もどかしい話(三) - 2002年06月23日(日) きょうは、もどかしいのは男性の側だけでなく、女性もまたそうであるらしいというお話。 十数年前のこと。 当時独身の僕は、大学で同じ学科だった関係で、わりとつるむことの多かったW君(彼も独身)と一緒に、土曜日に開かれたあるパーティに出席した。 そこは「異業種交流」をうたい文句にしており、決して「ねるとん」タイプのお見合いパーティというわけではなかったが、実情としては、異性をナンパするために顔を出しているヤカラも少なからずいたようだった。 ま、適齢期の独身男女が数多く集まるところ、そうならざるをえないものだが。 そのパーティで、僕らは、たまたま、ある中堅化学工業会社の社長秘書をしているFさん(僕より数才年下)と知り合った。 たしかに秘書をしているだけあって、物腰がやわらかく、声のきれいな女性だった。 顔立ちもそう、悪くはない。色白で、ポチャッとしたタイプ。 体型が、若干ふくよかかなー?という感じはあったが。 彼女から、最近旅行した香港で撮ったという、チャイナドレス姿の写真も見せてもらった。 しっかりとメイクをした彼女も、なかなかの美人だった。 僕はそこで会社の名刺に、自分の自宅(ひとりずまい)の電話も書き添えて、彼女にわたした記憶がある。 彼女の自宅の電話番号も教えてもらった。 W君も同様のことをしていたはずだ。 でも、別に「ナンパした」という意識もなかった。 というのは、当時僕は、ある女性と付き合いたいという思いでいっぱいで、今回知り合ったFさんと深く付き合おうなどとは、まったく思っていなかったのである。 まあ、これで少し女性の知り合いがふえて、出会いの機会が広がればいいかな、という程度の期待しかなかった。 端的にいえば、わりとスリムな女性が好きな僕としては、残念ながら彼女はタイプではなかったのである。 さて、その後、彼女の家に夜電話をして、気楽なおしゃべりをするという、「交際ともいえぬ交際」が始まった。 僕は、好きなタイプの女性にはなかなかそういうことがフランクに出来ないくせに、あまりタイプではない女性には、平気でそういうことが出来てしまうところがある。 (皆さんも、そういう傾向ってお持ちではないですか?) Fさんも、なかなか気さくなところがあって、彼氏でもない僕にプライベートなことも含めて、いろんなことを話してくれたものだ。 「●●さん(僕のこと)とわたしの兄(銀行員だそうだ)っておない年なのに、兄のほうがずっとおじさんくさいの」 とかいった話も聞いた。 で、とりあえず、付き合っている男性はいないようだった。 それゆえ、僕のほうも、あまり気がねしないで、夜9時台、10時台に平気で電話をしたものである。 そんな付き合いが数ヶ月続いたある日。 ある晩、Fさんから電話。 普段快活な彼女なのに、その時に限って、どうも声のトーンが沈みがちなのである。 どうしたんだろうと思っていたら、急にこんなことを切り出した。 「わたし、実は、今度結婚することにしたんです」 それを聞いて、僕は内心、「ええーっ!?」と思った。 これまでは、そんな話、まったくなかったのに…。 もちろん、別に彼女に惚れていたわけではなかったので、ふられたショックというわけではなかったが。 彼女から事情を聞くに、少し前から知り合いのひとに薦められていた見合い話があったそうな。 で、しばらくは逃げていたのだが、結局「Fさん、彼氏だっていないんでしょう」と説得され、先日お見合いをして、相手の求婚を承諾してしまったのだという。 相手は誰もが知っている某電機メーカーに勤めている男性。 そのうち、彼女の声が次第に涙声っぽくなってきてしまった。 「わたし、このお話をOKして、本当にいいのかどうか…」 なんて言い出し始める。オイオイ…。 結局、彼女をなんとかなだめて、電話を切ったが、じつに後味が悪かった。 そして、 「もしかしたら、彼女は僕と付き合いたかったのかも知れない」 と、ふと思った。 僕が彼女にフランクに話をしていたのは、彼女のことを特に好きという感情で見ていなかったからなのに、彼女は、そういう僕と、本当は付き合いたかったのも知れないのである。 そういう風に考えれば、これまでの電話での会話にも、そこかしこに、僕の心をさぐろうとするようなニュアンスがあったことに、初めて気がついた(もっと早く気づけっての)。 女心にはまったく疎い僕にも、今回はそういう微妙な「空気」がようやくわかったわけだ。 が、だからといって、彼女にもう一度電話して、「お見合いした彼じゃなくて、僕と付き合ってほしい」というほどの感情も沸き起こらなかった。 残念ながら、相手が自分を好きだからといって、こちらも同じように好きになるとは限らない。 それまではオトコの側ばかりが叶わぬ恋に苦しんでいると思っていたのだが、もどかしい思いをするのは、男性も女性も同じなのだな、そう思った。 Fさんとのコンタクトは、その電話が最後になった。 ところで、Fさんは、W君とも「電話での付き合い」はあったのか? もしかして、W君も結婚相手の候補に入れていたのではなかったのか? そのへんは、いまだに、まったくわからない(笑)。 ...
|
|