン(ロシアの思想家)などの言葉も散りばめられており、「ああ、こういう風にこの知識をこのシーンで使うのか、やるなあ♪」と驚きつつ関心したり。
それに、シドニーとパースの自然の描き方が綺麗で、特に、
「海の穏やかなうねりを心地よく感じる。
自然と遊ぶのは、官能そのものだった」(p185)というのは、まさに私の個人的体感を表現してくれているなぁと思いました♪
以下、本の所々から引用。
「まだ結婚に魅力を感じていなかった。この年頃の多くのキャリア女性が、そう考え、かつ実践しているように、結婚は結婚として理想のパートナーが現れるまで放っておき、実生活では、キャリアの発展に支障をきたなさい程度に、性は性としてエンジョイすれば良い、とフランは考え、実践していた」(p189)→個人的には、こういう風に考えられる日本人女性が増えればいいなぁ、って思ってるんだけど、現状見ると無理っぽいよね。。「結婚」って制度に価値を見出し過ぎている女性がまだまだ多いなぁ、って、思うし、「そんなダメ男と付き合ってられるだなんなんて、だいぶアンタも暇だよねえ〜。」って言っても、相手に笑顔で「いいの、ダメ男が好きなの♪」とか言い返される日々。。。
「わたしがあなたと築き上げたいのは、長期にわたる関係なの。誤解しないでね。それは結婚とか、そういうことじゃない。でも、一夜限りの肉欲ではなくて、少なくとも分量としての時間を、ある程度耐えられる関係が欲しいの」(p90)→このフランのセリフ、なんていうか、あまりにも自分っぽくて笑ってしまいました(笑)。ちなみに、私の恋人は、ドーベルマン似でサーフィン好きで、何気に堅い仕事をしている理解ある男性です、あは(苦笑)。さらにたまに勘違いされるので、書いておきますが、「結婚とか、そういうことじゃない」からといって、真剣な関係でないワケでもないし、ちゃんとした関係でないワケでもありませんよ、論理性のある方ならわかってもらえるかと思いまする♪