「これ、どこでもらったのォ?」
最近息子・タク(2才)が身の回りにある物のルーツをいちいち聞いて来る。
服、おもちゃ、タオル…自分が手に取る物を片っ端から尋ねるのである。まだ「買って手に入れる」ということを分かっていないため、家にあるものは全て「もらったもの」と理解しているようだ。
「これ、どこでもらったのォ?」
とミニカーを掴んで尋ねる。
「お子様ランチのおまけでもらったんでしょ」
「これ、どこでもらったのォ?」
とタオルを掴んで尋ねる。
「栃木のおばあちゃんにもらったんだよ」
「これ、どこでもらったのォ?」
とプリキュアの絵本。
「本屋さんで買ったんだよ」
「これ、どこでもらったのォ?」
とポケモンのぬいぐるみ。
「ゲームセンターで捕ったんだよ」
次から次へときりがない。以前言葉を覚えたてのころに「これは?これは?」と次から次へと物の名前を聞いて来る時期があった。このブームはそれに続く第2段階といえよう。ただ「これは?」攻撃は娘・R(4才)にもあったけれども、「どこでもらったの?」ブームはなかった。男の子と女の子の違いを見るようで(単に個々の違いか?)なかなか面白い。だが
「これは、どこでもらったのォ?」
犬福というキャラとのぬいぐるみを尋ねられた時、
「そ、それは…」
僕はしばし言葉に詰まった。
「どこでもらったの!」
「それはね…Rちゃんにもらったんだよ」
「Rちゃん、それあげてないよ」
すさかずRが反論する。そう、Rは正しい。しかし僕も正しいのである。
むかしむかし、ひとりのゲームオタクがおったそうな。
彼はあるゲームセンターに足繁く通っておった。そこにはRちゃんという17才の美しい女の子が働いておった。オタクはRちゃんと知り合い、仲良くなる内に大好きになってしまったのじゃ。
しかしオタクには女房がいたので忍びがたきを忍び、耐えがたきを耐えて想いを胸に秘めておった。やがてオタクに娘が生まれると迷うことなく娘に「R」と名付けたのじゃった。
オタクは隠すことなく「娘に君の名前を付けた」とRちゃんに娘を見せたのじゃが、それ以来Rちゃんのケータイもメールも届かなくなってしまったとさ。とっぺんぱらりのぷう。
…そんなこと言えるか。
「あのな、もうひとりのRちゃんにもらったんだよ…」
「ふーん」
僕に言えたのはそこまでだった。
物に歴史と涙あり。まだまだこの世に生を受けて2〜4年ちょいのRやタクなんかより歴史がある物がこの家にはゴロゴロあるのさ。中には涙なくして語れない物も…子供達よ、今はまだ分かりますまい。
「これは、げーむせんたーでもらったんだよ!」
早速タクが先程のポケモンのぬいぐるみを指し、僕に教えられたとおりのことを言っていた。
「ははは、そうだね」
ゲーセンに言ったこともないのに、と笑っていたら
「パパ、楽しいのォ?」
と言われた。
楽しさと幸せは君達からもらったんだよ。
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